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19、薬師の弟子と、幻の薬草

*公開後、18話に修正を入れています

・魔力滞留症のレシピは燃えた → 燃えたけど、叔母であるビビアナが知っていて公開した

・手紙にレシピetcが書かれていた → 書かれていたのは侯爵家没落の知らせのみ


18話(前話)のあらすじ

・マシアは以前ノヴェッラ侯爵家の次期夫妻と、魔力滞留症の薬について研究をしていた。十数年前に侯爵家で事件があってから、シーナを育てつつ薬の研究を行っていた。そして、滞留症の薬を完成させる目処がついたのであった。

「まず魔力滞留症の薬のレシピについて……はい、これさね」

「ありがとうございます」


 シーナとサントスが席についた後、マシアに一枚の紙が手渡される。その紙には魔力滞留症のレシピについて書かれていた。


「……なんと、アズリエル教国の癒しの薬草を使用するのですか……」

「癒しの薬草……傷を一瞬で治す事ができるというあの……」


 癒しの薬草とはアズリエル教国という国で育てられている薬草の事で、この薬草はシーナが今まで扱っている薬草と一線を画すものだ。

 この癒しの薬草で作成される回復薬は神の薬と呼ばれ、小さな傷なら一瞬で治してしまうほどの効果を持つ。ファルティア王国の始祖であるファルマティリア大薬師もこの薬草を使って、回復薬を作成したと逸話が残っているほどだ。

 大薬師はファルティア王国統一に協力した後、幻の薬草と呼ばれていたこの癒しの薬草を栽培する事に尽力したと伝えられている。その際、手を尽くしたがファルティア王国では育たず、悩みに悩んだ大薬師が当時神の力を含んでいる聖水が湧き出ていると言われていた教国に協力を依頼したのだ。


「ですが、ひとつ気になる事がございます。癒しの薬草は使用し続けると人体へ副作用が現れるという話でしたが……」


 サントスの言葉を聞いて、シーナは以前マシアに読ませてもらった本の内容を思い出した。癒しの薬草を正しい手順で煎じれば、切り傷、火傷、打撲などの怪我だけでなく、捻挫や骨折まで完治する事ができる薬である。

 どんな怪我にも対応するのだが、一方でこれを使い続けると副作用によって廃人になってしまうと言われている。最初は軽い頭痛くらいだが、依存症を発症すると幻覚症状が現れ、人としての生活ができなくなると言われている。だから基本はその薬草に頼る事をせず、普通の薬を作成するのである。


「ふむ、よく勉強しているね、サントス。癒しの薬草の過剰摂取は確かに副作用が大きい。だが、それは一度に治そうとする場合だ。大薬師が作成した回復薬は癒しの薬草の使用率が半分以上を占めているために、副作用が大きくなったのさ。これは一瞬で完治させる事に拘ったからだと言われている。今回は原料の一割程度の量を使用するだけさ。これで魔力滞留症が治った事例は見聞きしているから問題ないよ」

「成程、薬草の使用量の問題でしたか」

「ああ。だが、これだと残念ながら長年溜まってしまった魔力の塊みたいなものは溶かせないのさ。だからこのレシピ以外で薬草が必要なのだが……それがこれさ」


 マシアは鞄から何か茶色の粉を取り出した。見覚えのないものだった二人は、同時に首を傾げる。


「舐めてみれば分かるさ。ほら」


 恐る恐る二人で舐めてみると――。


「師匠、これ、甘いです」

「もしかして、調味料のソルカー、か?」 

「その通りさ。研究によって、ある場所で生育されている珍しいソルカーには魔力塊を溶かす効果があると判明した。ああ、言っとくがこのソルカーでなくてはダメだ。普通に流通している白いソルカーにはそんな効能はない」


 普段使いしている調味料がまさか薬草になるなんて、とシーナは思う。これをシーロに手渡せば、もしかしたら魔力が有ると判断するのだろうかと少し試したくなったが……マシアの話は続くらしい。


「だが、これを使用するにしても魔力塊を溶かすには限度がある。だから、このソルカーの力を増幅させる役割を持つ薬草を入れたいのだ。つまり、薬に含有する魔力量を増やしたい」


 ん? とシーナは思う。魔力量を増やす薬草……どこかで聞いた事がある、と思ったからだ。

 

「その薬草はヴァイティスという薬草で、ファルティアの大薬師様が効能だけを記したと言う薬草だ。それを先程ビビアナ様の本から見つけたのだが、幻の薬草だろう? それをまずは見つけて……って、シーナ、どうした?」


 シーナは呆けていた。ヴァイティスといえば、初めてリベルト隊に合流した時に山頂で見つけた、あの赤い実の付く植物のことだろう。

 彼女はラペッサを見る。すると彼女はにっこりと微笑んで「どうぞ」と口を動かした。


「あのですね、師匠。ヴァイティスはもう見つかっています」

「……ん、なんだって?」

「ですから、ヴァイティスは見つかっています。私が以前リベルト様の隊でお世話になったとき、シーロさんが見つけて下さって――」

「それは本当か? シーナ?」

「師匠! 近い!近い!」


 目の端を釣り上げてシーナを見るマシアに、なんとか落ち着くように話すシーナ。それを微笑みながら見ているラペッサと、気不味そうな表情をするサントス。


「本当ですよね……ラペッサ様」

「ええ。ヴァイティスは皆さんで見つけてくださって……今私の部屋にありますから、持ってきますね」

「ラペッサ様。私がお持ちします」

「あら、ならサントスにお願いしましょう。私の執務室の机の上にあるから、お願いね?」


 そしてサントスが実物を持ってくるまで、見つけた経緯を洗いざらい喋らされたシーナであった。

 本日は一話のみです。

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