000 Holy World
20XX年
人類は栄華を極め、新たな領域に足を踏み入れんとしていた。
近年、目覚ましい成長を遂げた分野として、まず挙げられるのが軍需産業である。
科学技術の進歩と共に、人間の労働は機械に取って代わられ、能力無くあぶれた者が続出した。
落伍者はテクノロジーの華やかな成長を享受することなく、能力ある覇者もまた伸びぬ需要に悩まされ、結果、経済は停滞した。
時代に取り残された者たちが、食い扶持を確保すべく続々と反社会組織へ流れ、世界規模で治安は悪化していった。
彼らは国境無く暗躍し、組織的な略奪行為、人身売買、兵器・違法薬物の密輸ルートを確立せしめ、世界規模の巨大闇市場を作り上げた。
その犯罪被害や武力衝突が、個人のみならず企業、国家を揺るがすレベルまで肥大化したため、危機感を覚えた各国は、次々と軍備を増強して行く。
国から民間企業への兵器開発の発注が大幅に増え、企業は潤い、雇用が拡大。
皮肉にも争いにより、表の経済も再び活性化しだしたのである。
我が国、日本も例外ではなく、反社会組織による大規模な犯罪が横行した。
警察や自衛隊では手に負えなかった。
この為、政府は自衛隊を正式に軍と改め、新たに陸軍省、空軍省、海軍省の設立に踏み切った。
陸軍は、主に災害救助、警察と協力し犯罪の取り締まり等、国内の有事に。
空軍は、領空内の警備、及び民間機の護衛やハイジャック対策に務める。
海軍は、領海内の安全確保、そして東南アジアを中心に、軍事力に乏しい国への派兵、海賊の取り締まりを。
この世界的な軍備増強の動きは、対犯罪シンジケート以外に、もう一つ大きな要因がある。
この話から約20年前、アメリカ合衆国研究機関が発表した『ウィザード』。
それは人智を超えた特異な能力を持つ者たちの呼称であり、
その存在は数千万人にひとり、一億人にひとりとも言われる確立で現実に生を受けた人間であった。
ウィザードは一瞬で街を灼き、またあるウィザードは海を裂き道を成す。
まさに魔法と呼称する他ない、人智を超えた強大な力。
魔術師を何人保有しているかが、軍事力の指標となりつつあり、
彼らの能力が国防の要足りえる能力であると判断した国々は、心血を注いでウィザードの捜索及び研究を進めている。
核兵器に代わる新たな強大な武器として。
はじめて かいた しょうせつ です。
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