6 報告
魔法執行部、退魔局本部。
貫禄のある名称の割りには派手さに欠けるお行儀のいい建物。
あたしはあんまりここが好きじゃない。
「よう、お疲れさん。リズ」
戻ってからいの一番にすることは上司への報告。
ライズさんは良い方の上司で、悪い方の上司は名前も思い浮かべたくない。
「アサギから預かったガキはどうだった?」
「まぁ、そうですねぇ。アサギが目を付けるだけのことはあるって感じ、ですかね」
「ほう、例えば」
「あたしらが使ってる偵察ゴーレム、あるじゃないですか。鳥の」
「あぁ、あの送られてくる映像が軒並み曇ってたりぼやけてたりして外れが多い奴な」
「その曇ってもぼやけてもない偵察ゴーレム、作ってました。今日、数時間で」
「……マジ?」
「マジです」
「そりゃ偵察ゴーレムの中でも特に出来がいいのはクリアな映像を送ってくるが……つまりそれと同等のもんをガキが一人で作ったってのか」
顎に手を当てて思考を巡らせるのはライズさんの癖。
「アサギの報告じゃたしか義手を作ったんだったな。そいつの性能は?」
「そりゃもう、凄いの一言でしたよ。最初、義手じゃなくて手甲か籠手かだと思いましたもん。あれ、なんで片手だけ? ってね。たぶん、アサギからの情報がなかったらアシンメトリーなファッションだと思ってましたね、ありゃ」
「本物と違わない精度の義手を十七のガキが、か。そんなもん、うちの兵器開発でも難しいだろうぜ、末恐ろしい才能だな。そんなのをドブに捨てようってんだ、アサギはいい拾いもんをしたもんだ」
「ここで才能が涸れなきゃいいんですけどねぇ。ほら子供のうちは天才でも大人になると凡人になっちまうのなんてごまんといますし」
「将来はどうあれ、いま使い道があるなら支援は惜しまんさ。ほかに気になることは?」
「ほかには特になにも、報告は以上です」
「わかった、下がって良いぞ。引き続き、ガキの面倒を頼む」
「了解でありまーす、失礼します」
上司の部屋を後にしてオフィスに帰還。
自分のデスクについて大きな息を吐きながら背もたれに身を預ける。
「次の休みいつだっけ……」
まぁ、あの少年についてる時間は実質休みみたいなもんだったけど。
犯罪者もテロリストもスパイも魔物も、相手にせずにのほほんとしてられる。
キツい変わりに給料だけはいいのが取り柄のこの仕事。
だけど、仕事が忙しくて貯めた金を使えないのが難点だ。
「あーあ、金持ちのイケメンのとこに嫁いで寿退社してぇなー」
一人ごちてまたため息を吐く。
煙草でも吸いたい気分、吸ったことないけど。
「あっと、そうだ。報告書かかなきゃか。面倒臭ぇマジで」
気怠い両手を動かして、気力を振り絞ってペンを持つ。
書くのは当然、少年のこと。
ここに書かれた文章と造ったゴーレムの出来で少年の将来が決まる。
あたしの自由時間のためにも、頑張って欲しいところ。
だから報告書も甘めに書いておくことにする。
なーに、どうせバレやしない。
自動でインクが補充させる魔法のペンで報告書に文章を綴る。
なにはともあれ、まずは期末テスト。きちんと合格してくれるといいんだけど。
「まぁ、あたしが気を揉んでもしようがないけど」
独り言がぽろっと零れて口元をきゅっと絞める。
一気に終わらせてさっさと帰ろう。
家で冷えたビールが待ってる。
今日はここまで。
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