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10 戦闘訓練


 期末テストを無事に好成績で終えた翌日のこと。

 ひとまずの不安を取り払い、ぐっすりと眠り、すっきりと起きられた朝。

 晴れやかな気分で通学路を歩き、校門に差し掛かると、朝からは見たくない顔が待っていた。


「よう」


 姉弟揃っての赤い髪が目印のグレンだ。

 昨日のしょぼくれた顔とは違って、かつての威厳を取り戻しているように見える。

 それが姉の前ではハリボテ同然だということを、こちらは知っている訳だけど。


「わざわざ待ち構えてたのか?」

「あぁ、そうだ。昨日の一件、忘れた訳じゃないだろ」


 俺が勝ってグレンが負けた。

 取り戻した尊大な態度を見るに、卓袱台返しがしたいのかも。

 適当な文句を付けて勝負をうやむやにしたいとか?

 こちらはあのしょぼくれた顔を観ただけでもかなり溜飲が下がったので、べつにそれでも構わないけど。

 結局、何でも言うことを聞かせられるという権利についても、なにも具体的なことが思い浮かんでいないし。

 けれど。


「勝負は勝負だ。俺は負けて、お前が勝った。ルールに従い、なんでも言うことを聞いてやる」


 意外なことに、グレンは素直に負けを認めていた。


「さぁ、なにをさせたいか言え。お前が望むなら全裸になってグラウンドを逆立ち歩きしてやる」

「……したいのか?」

「そんなわけあるか! 姉貴の提案だ、これは!」

「そういう」


 露出狂の変態かと思ったが、どうやら違うらしくてほっとしている。

 それにしてもリズさんも容赦がないな。

 実の弟に全裸で、なんて。

 これが前に言っていた灸なのか?

 それにしたってそれを素直に俺に伝えるあたり、グレンもグレンだと思うけど。


「悪いけど、男の全裸に興味はない」

「……なら、どうするつもりだ」


 一瞬、ほっとした顔になったのを見逃さなかった。

 口にはしないけど。


「とりあえず保留ってことで。なに、そのうち良いのが思いついたら言うよ。それでいいだろ」

「チッ、しようがねぇ。刑の執行を待ってるようで気に入らねぇけどな」

「なら、全裸にするか? でも、やるなら俺の名前は出さないでくれ。関係者と思われたくないから」

「誰がするかッ!」


 正直、本当に見たくないのでどうか気の迷いを起こさないでほしい。

 そんなことを思いながら教室へと向かう。

 昨日一昨日と違って、教室の雰囲気が随分と和やかだ。

 期末テストの重圧から解放され、どこかみんなの顔も明るいように見える。


「お、来た来た。ネイトだっけ、昨日は凄かったな」

「学年二位なんだって? ゴーレムってそんなに性能いいんだな」

「今度、使ったゴーレムを見せてくれよ」


 そんな雰囲気もあってか、教室はこれまでにはなかった歓迎ムードで満たされていた。

 テッタラルラ魔法学校に入った初日に求めていたものが二日遅れで発生する。

 けれど、それも教室にグレンが入ってくると自然と消滅した。


「あ、じゃあまた今度な」

「ふん」


 同じ教室内に勝者と敗者がいればこうもなるか。

 とりあえず教室で浮いた存在にならずに済んだようで、そのことにはほっとする。

 友達もできそうだし、学園生活に不自由することはなさそうだ。


§


 テッタラルラ魔法学校の授業はレベルが高いが特に変わったことはない。

 国語、数学、社会、魔法学、音楽、そして戦闘訓練。

 魔法によってあらゆる環境指定が可能な訓練場にて行われるそれは、正直なところ前の学校とは生徒のレベルが段違いだ。

 生徒同士の模擬試合でさえ、俺が知る強い生徒の数倍は実力があるように見える。

 流石は一流校と、今日で何度思ったことだろうか。


「そこまで、グレン・リリラの勝利」

「おー、凄いな」


 この模擬試合の勝者はグレンとなった。

 相手をしていた生徒も強かったが、グレンは頭一つ抜けているみたいだ。


「勝負のやり方を間違えたんじゃないか?」

「戦闘向きの魔法じゃない奴に試合で勝っても誇れるかよ。つーか、なに平気で話しかけてんだ、テメェ」

「いいだろ? 別に。まだ知り合いって言えるレベルの生徒がグレンしかいないんだよ」

「お前と名前を呼び合う仲になったつもりはねぇが」

「まぁ、ほかに友達ができるまでの間だけってことで。あぁ、これに権利を使おうか」

「あぁもう、わかったからそんな下らないことに権利を使うな。まったく」

「なんだ? そっちにしてみれば美味い話だろうに」

「ちゃんとペナルティーを受けろって姉貴に言われてんだよ」

「難儀だなぁ、グレンも」

「うるせぇ」


 俺に姉がいなくてほっとしてる。


「次、ルリ・クルミ」

「あ、あの子だ」


 魔法によって荒野と化した戦場に、件の宝箱を譲った女子生徒が立つ。

 ルリって言うのか。

 教室にはいなかったし、別のクラスか。


「あの子の魔法も戦闘向きか。たしかに宝箱の提出も早かったしな」


 微ロスがあったとはいえ、空を行く鳥のゴーレムを追い抜かしてのゴールイン。

 相当な魔法の使い手だろう。


「あいつの魔法は戦闘向きだけど、それだけじゃねぇぞ」

「それだけじゃない?」

「見てればわかる」


 相手となる生徒が登場し、模擬試合は開始される。

 その瞬間、ルリの様子が一変した。

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