白の魔女ミラルダ③
1ヶ月後、わたしはジュードとふもとの村にいた。
たまにする、定期の買いこみだ。
いつもだと途中で手分けして、村を回る。
今回もそうなんだけど、正直胃がきりきりする。
「はぁはぁ……うぇっ……!」
ひとりになってから、わたしは変な声でうなっていた。
きっと、薬を売ったジュードはその足で指輪を引き取りに行く。
もしかしたら、あと数時間で……プロポーズされるかもしれない。
そう思うと、足ががくがくして、内臓が飛び出そうになる。
だめだ、休もう。
死ぬ。これからのことを考えるだけで死ねる。
広場の切り株に腰かける。
「不老不死でも、わたしはまだ60歳……。恋なんてしたことないけど、恋ができないわけじゃなくて……いやいやいや…………」
ぶつぶつぶつ……。
確実に危ない人だけど、言葉が止まらない。
いや、違う。
黙っているのに、耐えられないのだ。
ぶつぶつぶつ……。
「姉様、どうしたの?」
「んぎゃう!?」
いつのまにか、目の前にジュードが立っていた。
「……なんか、変だよ? ここに来るまでもアレだったけど」
「ん……いや…………なんでもない…………」
「なら、いいけど…………」
ジュードの顔が、こわばる。
ポケットに、小箱が入っているように見える。
「あ……っ」
でも、ジュードは何も言わず、わたしに手を伸ばす。
「……買い物もしたし帰ろう、姉様」
「うん…………」
ジュードの手を取ったわたしは、驚いた。
……熱かったのだ、ジュードの手が。