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プロローグ 赤い空の下で

はじめまして‼︎和井慶朔(かずい けいさく)です‼︎

この作品、物語の性質上面白い話と正直ローテンポな話が出来てしまいます。そのローテンポな話で切らず、最後まで読んでいただけると幸いです‼︎

 その瞬間。夕焼けの空の下、時間が止まった。「彼女」はそのことを、何故かは分からないが理解していた。いわゆる直感というものだ。


ー時間が止まるってことは、全ての運動が止まるってことだから…今私だけ動けたとして、何かを食べたら、味ってするのかな?とりあえず、噛むことは出来ないよね。


 少女、日向みのりは、そんな無意味なことを考えていた。彼女は決して冷静なのではない。あまりにも唐突な出来事だったが故に動揺し、感覚が一種の麻痺状態になり、その動揺を感じる事が出来ずにいるのだ。

 と、止まったはずの時間の中、彼女の目の前に巨大なサイのような怪物が現れる。ちなみにそれは六本の足と四つの目を持つ、軽トラ一台分ぐらいの大きさで、岩のような肌を持っているという、もはや原型を留めてない姿だが。そんな怪物がゆっくりと口を開く。明らかにみのりを狙っている。と、ここでようやく麻痺していた動揺、恐怖が蘇る。


ー死にたくない‼︎逃げたい‼︎動けない‼︎助けを呼べない‼︎誰も助けに来れない‼︎


 止まった時間の中、止まらぬ思考の中で彼女はふと思う。あぁ、こうやって何かを考える力も、時間と一緒に止まってくれた方が怖い思いをしない分まだ良かったのに、と。

 その時、サイ(?)がその巨体に似合わぬ素早さで後ろに下がる。先程まで怪物がいた場所を銃弾(?)が駆け抜ける。


「はぁ…外しちゃいましたぁ。」


 唐突に隣の空間が歪むように、一人の魔女風の服を身に纏った少女が現れる。彼女の髪の毛は長く、あまり手入れはされてない。その長い前髪で片目が隠れてしまっている。見たところ、恐らく中学生ぐらいだろうか?


「シズちゃんがこの距離で外すとか、コイツ速すぎない?デッカいクセにさぁ。」


 もう一人の、パワードスーツのようなものを装着した少女が文字通り飛んでくる。長めの髪をつむじのあたりで輪状に止め、前髪はヘアピンで止めている。彼女らの手には一丁の拳銃。そして彼女らは宙に浮いている。


「確かに、あのデビルは速いですけど、それより、ビックリしちゃったからっていうのが、大きいです…」


「ん?シズちゃんが外す程ってことはもしかして…」


「はい。この人、起きそうですよ?」


 明らかにこちらを見ながら言う「シズちゃん」と呼ばれた少女。


「えぇ⁉︎マジで⁉︎」


「とりあえず、私が、デビル引きつけるので、その間、念の為に防衛をお願いします…」


「へ⁉︎ちょっと待ってよシズちゃん‼︎何で私に押し付けんの⁉︎」


 もう既に飛び出してしまった「シズちゃん」に聞こえるように叫んでいる。


「だって…怖いんです‼︎」


「あぁもう‼︎ここで人見知り発動しないでよ‼︎ちーちゃんは⁉︎」


「千春先輩は今、取り巻きの、相手をしています‼︎」


「ほほう…なるほどなるほど‼︎なら私しか‼︎ってちょっとぉ‼︎待ってぇ‼︎私を一人にしないどくれぇ‼︎」


 気が付けば、逃げた怪物を追ってかなり離れてしまった「シズちゃん」に懇願するが、願いは虚しく散ってしまう。


「あぁもう、『あの子』は多分…いや、絶対に手伝ってくれないし…やるしかないかぁ…あ、ただ時間を無駄にするのももったいないし、いろいろ説明するね?

 私は火野美波。んで、さっきの人見知りっ娘は水野雫ちゃんね?ってまぁ、んなことはどうでもいっか。

 えっと、まず、君は感じてると思うけど、今さ、ちょいと時間は止まっちゃってんのね?でもあなたの中では、『聖因子』ってのが出来つつあるから、この止まった時間を感じれるの。


 …ってうぉぉ⁉︎なんか来たぁ‼︎早く説明終わらせないと‼︎えっと…それが完成したら、悪趣味な格好した奴が来るから、そいつから力を貰って‼︎そしたら、今の私達みたいに戦えるから‼とりあえず︎詳しいことは、時間が進んだ後‼︎今の時点で分かることは後で説明するから、時間が進んでもここで待ってて‼︎」


 そう言い残し、新しく現れた猿のような怪物(全身が鉄で出来ていて、機械のような見た目だったが…)の方へ向かって走ってしまう。


ーえ?え?ちょっと待って⁉︎別に戦いたいなんて思ってないんだけど⁉︎ちょっと⁉︎ちょっと〜⁉︎


 みのりが心の中で叫ぶが、時間が止まっていて喋ることが出来ない今、それは当然無意味だった。

 その時だった。目の前で光が収縮する。現れたのは、純白のロングレザーコートを着た、これまた純白の長髪の男。


ーあ、悪趣味な服の人。何か良く分かんないけど、本当に来ちゃった。


「君は戦う権利、戦う義務を手に入れた。」


ー…いや、どっちもいらないんですけど…


「君の持つ聖因子…君にその力を使う術を与えよう。」


ー…いやいや、聞いてる?だからいらないんですけど。あ、そっか。喋ってれてないから聞こえないか。


「私が与えたその力、君の命、君の大切な者の命を守る為に…」


ーねぇ、ちょっと待って‼︎これってもしかして、戦わなきゃ死んじゃうの⁉︎


 などと考えている間に、目の前に中身が空の砂時計が現れ、それがみのりの額に触れた瞬間に力が体から抜けていくように感じた。


 空だった砂時計の上半分の部分に、少しずつ橙色の砂が溜まっていく。砂が満タンに満たされた瞬間に、それは起きた。突如みのりの視点が変わったのだ。新しい視点から最初に見えたのは、鏡ではなく写真などで見るような逆向きではない自分の姿。時間が止まったように(実際止まっているのだが)見えるので、余計写真のように見える。と、下を見下ろしてみれば、手が、足が生えようとしていた。


「何これ⁉︎気持ち悪⁉︎」


 思わずそう叫び、自分も「シズちゃん」達のように止まった時間でも喋れる口が出来たことに気付く。


「お、もう良さげだね。ほんじゃ、ちーちゃん‼︎シズちゃん‼︎大技用意どうぞぉ‼︎」


「何回言えば分かるんすかねぇ…良いですか⁉︎僕は男っすから‼︎」


「分かりました…正直もう、残弾が心許ないですけど…」


 後ろ姿しか見えないが、取り巻きを倒していたらしい「ちーちゃん」らしき人影も現れる。


 三人の銃が光り輝き…みのりが自分の新しい体が出来た、そう認識した瞬間、三人の銃が火(?)を吹いた。それをくらったサイ型の怪物が砕け散り…


「んじゃ、約束通り、ここで待っててね‼︎絶対だよ⁉︎絶対‼︎」


「美波」と名乗る少女の言葉だけが響き、その余韻が消えた途端。夕焼けの空の下、時間が動き出した。

第1話は今日の午後投稿予定です。

最後までよろしくお願いします‼︎

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