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10、薬師の弟子と、薬作り①

 アルパン病改善のための薬の作成に思いを馳せていたシーナ。薬の事を考え始めたからか、休憩が功を奏したのか……どちらかは分からないが体調が改善し始めたように思う。

 

「リベルト様! 休憩所でこちらの薬を作成してもよろしいでしょうか? アルパン病の症状を軽減する薬があるので!」


 目を輝かせてそうリベルトに告げると、彼の口角が少し引き攣る。


「ああ、それについては問題ない。だが、無理はしないでほしい。手伝える事があれば、手伝おう」

「ありがとうございます!」


 新たな薬を作成できると、鼻歌を歌いそうなほどご機嫌のシーナ。そんな彼女たちのいるところにシーロがランシアを採取して戻ってきた。どうやら話を聞いていたらしく、疑問があるようだ。


「今、アルパン病を改善する薬があると聞こえたっすけど……隊長はその事、ご存知で?」

「いや、実は私も初耳だ……薬の存在すら知らなかった。知っていれば、シーナさんに依頼したのだが」


 どうやらリベルト曰く、アルパン病用の薬を過去に購入した事が無かったらしい。そもそも標高が高い山がここと後一箇所しかなく、登るのも一年に一度あるかないか、というくらい頻度が少ないのである。その上、アルパン病は充分な休息を取る事で症状が軽減する。わざわざ薬を使う必要がなかったと言う事も大きい。

 だが、二人がアルパン病に罹るのであれば、作成してもらうべきだったと呟いたリベルトに、シーナは答える。

 

「申し訳ございません。多分依頼されても、作る事ができなかったと思います。薬の作成のためには、材料を取り寄せなくてはいけなくて……」


 そう、ラペッサ編纂の本を読んだ時に、作成してみようと思い立っていた薬が実はこの薬だったのだが、材料が足りなかったのだ。シーナは魔法袋からひとつ、白いものを取り出した。


「これはポリポルス、と言います。この材料が薬師室になかったので、あの準備期間内に作成はできなかったと思います」

「あ、それ、木の根元に生えていたやつっすよね……?」

「そうです。このポリポルスは単体で薬として使用する事がないので、薬師室でも輸入されていないのかと思われます」

「しかも使用する薬はアルパン病の症状の改善……確かにあまり使用用途が無さそうだな」


 リベルトは材料が揃えられなかった理由に納得する。


「はい。ですが、ポリポルスはこれ以外でも使用する事がありますので、ラペッサ様や薬師長に提言して、薬草畑の一角で育ててもらおうかと思っています……まあ、その話は置いておきますが、今回で全ての材料が揃ったので、薬を作成してみます。初めての薬を自分の身体で薬を試す事ができる、そんな機会なんて滅多にありませんから、ありがたい事です!」


 改めて気合いを入れるシーナ。シーロは彼女の告げた言葉を理解すると共に、首を捻った。

 

「えっと、自分を実験体にしても良いんすか……?」

「勿論ですよ! 薬師として、自分が飲めない薬を他の方に飲ませられませんから!」


 そう胸を張って言うシーナだが、リベルトの眉間には皺がより始めている。

 

「……シーナさん、今から作る薬に関しては、毒の有無を鑑定できる魔道具で確認をしてから服用する事を約束してくれ。君の腕を信頼していないわけではないのだが、万が一の事があっては困る」

「確かにそうですね……あ、ですが私、その鑑定道具を持っていないのですが……」

「それに関してはエリヒオが持っている。私から伝えておこう」


 鑑定道具があると聞いて、目を見開くシーナ。その様子にリベルトは「ああ」と呟いた。


「万が一、食料が足りなかったり遭難した場合に備えて所持しておくようにと最低ひとつは部隊毎に支給されていてな。この部隊ではエリヒオと私、アルベロが所持している。今回は全員で動くためエリヒオに依頼していた。さて、アントネッラ、体調はどうだ?」

「先程よりは改善しました」


 確かに先程よりも元気に見える。


「アントネッラにはシーロがついてやってくれ。私はシーナさんにつく。それで問題ないな?」

「了解っす!」

 

 そして四人はエリヒオの待つ小屋へと向かったのである。



 山小屋は以前トッレシアで借りたものよりも一回りほど小さいものだった。小屋の中に入るとエリヒオが既に準備を始めていたらしく、小屋の中に布団が敷かれていた。

 リベルトはアントネッラに引き続き休息を取るように伝えた後、シーナの元に来る。台所の目の前にあるテーブルには、彼女が取り出した薬草やら道具やらが大量に置かれていた。彼の目の前に置かれているのは、先程シーロが取っていたランシアの根、山の入り口付近で採取していたジオモの茎、そして何やら見た事のある木の薄皮である。

 

「この木の皮は……もしかして以前の調査で採取したものか?」

「はい!私が採取していたものを持ってきました! ケヒという木の皮ですね」


 話している間に全てを取り出し終えたシーナは、作成方法が書かれている本に目を通していたのだが、その際「あっ」と声を上げた。リベルトが不思議そうに尋ねる。


「シーナさん、どうした?」

「本日採取したランシアの根とジオモの茎は乾燥させる必要があるのですが……私、そのような魔道具を持っていないのです」


 乾燥には数日かかる。ジオモの茎なら二日ほどあれば問題ないだろうが、ランシアの根に至っては一週間はかかりそうだ。だが、流石にそんな悠長に待っていられない。どうにかならないかと考えるが、シーナの力では到底無理な話だった。


「うーん、最悪乾燥させずに作成して……でも効能が……」


 ぶつぶつと呟いていると、現状を理解したリベルトがシーナに声をかけた。


「なら私が乾燥させよう。何か熱さに強い容器などは持っているか?」

 本当は薬作成まで執筆予定だったのですが、長くなりそうだったので一旦ここで投稿する事にしました。

 

 いつも拙作を読んでいただきありがとうございます。

 のんびりペースの更新ではありますが、完結まで頑張ります。長い目でお付き合いいただけると幸いです。


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