幕間 ラペッサ
本日3話目です。
その後、軽い頭痛や倦怠感はあったラペッサだったが、一週間ほど薬を飲み続ける頃にはその副作用らしきものも無くなっていた。「以前より身体が軽くなったかも?」と話す彼女に、ロスは魔力が使用できるかどうか試すようラペッサに提案したのだ。
その提案は受け入れられ、薬師室の隣にある薬師室専門の応接間で行われる事となった。そこにはロスとリベルト含めた三人の側近だけでなく、ロスの兄である第一王子もひょっこり現れた。話を聞くと、執務中の国王陛下の代わりに見届けてくるようにとお達しがあったとのこと。
「ロスの部下たちが頑張った結果だろう? 見届けなくてはね。それにもし滞留症の症状が改善したら、それが我が国で初めて開発された新薬となる。その瞬間を見届けたいじゃないか!」
「兄上……それを野次馬というのでは?」
「まあまあ、良いじゃないか。ロス、始めてくれ」
「承知しました」
ラペッサが選んだのは、薬に魔力を込める事だった。彼女はこれが出来なかったがために、ファルティアでは冷遇されてきたのだ。この目の前にある薬はラペッサが自分で作成したもので、魔力を込める過程だけ最後に残しておいたもの。ラペッサは緊張からか、手が小刻みに震えている。
彼女は魔力が込められず、罵倒された日々を思い出す。
だが、その思考はロスが彼女の肩に手を置いた事で消えた。後ろを見ると、ロスが優しく微笑んでいる。
「大丈夫だ。君の部下を信じろ」
その言葉にサントスとシーナを思い出す。毎日二人で手順を確認しながら作ってくれた薬。今は緊急で薬作りの依頼が入ったため二人はいないが、隣の部屋で頑張っているはずだ。
それに魔力滞留症と知って労ってくれたカリナたち。「治ったら一緒に薬を心ゆくまで作りましょう」と声をかけてくれたカリナの優しさを忘れてはいない。
そして目の前にはマシア。薬の開発はこの人がいなければ、もっと時間がかかっていただろう。
深く息を吸って、ゆっくりと吐く。
「ロス、大丈夫よ。ちょっと離れてもらえるかしら?」
「ああ」
ラペッサは目を瞑り、魔力を込める。すると、以前までは言う事を聞かなかった魔力がきちんと流れていくではないか。成功を確信したラペッサの瞳には、涙が一筋浮かんでいた。