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第二十三話 X'day

第二十三話です。pixivでの先行公開で見てくださった方もいるかもしれませんが、まぁそこには目を瞑っていただいて…

 その日。彼女達は、金城邸の一室に集まっていた。その部屋は、きらびやかに飾り付けられている。


「やっほぅ‼︎メリー‼︎クリスマス‼︎」


「ちょっと…はしゃぎ過ぎよ。火野さん。」


「ねぇ、そろそろ私のことを、美波って呼んでいいんだよ?つきむん?」


「分かったわ。火野美波。」


「いや、久々のそれは心に来るから…勘弁を‼︎」


 12月24日。クリスマスイヴ。日向みのり、影山月美、火野美波、金城愛の4人が小さなパーティーを開いていた。わいわいと子供のようにはしゃぐ美波とそれをたしなめる月美。そんな彼女達を見ながらみのりは呟く。


「本当は雫ちゃんも来れたら良かったんだけど…」


「まぁ、彼氏とのデートだったらぁ、仕方ないよねぇ…」


 みのりの呟きに答えつつ愛がみのりの元へやってくる。愛が言った通り、雫は歩夢と二人で出かけているためこの場には不在だ。向こうで話している二人を見つつ、愛はみのりに問う。


「ねぇ、いつ最終決戦が始まってもおかしくないこんな状況で聞くのもアレだけどさぁ…本当に良かったのぉ?」


「擬似聖因子のことですか?」


「うん。」


 三週間前。ラスト・ラグナロクのあの日。みのり達の前に現れた愛。彼女は擬似聖因子の存在と、それを使えば、みのり達の家族だけはみのり達が消滅してしまっても、彼女達のことを覚えていられるかもしれないということを伝えた。しかし、みのり達はそれを選ばなかった。


「正直、忘れちゃった方が心の傷は小さいだろうし…副作用がないって保証されてるわけじゃ無いんですよね。」


「まぁねぇ…」


 愛が、自身の純白の砂時計を取り出す。中には一粒も砂が入っていないままだ。それを見つめつつ、呟くようにみのりが問う。


「愛さんは、後悔してないんですか?自分の身体で実験なんてしなければ良かったって。」


「ん?全く。」


「え?」


 何の躊躇いもなく答える愛。そんな彼女の様子に、みのりは軽い戸惑いを覚える。そのことに気が付いていない愛は、更に言葉を続ける。


「だってさぁ?悲しいじゃん?大切な〜、大切な妹のことを忘れちゃうんだよぉ?」


 みのりは返す為の言葉が思い付かず、黙ってしまう。気まずい沈黙。そんな二人の様子にようやく気が付いた月美と美波も、こちらを見ている。


「そう、かもしれませんね…でも、私は、お母さんやお父さんを…」


「うん。それは、その人その人の価値観とかぁ、倫理観とかのだと思う。だから、みのりちゃんはみのりちゃん。私は私。それでいいんじゃないかなぁ?」


「…ですね…絶対に、金城さんの砂時計、取り返しますから…」


 みのりの言葉を聞いた愛は、自分の純白の砂時計に視線を移して、またみのりの方へ視線を戻す。


「私も、手伝えたらいいんだけど〜…まぁ、それは難しそうだしねぇ。」


「愛さんの分まで、私が。元は、私の責任だから…」


 仁美の最後の言葉を思い出しつつ彼女は言う。もう、覚悟は決まっている。約束を果たす覚悟が。自分と向き合う覚悟が。


「あんまり気に病まないでよぉ?無理は、しないでね?」


「はい‼︎」


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 パーティーが終わり、みのりと美波が金城邸から出ようとした瞬間。それは起きた。


「…始まったね。」


「どうやら、そのようね。」


 みのりの呟きに答えたのは、異変に気付いて即座に二人と合流した月美だった。


「予想通りではあるのだけれど、愛さんの擬似聖因子では精神体を形成することは出来ないようね…少なくとも、今は。」


「うん。分かった。じゃあ、とりあえずシズちゃんと合流…」


「遅れてすみません‼︎」


「おぉう、噂をすればなんとやら。」


 雫もやって来て、全員が揃った。


「良かったのか〜?シズちゃん?あゆすけとのデートの途中だったんじゃないの?」


「いえ、ちょうど歩夢君に送ってもらって、家に着いたタイミングだったので…って、火野さん‼︎からかわないで下さい‼︎」


「ハッハッハ〜‼︎お姉ちゃんは可愛い妹が心配なのだよ‼︎それはそうと、ちゃんと『あれ』、持って来た?」


「はい。」


「じゃあ、作戦通り…始めるわよ‼︎」


 月美が叫んだのと同時に、槍の雨が四人を襲う。それにいち早く気付いた雫と月美が、拳銃のハンマーを操作する。雫がホーミングで一部の槍を破壊。残った槍は、月美が緑色の砂時計から出した木の根で絡め取る。


「…ゥワーオ。作戦会議で、こんなに豪華な歓迎が待ってるって言ってたっけ?」


「初っ端から予想を外しちゃったね…」


「それでも、防ぎきったことには変わりないから問題無いわ。ほら、奴も姿を現した。」


 月美の言った通り、上空から現れる一つの影が舞い降りる。


「やれやれ。なるべく早く終わらせたかったんだけど。」


「えぇ。こっちも同感よ。だからこそ、早く終わらせるわ。私達が勝つという結果で…‼︎」


 月美が黒い拳銃のハンマーを操作する。そうはさせじとラグナロードが棘付きのワイヤーを繰り出すが、加速した美波がラグナロードに接近、ゼロ距離射撃でダメージを与える。そのダメージで伸びかけていたワイヤーが消える。しかし…


「おろ⁉︎何で?浅い⁉︎」


「避けて下さい‼︎」


 雫に言われ、美波が慌てて回避すると、先程まで美波がいた場所は業火で包まれていた。おそらく、月美の体内に潜んでいたときに使っていた熱風攻撃の強化技だろう。


「残念だったね。僕の体内には金城仁美の砂時計がある。だから、聖因子の力もほんの少し使えるんだ。聖因子で聖因子を傷付けることは出来ない、だろう?だから僕は、聖因子で薄膜を張ったんだ。これで君達の攻撃の威力はかなり削がれる。それに対し…」


 追加の火炎放射が美波を襲う。


「攻撃には僕達本来の力を使ってる。これでこっちの攻撃はしっかりと入るわけだ。」


 それを間一髪で躱す美波。安心したのもつかの間。第二、第三の火炎放射が美波を襲う。


「うほ⁉︎危ね⁉︎つきむん‼︎早く‼︎」


「分かってるわよ‼︎水野さん‼︎」


「は、はい‼︎」


 雫が月美に茶色の砂時計を投げる。その隙を狙ってラグナロードが巨大な槍を放つ。


ーあの大きさは…ホーミングでも壊せません‼︎躱すのも、チャージショットを貯めるのも間に合わないし、千春君の砂時計も、手元には…どうすれば‼︎


 自分の詰みを悟り、恐怖で目を瞑る雫。


ーもう…もう‼︎


 轟音が響く。痛みはない。ただ、風圧だけが雫を襲う。


「いきなりこの役割っすか…流石に、扱いが酷くないっすかねぇ⁉︎」


 目を開けると、目の前には巨槍を体で受け止める少年の姿があった。


「なっ‼︎土屋千春⁉︎どうして君がここに⁉︎」


 そう言った後、ラグナロードはこの奇跡を引き起こした犯人に気付き、彼女の方を見る。


「隙ありだよ‼︎」


 ラグナロードの背中に熱い感触。後ろから忍び寄っていた美波の手が彼の体内に入ったのだ。ラグナロードの体から抜かれた右手に握られていたのは…


「なっ⁉︎いつの間に‼︎」


 ラグナロードから奪った砂時計を持って逃げようとする美波。逃すまいと彼女に攻撃を仕掛けようとするラグナロードだったが…


「させません‼︎」


「落し物は持ち主にっと‼︎」


 雫の射撃と、先程千春が受け止めた巨槍がラグナロードを襲う。高速移動でそれを躱すが、躱した先には…


「あなたには三つほど、言っておくべきことがあるの。」


「…‼︎金城仁美⁉︎」


 ラグナロードの真上から、睨みつけつつ射撃を開始する仁美の姿。


「まずは一つ。私の友人を傷付けることは許さない。」


「くっ…‼︎」


 高速移動をしようとするも、雫と千春も弾幕を張っているため、下手な動きは出来ない。仁美の砂時計を失った今、聖因子の薄膜も消えてしまっていて、先程までのような余裕は無くなっているのだ。


「二つ。あなたの思い通りにさせる気は無い…」


 言いつつ仁美はハンマーを操作する。その隙に弾幕の薄くなった場所を通り、一旦距離を取ろうとするラグナロードだったが…


「そして三つ。この技の使い方を教えてくれたことだけは、感謝しているわ。」


 仁美の拳銃から棘付きのワイヤーが現れ、ラグナロードを縛り付ける。


「なっ⁉︎」


「火野さん‼︎今です‼︎」


「オッケー‼︎ドーン‼︎」


 待機していた美波のチャージショットが、逃げる術を失ったラグナロードに襲いかかり…

7月15日…次で終わりです‼︎最後までよろしくお願いします!?

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