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8 期末テスト


 アスタリアルに到着して二日目。

 テッタラルラ魔法学校期末テスト当日。


「勝負だ、ゴーレムオタク」


 宝探しに挑む生徒全員が集うグラウンドに、グレンの声が響く。

 数人の取り巻きを連れ、いかにもなにか企んでいますって顔をしている。

 まぁ、その企み自体は今し方聞いたところだけど。


「ルールは簡単、先に宝を手にいれて提出したほうの勝ちだ。俺が負けたらお前の言うことをなんだって聞いてやる」

「ならこっちが負けた時も同じ条件か、別にいいぜ。今からなにしてもらうか考えとくよ」

「良い度胸してるじゃねぇか、テメェ」


 一触即発の雰囲気の中、グラウンドの雰囲気が一気にひりついた。

 グラウンドの校舎側に置かれた朝礼台に先生が上っていく。


「では、時間となりましたのでこれから期末テストを始めます。くれぐれも不正を働かないように、それでは始め」


 初老の落ち着いた雰囲気の先生から開始の合図が出され、生徒たちは一斉にグラウンドを後にする。

 校門へと駆ける生徒、空を飛ぶ生徒、地面に潜るなんて芸当をする生徒もいた。

 みんな思い思いの方法で宝探しに挑んでいる。


「結果が楽しみだな、ゴーレムオタク」


 ほとんどの生徒に準ずるように、グレンとその取り巻きもこの場を後にした。

 周囲を見渡して見るともう先生たちしか残っていない。

 グラウンドに残った生徒は俺一人だけだ。


「さて、じゃあ始めるとするか」


 魔晶板を操作して校舎から呼び寄せるのは三機の鳥のゴーレム。

 一晩掛けて二機増やし、これで盤石の構えだ。


「さぁ、行ってこい」


 三機を一斉に解き放ち、アスタリアルの首都上空へと羽ばたかせる。

 すぐに魔晶板へと映像が送られ、機能は問題なく作動した。

 宝箱は事前にその形状を記録して指定済み。

 あとは空中に投影された映像に宝箱が引っかかるのを待つのみ。

 ここまでが想定していた俺の期末テスト対策。

 けれど、リズさんの反応が芳しくなかったようなので、ここから更に一工夫した。

 魔晶板から照射される映像を平面ではなく立体に変更したのだ。

 いま、目の前には光と魔力で形成されたこのアスタリアルの首都のミニチュアがある。

 魔晶板を操作すれば拡大縮小はお手の物、ほかにも色々と宝探しに有利な機能を仕込んでおいた。まぁ、それらは趣味で色々と追加しただけなので、その大半は使わないだろうけど。


「ほぉ、これは凄い」

「ん? ――わっ!?」


 人の声が聞こえて振り帰ると、俺の背後に教師陣が集まってきていた。

 俺の背中越しに立体映像を眺め、あーだこーだと意見を交わしている様子。

 まぁ、べつに、なにをしてくれてもいいけれど、流石にこの状況は緊張するな。


「お」


 立体映像を眺めること数分、鳥のゴーレムが宝箱を発見する。

 映像内に赤い点で強調表示され、位置もはっきりとわかった。

 ここからは鳥のゴーレムの一機を自動オートから手動マニュアルへ切り替える。

 同時に別枠で視界映像を開き、それを凝視しながら魔晶板を操作。

 鳥のゴーレムは真っ直ぐに宝箱の側まで舞い降りた。


「よし、あとは……あれ」


 宝箱の前で滞空させていると、ゴーレムの視界に一人の女子生徒が映り込む。

 彼女も滞空する鳥がゴーレムだと気がついたようで駆ける足が止まった。


「早い者勝ちってことだったけど」


 このまま先にゴーレムを下ろせばルール上は俺のものだ。

 けど。


「んー……」


 視線をゴーレムの視界から立体映像へ。

 強調表示された宝はまだあるし、なんならこの地点から近い。

 この機を自動オートに戻して残りの機で回収に当たれば微ロスで済むか。


「ここは譲るか」


 争いに発展してゴーレムが破損したらたまらない。

 鳥のゴーレムを羽ばたかせて飛翔し、再び上空へ。これで意図は伝わっただろう。手動マニュアルから自動オートに切り替え、その逆を残りの一機でやる。

 次の宝箱は誰とも遭遇することなくゴーレムを着地させられた。


「よし、あとは持って帰るだけ」


 鳥のゴーレムの翼を構成しているのはヒポグリフという魔物の羽根だ。

 魔力を帯びたその羽根なら、小さな翼でも大きな揚力を生み出せる。

 鳥のゴーレム一機につき、限界重量は十キロ。

 七キロの宝箱なんて楽勝だ。

 そこへ更に残りの二機を加えれば速度アップ。

 あと五分もすれば手元に宝箱が届くはずだ。

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