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7 テッタラルラ魔法学校


 アスタリアルに到着した翌日の朝。

 真新しい学生服に袖を通し、まだひんやりとした空気を肺へと送る。

 側を通り過ぎるのは、同じデザインの学生服を身に纏う生徒たち。

 今日から通うことになるテッタラルラ魔法学校の校舎は。積み重ねられた歴史を感じさせる荘厳なものだった。


「デカすぎ……前の学校の二倍はあるんじゃないか?」


 流石はこの国随一の魔法学校。

 通り過ぎていく生徒にもどこか気品があるように見える。

 場違い感が凄いが、怖じ気づいてこのまま帰るわけにもいかない。

 意を決して校門を潜り、尊大は雰囲気を纏う校舎へと向かう。


「そうだ」


 昨日、夕食を終えてから改めて調整しておいた鳥のゴーレムをここで解き放つ。

 試運転だ。

 羽ばたいていく様子を見送り、校舎の一角にある職員室へ。

 そこでだらしない格好の気怠そうな担任の先生に会い、いよいよ教室へと案内された。


「という訳で、今日からこのクラスの一員になるネイトだ。仲良くしてやってくれ」


 疎らな拍手に迎えられて、用意された席につく。

 転校生がくれば騒ぎ立てるのが世の常だけど、今のところその様子はない。

 というか教室内の空気がひりついていてそれどころじゃないって感じだ。

 明日は期末テストで、ここは超一流校。

 普通の学校と違って試験の重みが違う、ということなんだろう。

 重みが違うって点では俺もそうだけど。


「さて、じゃあ改めて明日に控えた期末テストの概要を説明をするぞ。知っての通り、今回の期末テストの内容は宝探しだ。まぁ、ここまで聞けば当然気になるよな、宝ってなんだ? って。その答えがこれだ」


 教台の上に置かれるのは赤色を金で縁取った宝箱だった。


「縦三十、横五十、重量は七キロだ。当日はこいつを探して街を走り回ることになる。制限時間は三時間。生徒間の妨害は禁止だ、違反が発覚した場合は例外なく不合格とする」

「二人以上の生徒が同時に宝を見付けた場合は?」

「早い者勝ち。判断が難しいならジャンケンで決めろ」

「先生」


 俺の発した言葉がクラス中の注意を引く。

 無言のうちは意識の外でも、流石に発現すればこうなるか。


「ゴーレムの使用はアリですか?」


 静かだった教室が細波を立てるようにざわついた。


「もちろん、アリだ。存分に活用してくれ」


 鐘の音が響く。


「明日に備えて今日は自習だ。時々、様子を見に来るからな。はしゃぐんじゃないぞ」


 先生が退室し、教室から静けさが姿を消す。

 耳に届く言葉はどれも明日の期末テストに関することばかり。

 隠し場所の推測や、当日の体調管理。徒党を組む者もいれば、ライバル宣言する者も。

 学校関係者が街に潜んでいてミッションを出されるかも知れない、なんて話もある。

 成績が将来に直結するとだけあって誰もが真剣だ。


「よう、ネイトって言ったか。来て早々あんな冗談かますなんて面白いな」

「冗談?」

「期末テストにゴーレムを使うって奴だよ」

「あぁ、それなら冗談で言ったつもりはないけど」

「あぁ? じゃあお前、マジであんな木偶の坊で挑むつもりなのか?」

「ゴーレムは木偶の坊じゃないが」


 お互いの間に沈黙が過ぎる。


「なるほど、よほど自信があるみたいだな。木偶の坊でどうやって宝探しをするのか、明日は楽しみにさせてもらうぜ。せいぜい頑張れよ、ゴーレムオタク」


 嫌味なことを言って彼は自分の席に帰ろうとする。

 クラスメイトのほとんどがひりついているなか、彼だけは余裕があるのか。

 それとも同様にひりついていて、そのストレスを発散しようとしているのか。

 ともかく。


「名前は?」

「俺か? グレンだよ」


 そう答えると、グレンは今度こそ取り巻きが待つ自分の席に腰掛けた。


「上等、やってやろうじゃん」


 元々失敗できない期末テストだったけど、更にやる気が出てくる。

 丁度よく鳥のゴーレムも窓の外に戻って来た。

 見てろ、吠え面かかせてやる。

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