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第十八話 侵略者の正体

ここから数話、怒涛の情報公開が続きます。情報量が多いのでゆっくり読むことをお勧めします。

「僕達は、哀れな存在に過ぎないんだよ。そうだね…いきなりだけど単刀直入に。僕らの正体から言おうか。僕らは、地球とはまた別の、遠く離れた星からやって来た。今はもう、失われてしまった星から、ね。」


 金色の砂時計を奪ったデビルは、ゆっくりと語り始める。


「何の為に、ですか?」


「それを説明する為に、まずは僕らの星で起きた事件の話から始めようか。


 ある日、僕らの星で地殻変動が起きたんだ。その地殻変動は多くの犠牲者を生み、地割れを引き起こした。まぁその地割れ自体はそこまで大きくなかったし、地震対策も十分に進んでいて、被害者もそこまで多かった訳では無いんだけど…

 問題は、その地割れの中から見つかったものだったんだ。新しい物質が見つかったんだよ。全く新しい原子構造を持つ、ね。電子も陽子も、中性子も存在しない、謎の物体だ。それを星で一番の研究機関で研究したところ…事件は起きたんだ。研究中にその物質は、その星の全ての生物の肉体が消滅してしまったんだ。

 結果、その星に生存する全ての生物が精神体となり、知性を持たない生物は全て精神体を維持できず消滅した。残された僕らは、一つ上の次元へシフトしてしまったんだ。肉体という概念を持たないが故に、死や老衰という概念を捨てた存在にね。ただ、精神体の受け取る視覚、聴覚などといった感覚と、肉体の受け取るそれとは乖離し過ぎていたんだ。」


 どこか恨めしげに「君達はその違いを、その砂時計を使って肉体と交信、調整をすることでそれを限りなくゼロに近づけているようだけど…」と補足しながらみのり達の手元の砂時計に視線を移し、その後月美の本体に視線を移す。


「それと、あなた達の行動は、どう繋がってくるんですか?時間を止めて、そこで暴れて…」


 そう雫に問われて、何故か露骨に顔をしかめる。


「勘違いしないで欲しいけど、時間を止めてるのは僕らじゃないよ。おかげ様で、僕らも目的の達成から遠ざかる羽目に陥っているんだ。『奴』のせいで、ね…」


 不本意そうに、吐き捨てるように言う。表情から判断すると、どうやら嘘では無いようだ。


「で、その目的は何なのよ…」


 月美が言うと、デビルは待ってましたと言わんばかりに月美の方を向きつつ口を開く。


「うん。僕をここまで成長させてくれたお礼に教えてあげるとしよう。僕らの目的はただ一つだ。肉体を取り戻し、生き返り、そして死ぬことだよ。


 僕らは知的生命体の体内に侵入し、十分な量の肉体を介した感覚情報を蓄積させることで次の段階に行けるんだ。ラグナロクを統べる王…ラグナロードとでも呼ぶべき存在にね。まぁ、それが今の僕の状態に近いんだけど…

 そこで、問題が生じたんだ。それが君達の言った謎の時間の停止と、君達の存在そのものなんだ。

 僕らが知的生命体の中に侵入出来るのは、進んだ時間の中でしか出来ないことなんだ。当然だよね。そもそも肉体の持ち主が五感を使えないんだ。そんな状態で乗っ取ることが出来る訳がない。

 だから、時間を止めている存在が僕らに気付いて時間を止める前に侵入に成功した僕達だけが、条件を満たす権利を得たんだ…権利を得ることが出来なかった者達は、止まった時間の中で暴れ回ったり、イレギュラーである君達を排除することで、強引に時間を進めることが出来ると信じて疑ってなかったようだね。だけれど、正直それは、愚の骨頂だよね?

 そして君達の存在。聖因子という見たことのない力で、君達は僕らを追い詰めた。今までは抵抗されることもなく体内に侵入出来たからね。初めて時間が止まったときや、君達が僕らを撃破するのを見たときの驚き。これはとても形容し難いものだよ。」


「いろいろと、まだ分からないことはありますが…その、次の段階に行くと、何が起こるんですか?」


「流石だ。いい質問だね。それじゃあ答えてあげよう。

 僕らが次の段階に進む。それはすなわち、その星の全ての命、及び全ての命の可能性を根こそぎ吸収することで、肉体を再生する権限を得ることを意味するんだ。次の段階に進めなかった者は別の星を求めてさまよい、進めた者だけがその星に残る。そうして僕らは命という命が消えた世界に一人降り立ち、そしてやがて餓死する。

 つまり、死という名の楽園を求めて星々を巡る者…それが僕らという訳だよ。どうだい?よく分かっただろう?」


「何で、そんな無意味なことを…」


 というみのりの問いに対して…


「無意味だって?君はそれを、本気で言っているのかい?

 僕らの見る世界は、濁っているんだ。

 僕らの聞く音は、掠れていて耳障りで。

 僕らの味わう味は、無味乾燥で。

 さっきも言っただろう?僕らの五感は、君達のそれとは乖離しているからね…まぁ、影山月美。君のおかげで、少しはかつての五感を感じることが出来たんだけどね。

 そんな環境下で、約六百億年だ…仮に君達なら、耐えられると思うかい?要するに、被害者なのはお互い様って訳だよ。」


 と、呆れたような口調でみのりの問いに返答するデビル。


「だからといって、多くの命を奪う理由にはならないでしょ⁉︎」


「うん。そうだよね。君達の立場からしたら、そう思って当然だ。だけど、もし仮に僕らの立場になったらと考えたら、僕らの思考が分からない訳でもないんじゃないかな?

 つまりこれは、ただの君達と僕らによるエゴとエゴの押し付け合いでしかないんだ。そして今、そのエゴを通し抜ける立場に近いのが僕…ただ、それだけの話だ。

 さて、君達とはもう少し話をしたいところだけど、残念ながらもう時間だ。そろそろ僕は退散するとしよう。

 正直、君達が行動出来ないこの瞬間に君達を処理したいところだけど、まだまだ力が定着していない。

 この聖因子の力が定着して、真のラグナロードとでも呼べる存在になれたときに。また来るよ。」


「待って下さい‼︎そんなに死にたいのなら…これじゃあダメなんですか?」


 雫が手首の動きだけで、強引にデビルに銃口を向ける。デビルはそれを一瞥し。


「うーん…まぁ理由は言えないけど。仮に僕の推論が正しければ、それじゃダメなんだよね。」


 そう言い残して、デビルは去って行った。それと同時に、みのり達を縛っていた鎖が砂のように分解され、消滅する。


「さて…そろそろあなたもそろそろ口を割った方がいいんじゃないかしら?アース。」


 月美が呟くように言う。それに答えるかのように、はるか上空から一筋の眩い光。


「やはり君は気付いていたか。こうして君と話すのも数ヶ月ぶりだな。影山月美。感謝する。おかげで奴から、有益な情報を得ることが出来た。」


 光が収縮し、白い男が現れた。その男、アースが言葉を続ける。


「ただ、その情報を有効利用することは難しそうだ…これは私の計画に乱れが生じたせいであり、それは君達のせいだ。」


「訂正なさい。『君達のせい』じゃない。『影山月美のせい』よ…まぁ、それはひとまずどうでもいいとして。話を逸らさず、あなたもそろそろ口を割りなさいよ。土屋千春に余計なことを吹き込んだぐらいだもの。嫌だとは言わせないわよ?」


 アースを睨みつけつつ月美は言った。アースが視線を移せば、アースを見つめる三人の姿。


「仕方がない。それでは君達に、私の話を聞かせるとしよう。聖因子の正体と、私の計画について。」

ついに明かされるホロウデビルの正体。次回明かされる真実は…?

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