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8 客人か隷人か囚人か


「アル、わたくしの美貌は完璧ですわ。それを脅かすあの女の顔を二目と見られないようにしてやって。大丈夫、わたくし以外に価値のある女性などおりませんわ。完璧なわたくしに相応しい座はどこか、当然分かるでしょ?」




 ◆◇◆◇◆◇




 しばらく馬車に揺られている間に、まもるは折った袖を直し、手に魔力を乗せてスカートと袖のシワを伸ばす。迎えの兵士達のあの様子だと、この後どんな目に合わされるのか注意が必要だ。



 辺り一帯が光っただけで出迎えが迷わず遺跡に来たことと、消えかけた魔方陣があったことから、あそこは元から召喚の場なのかもしれない。


 来たのが異世界の聖女と想定していたことから聖女召喚の実績がある国なのだろう。もしくはあの鳥神様達から事前にお告げがあったのか。


 聖女として何が期待されているのか、それによって出すべき情報も変わる。しかし聖女業務は義務ではない。




鳥神達様との契約は以外の通り。


・魔力過多の頼りない系男子の愛し子で、鳥神達のこどもで、聖女召喚に失敗して廃人手前の心を救い、まもるも幸せになる。二人には絆の力がある。


・教育改革


・神様に勧誘されて召喚されたことは偉い人には内緒。



オプションは


・聖女として召喚され実力を示せば王族にも匹敵する扱いを受けられる。


・早期予約特典は魔力を吸い込み自在に操る力。


・優しいヘタレを夫にできるかも。



 まもるの優先事項は頼りない愛し子とヘタレを探して手懐け、魔法の教育改革をすること。


 幸いまだ聖女とは名乗っていないし、特にリッチな生活を求めていない。まもるがしたいのは本気を出すこと。高校デビューならぬ異世界デビューだ。新しい自分に、なる!






 馬車が止まり、開けてもいいか問われる。まもるが許可を出すと扉が開いた。踏み台が置かれている。


 外にはずらりと青い騎士達が並び、その前に偉そうな青年が立っている。手を貸す人間は相変わらずいない。それを確認してから大きめに溜め息をついて立ち上がり、外に出た。



 誰も何も言わない。もしやまもるが名乗るのを待っているのか。唯一会話をした兵士の顔を見る。



「ご挨拶を。」


「ああ、そうですね。馬車に乗せてくださりありがとうございました。ご丁寧な対応痛み入ります。」



 まもるは会話をした兵士に向かって礼を言い頭を下げた。皮肉を込めて。



「え?あ、いえ、そうではなく。」


「一緒に来いと言われ、他に移動手段がなかったので馬車に乗り、止まったので降りました。あなたがエルフェンバイン国の兵士でここが王城ということは把握していますが、私は誘拐されたのでしょうか?それとも罪人として護送されたのですか?」


「――もういい。早く入りなさい。」



 偉そうな青年が割り込んできた。近くで見ると、中年寄りだがイケメンで大柄で茶髪だ。見回すと全員茶髪のグラデーションだった。顔立ちが欧米系でなければ夏休み明けの高一の教室のような光景だ。



「どこにでしょうか?どうして従わなくてはならないのでしょうか?監禁されるのですか?」



 やや下向き加減だった青騎士達が一斉にこちらを見たのでまもるは一人ずつ目を合わせていった。みんなカラコンを入れているような明るい茶色の目だ。個々の顔の判別が難しい。慌てた交渉役兵士が声を掛けてくる。



「この方をどなたかお分かりですか?」


「いいえ、存じ上げません。」



 偉そうな茶髪がまた割り込む。



「君の国に王族はいないのか?」


「王族……二千年以上前から続く皇族はいらっしゃいますが、そうですね……現在は、国家権力を振りかざすのではなく……祭祀を司っていらっしゃいます。」


「祭祀?――君が聖女ではないのか?」


「私は自国では一般市民です。――というか私の国には社会的地位の上下はあっても身分の上下はありません。」


「――そういうことであれば不敬は問わない。権力は振りかざさないよ。」


「話しの流れからすると王族であられる?許可なく貴国に足を踏み入れましたこと、申し訳ございません。帰り方がわかれば直ぐに退去致します。」


「退去?――君は召喚に応え、この地に降り立った聖女ではないのか?」


「自国で普通に生活をしていたのに、気付くと廃墟に座り込んでいただけです。なぜか言葉は通じるようですが……」


「言葉が通じるのであれば召喚で間違いないだろうが、そもそも時が経ちすぎている。一旦は私の客人として城に迎えよう。どちらにしても詳しい話がしたい。まずは城に客間を用意させよう。」



 こうして、偉そうな茶髪を地位ある人間と分かりつつおちょくって、客人であるとの言質を取ったまもるは、案内されるまま大人しく客間に入った。







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