5 鳥のゴーレム
「期末テストの内容は宝探しだ。この街のどこかに隠された宝を見付け出せれば合格だよ」
机上でテスト養子と睨めっこするような試験とは違うのか。
一流校とだけあってテストも一般とはかけ離れているみたいだ。
「自らの資質を示すいい機会だ。もちろん、優秀な少年のことだ。合格できてあたりまえ。不合格なんてありえない、でしょ?」
嫌なプレッシャーのかけ方をされた。
「じゃ、伝えることも伝えたし、ちょっと出てくるわ。四六時中付きっきりってわけにもいかないから。夕食時には戻ってくるから、それまで自由にしてていいよ。観光とか」
「そうですね。明後日に絶対合格しなきゃならない期末テストが控えてなきゃ、是非とも」
「良い心がけだ。じゃあ、テスト勉強頑張って」
重厚な音を立てて工房の扉が閉まる。
「宝探しか点点あれが使えるかも」
今はもう戻ることのない我が家から持ち出したゴーレムの試作品たち。
バックから取り出したのはその打ちの一つ、鳥のゴーレム。
魔力を流して起動すると両翼を羽ばたかせて工具の並ぶ作業机の上に着地する。
何ヶ月も動かしてなかってけど、動作に問題はなさそうだ。
「さて、素材はなにがあるかな」
工房の一角にある倉庫の前に立ち、重い扉を開く。
「……こりゃ凄い」
ドラゴンの鋼鱗、サンダーバードの卵殻、ケートスの金髭、竜血樹の樹液。
ゴーレム作りに必要な基本的な素材はもちろんのこと、ほかにも熱や圧力を掛けると魔力を帯びる魔晶石や希少鉱石の数々。他にも見たことのない魔物の素材が山ほどある。
リズさんは足りなくなったら言えと言っていたけど、当分そんな日は来ない。
「とりあえず……これだな」
使えそうな素材を取って作業台に戻り、鳥のゴーレムに取り付けるパーツの制作に取りかかる。ただの飾りだった目の硝子玉を入れ替えて、空からの視覚を確保する。
そのために必要なのが、この硝子のように透明な魔晶石トラマリニ。
「変形」
俺が持って生まれた固有の魔法は手に持った物体の形を変えられる。
魔晶石の結晶を適量分離させ、丸く整形すればゴーレムの眼球が完成だ。
「さて、と。あとは制御盤を……」
鳥のゴーレムを一旦停止させ、その中を開いて制御盤を取り外す。
薄い円盤状に描かれているのは、ゴーレムの自立行動を可能とする魔法陣。
縁取るような二重の円に幾何学模様。
ゴーレムの出来は魔法陣の精度で決まると言っても過言ではない。
魔法陣の縁に書かれた文字に命じられてゴーレムは動く。
この制御盤の魔法陣に刻まれている文字は主に飛行に特化したもの。
羽ばたきの始動と停止の条件付け、風向きに対応した姿勢制御、障害感知とその回避、本物の鳥を観察してその挙動を学習する情報蓄積、自動と手動の切り替え、その他もろもろ。
魔法陣に用いられる圧縮言語によって細かな条件付けが少ない文字数で可能となっている。
「こうしてみるとまだまだ改善の余地があるな。まぁ、今はそれより」
魔法陣の縁に刻まれた文字を魔法で幅寄せして隙間を作り、そこへ新たな指示を書き込む。リアクターから供給される魔力が魔法陣を介して意思を持ち、鳥のゴーレムに新たな機能を宿らせる。
「これでよし。さて、試運転」
鳥のゴーレムを再び起動し、工房の中を飛び回らせる。
魔法陣を弄ったけれど飛行に問題はなさそうだ。
「ちゃんと映るかな」
ゴーレムの眼球として使った魔晶石のあまりを魔法で変形。
形作るのは手の平サイズの板、魔晶板。
鳥のゴーレムがその目で映した映像をこちらへ投影することで上空からの視覚を得る。
魔晶板から発せられる光が空中に映像を描く。
けれど。
「曇ってるな」
こんなのは慣れっこ、ゴーレム弄りはトライアンドエラーが基本。
一発で上手く行かないのは世の常だ。
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