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拝啓、桜色に溺れる。  作者: 西野鈴音
終章 敬具
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敬具

 徐々に桜が散っていくのを、私は見ていた。花の命は、儚く短い。けれど、その儚さを美しく思い、楽しむのが桜の楽しみ方ではないかと思う。

 幼稚園の小さな体育館の中で、園児たちが別れを惜しむ歌を歌う。泣いてしまう子、よくわかっていない表情を浮かべる子、楽しそうな子。さまざまな性格を持った子供たちの中から、自分の子供の座っている位置を見つけ出すのは、親とは言えど、なかなかに大変である。

 そっと体育館の扉を開ける音がした。その先には、慣れないスーツを着た誠司さんが立っていた。

「ごめん、遅くなった。もしかしてもう順番終わった?」

 声を潜めながら誠司さんが隣に立つ。すでにステージの上では卒園証書授与が始まっており、受け取った子から、自分の名前と将来の夢を語っていた。

「まだ。や行だから結構遅いの」

 八幡はいわゆるアイウエオ順でいけばかなり遅いほうの名字に入る。私自身はかつてあ行だったころに随分と出席番号が早いせいでいやな思いをしたものだ、とくだらないことを思い出す。

「ほら、右から二番目に座ってるでしょ?」

我が子を小さく指差すと、誠司さんは少し笑った。

「本当に大きくなったよなぁ」

「ほら、名前呼ばれるから黙って」

 夫に注意しつつビデオカメラを回す。卒業証書を受け取るために登壇した子供に焦点を合わせる。受け取り終わった子供が、くるりと回れ右をした。左胸につけた卒園式のコサージュが揺れる。小さな男の子らしい、高い声が体育館に響く。


「八幡司です。将来はお母さんとお父さんみたいな、立派なお話をかける絵本を作る人になりたいです」


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