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9/10

9 決着


「あら」


 手動マニュアル自動オートに切り替え、あとは待つだけとなったころ。

 後ろを振り返ってみると集まっていた先生たちが解散していた。

 まぁ、期末テストの最中なんだし、そう何分も観覧しているわけにもいかないか。

 その証拠に、今も忙しそうに歩き回っている。

 なら、なんでさっきは集まっていたのか、という疑問が残ったけれど、まぁ物珍しかったからだろう、たぶん。


「来た来た」


 グラウンドに放った三機の鳥のゴーレムが舞い戻る。

 宝箱を受け取り、そのまま提出しに先生の元へ向かうと、すでに一人の生徒が期末テストを終えていた。


「あ」

「あ、あの時のゴーレム」


 肩に乗ったゴーレムに反応しているあたり、やっぱり宝箱を譲った生徒だ。

 あの地点から学校まで結構距離があったはずだけど、空を行くゴーレムより先に付くとは中々どうして驚いた。流石は一流校とだけあって、在学している生徒も一流の魔法使いみたいだ。


「ごめん、なさい」

「なにが?」

「譲ってもらって、先に終わっちゃった」

「んー……俺はごめんよりありがとうのほうが好きだな」


 こちらとしてもリスクを回避した結果だから順位に不満はないし。


「え? ……じゃあ、ありがとう?」

「どう致しまして」


 彼女の側を通り過ぎて俺も宝箱の提出を終わらせる。


「はい、たしかに。惜しいね、あとすこし早ければ一番乗りだったのに」

「二番でも好成績には変わりないでしょ?」

「たしかに。それじゃあしっかり好成績として残しておくからね」

「よろしくお願いします」


 提出場所である仮設テントを出ると、見覚えのある赤い髪が見えた。


「リズさん?」

「お、少年。そこにいたか。どうだい? 期末テストの調子は」

「わざわざ様子を見に来てくれたんですか?」

「そうだよー、少年のことが心配で心配で堪らなかったんだよー」

「その割りには随分と棒読みですけど」


 応援に来てくれたのは嬉しいけど。


「期末テストならさっき終わりました、二番です」

「へぇ、二番。やるじゃない、テッタラルラの並み居る生徒を押し退けて二位だなんて」

「今度は褒めてくれるんですね」

「ん? あたしはいつでも少年を褒めてるけど?」


 なら、あの時の反応はいったい。


「ちょっと、リズ! 校内に勝手に入らないの!」

「あーあ、ミルカに見付かっちゃった。ちょっと言ってくるよ少年」


 宝箱の提出の際、仮設テントの下にいた先生。

 桃色の髪をしたすこしおっとりとした雰囲気のある女性は、どうやらリズさんの知り合いだったみたいだ。


「おい、お前。どういうつもりだ」

「その声は」


 声を掛けられてそちらを向くと、宝箱を小脇に抱えたグレンがいた。

 不機嫌そうな顔をしていて、こちらを睨み付けている。


「どういうつもりとは?」

「俺との勝負を放棄したのかって聞いてるんだよ。ここでなにをしてる、なにもしてないだろ。勝負を捨てたのか」

「勝負ならもう終わってるよ、三番目」

「三番目? ――まさか」


 グレンは周囲を見渡し、ほかに生徒が俺とあの女子生徒しかいないことに気付く。


「馬鹿な……この俺が先を越された、だと? いったいどうやって、どんな手を使った!」

「俺は初めからずっと言ってたはずだけどな。ゴーレムを使うって」


 肩に乗せているのも重いのでグラウンドの木に留まらせていた鳥のゴーレムを呼び寄せる。


「この三機を街に飛ばして宝を見付けた。ここにいた先生全員が証人だ」

「くっ……そんなゴーレムをいったいどこで――」

「そりゃもちろん自分で作ったんだよ、グレン」


 リズさんの声が響いて、グレンははっとなる。

 顔を上げてその目でリズさんを捉えると表情が驚きに染まる。


「あ、姉貴ッ」

「姉貴? え、リズさんが? ってことは、弟ってこと?」


 そう言われてみれば顔つきが似ているような?


「そう言うことだよ、少年。びっくりした? あたしはびっくりした。話はあんまり見えないけど、帰ってきたら弟が負かされてるんだもん」

「これは……その……」

「勝負してたんでしょ? だったら潔く負けを認めないとね。ね?」

「……はい」


 尊大な態度を取っていたグレンが、今ではしょぼくれた顔になってしまった。

 姉弟間の力関係がありありと伝わってくる。

 ある意味では俺に負けたことより、この関係性を見られたことのほうが屈辱だろうな、グレンにとっては。


「まぁ、その、なんだ。とりあえず、宝箱提出しに行けよ。四番目になるぞ」

「くそっ! 憶えとけよ、ゴーレムオタク!」

「ゴーレムオタクじゃなくてネイト。きちんと名前で呼びなさい」

「……ネイト!」


 涙目になっているようななっていないような、ともかくそんな敗走をして、グレンは仮設テントへと駆け込んだ。

 最初は吠え面かかせてやるって思ったけど、こうなると哀れみのほうが勝つ。

 強く生きろ、グレン。


「ごめんね、弟が迷惑を掛けたみたいで」

「いえ、実害はなかったんで別に。まぁ、多少むっとしましたけど」

「あはは、あとでキツく言っとくよ。弟はすぐに調子に乗るからたまに灸を据えないといけないんだ」

「よろしくお願いします」


 かくして期末テストは無事に終わり、俺の将来も保証されたままとなった。

 アスタリアルという国に認められるには、まだまだ結果を出していかなくてはならない。

 今後も気合いを入れて課題に挑むとしよう。

 そう言えばグレンになんでも言うことを聞かせられる権利を得たけれど、どうしよう?

 まぁ、それは追々考えることにする。一旦保留で。

毎日更新できるよう頑張りますので

よければブックマークと評価をしていただけると嬉しいです。

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