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デュランの落書き その三

『邪神の異世界召喚~鬼畜魔王はダンジョンにて嗤う』が、HJノベルス様より書籍化します!

発売は6月末! Amazonでも予約開始されておりますので、よろしくお願いします!

 

 エルフ一行は、美しき主従愛? を見せてくれたセバスチャンと令嬢の応急手当てをすると通路の端にそっと座らせた。


「本当ならば一階層まで担いでいってやるところなのだが……」


「こんな奴のためにそこまでしてあげる必要もないわよ。どうせここのダンジョンにいる限り殺されることはないんだし。放っておいたらいいのよ」


 エルフの冷たい言葉に聖騎士は思わず眉をひそめる。しかし、反論はしない。


 このダンジョンは、イケメンで心優しいダンジョンマスターのお陰で基本的に冒険者を殺さないのだ。それはもう階層をうろつく魔物にまで徹底した不殺ぶりで、例え冒険者が魔物ひしめく場所で気絶しようと死ぬ心配はないのだ。


 だから、聖騎士も眉をひそめるが咎めはしなかった。


 置いておいても死ぬわけでもないのに自分達がわざわざ一階層まで担いで戻る必要はないからである。


 これが生死のかかった普通のダンジョンであれば、もっとシビアでドロドロとしたやり取りが見られるのかもな。


 危機的状況で骨折した冒険者を見捨て、囮にして逃げ帰るパーティーとかありそうだ。


 ああ、そういうのもありだな。


 俺が心躍る危機的状況を考えていると、ディルクがハンスに小声で話しかけた。


「……ハンス気付いたか?」


「何にだいディルク?」


「……お前はこれを見て、この先を進む危険性に気付かないのか?」


 険しい表情をしながらディルクが指で示したのは床を転がるゴム弾。


 すると、ハンスはゴム弾を凝視すると、ハッと何かに気付いたような顔になり、


「ま、まさか、この大きな玉が……こ、ここ、股間に飛んでくる!?」


「……大量に散らばっている玉とさっきの小さな玉を見れば、そう考えるのが妥当だろう」


 ディルクがしかりと頷くとハンスは一瞬にして顔色を青くした。


 先程の小さな玉であのような雄叫びを上げていたのだ。このような大きなゴム弾が股間に当たれば、どのような激痛がくるか簡単に想像できる。


 自分の股を守るように狭めるハンスとディルクからは恐れという負のエネルギーが濃密に漂っていた。


 これは男の本能からくる恐怖なのだ。仕方がないだろう。


 ま、同情はするけど容赦はしないが。


「レイシア、今日はもう引き上げよう!」


「はあ!? なに言ってんのよハンス! まだ二階層だし、エリナよりも先に進めるのよ!? ここで撤退したら、この女と変わらないじゃない!」


 自分の身を心配して保守的になるハンスにエルフはキレる。


「……この老人と女が目の前で倒れているのだ。ほっとけないだろう」


「ディルクがそんな綺麗ごと言うなんて珍しいわね? いつもは女性がダンジョンで倒れていてもほっとけって言うくらいなのに……」


 らしくない言葉を言うディルクを見て、エルフが胡散臭いものを見るような顔をする。


 確かに普段のディルクであれば、このような綺麗ごとは言わない。


 リアリストである彼は、例えダンジョンで人が倒れていようと死なないから放置するのだ。例え、転がっているのが美人であろうと。


 そんなディルクが老人だから、少女だからという建前を使って、撤退を進言するのはおかしいもんな。


 それはディルクも思っているが、やはりこの先を思うと進みたくないのだろう。


「……主従の愛に心が打たれたんだ」


 そんな絞り出すようなディルクの返答を聞いたエルフは「ふっ」と小馬鹿にするような鼻息を鳴らした。


 今の表情は水晶越しに見ている俺でも、思わずイラっときたな。


「撤退なんかしないわよ。さっき言った通り、ここでは冒険者は死なないから放って行くわよ」


 そう言うと、エルフは話は終わりだと言わんばかりに背を向けて歩き出す。


 それを暗い面持ちで見つめるハンスとディルク。


「何を心配しているのかわからんが安心しろ。何かあれば私の防御魔法で守ってやるから」


「本当に頼んだよ?」


「……よろしく頼む」


 励ますような言葉を言ってくる聖騎士にハンスとディルクは酷く心の籠った声で答えた。


 ディルクはともかくハンスよ。お前はパーティーを守る騎士なのにそれでいいのか……。




 ◆




 エルフ一行がセバスチャンと令嬢を置いて奥へと進んでいくと、いなくなった場所めがけてやってくる青いマーカーが。


 タイミング的にもしかしてあいつか?


 そう思って水晶の画面をエルフから青いマーカーに変更。


 すると、そこにはウキウキとした様子で歩いてくるデュランがいた。


 また例の審査が始めるというのか。確か以前は『鞘に収まったナイフ』と『フランベルジュ』だったか。


 セバスチャンの股間は、どのような査定をされるというのか。


 俺がワクワクとしながら見守っていると、デュランは座っていたセバスチャンを寝かせると、早速身体をまさぐり始める。


 鮮やかな手つきでベルトを引っこ抜いて、チャックとズボンを下ろす。


 すると、股間の辺りから銀色に光る物質がポロリと落ちて、通路内で澄んだ音を響かせた。


『んっ? なんか股間の辺りから銀貨が出てきたぞ!?』


 さすがに股間から銀貨が出てくるとは思っていなかったのだろう。デュランが銀貨を摘まみ上げて驚く。


 ああ、あれはセバスチャン最後のお守り。色んな意味で俺やゴブリンを驚かせたものだ。


 本当にパンツにつけていたんだな。


 デュランはひとしきり銀貨を眺めると、それを懐に入れる。


 ずっと股間に密着していた銀貨なのだが教えないでおこう。世の中には知らない方が幸せなこともある。


 俺がしみじみとそう思っていると、デュランがセバスチャンのパンツに手をかけた。


 それを確認した俺は、汚物を見ないように即座に画面の角度を調整。デュランの後ろ姿で股間が見えない位置に切り替える。


 すると、パンツに手をかけたデュランがそれを一気に下へとずり下ろした。


『おお? おおおおおっ!?』


 デュランから上がる驚きとも怪訝とも言えるような声。


 何度か査定をしてきたデュランであるが、ここまで声を上げるのは初めてだ。


 一体どのようなものがそこにあるのか非常に興味をそそられるが見たくない。だけど、デュランの反応からしてどんなものか気になってしまう。毎度ながらジレンマだ。


 俺がソワソワとしながら見守っていると、デュランは腕を組んで考え込む。


 それからハッと思いついたようにポーチから油性マジックを取ると、セバスチャンの下腹部にこう書い

た。



 →ショーテル



「……ショーテル?」


 確かエチオピアで使われていた両刃の剣で、敵の盾を避けて攻撃するために刀身が大きく湾曲している。鞘に収めにくい、重心が安定しないなど玄人向きの武器だ。


 セバスチャンの股間は、それに例えられるほど湾曲しているというのか!? それに鞘に収めにくそうで安定していないって……うー、気になる! でも、見たくはない。


 何だろうな。この怖いもの見たさのような感じは。


 フランベルジュのように少しだけ見るべきだろうか? 


 俺がそんな悶々とした迷いを抱いていると、デュランは令嬢の方へと進む。


 セバスチャンと同じように令嬢を仰向けに転がすと、デュランはフリルのついた高級そうなカッターシャツのボタンを片手で外していく。


 こいつも随分と手慣れたものだな。だけど、俺だってボタンを外す技術は負けないぞ?


 昔、そういう場面を想像し、いざそうなってももたつかないように練習したからな。


 三秒もあれば大体外せるな。後は相手を作るだけって……この話は悲しくなってきたのでやめよう。


 俺がため息を吐くと、デュランは全てのボタンを取り払ったようだ。


 それからデュランは、店の入り口にある暖簾をくぐるような軽やかな手つきでシャツをめくる。


 何と恐れと迷いのない鮮やかな手つきだ!


 俺はデュランに驚嘆の念を抱きながらも、必死に水晶でスクリーンショット。


 すると真っ白な肌が覗かれ、その奥には紫色のブラらしきものが見えている。


 シャツから覗く眩しいまでの肌と、その奥にあるエロスを感じさせる紫色のブラ。素晴らしきチラリズムだ。


 ……デュラン。お前って奴はアンデッドの癖にわかっているなぁ。


『んー、こいつの身体はつまらねえな? 良くもなく悪くもないし特徴がねえ』


 そのような台詞を起きている女性に向けて放ったら、どのような反応が返ってくるのだろうな。さすがは魔物であるデュラン、怖いもの知らずだ。


 とはいえ、確かに令嬢の身体は普通だな。


 エルフのように胸がまな板なわけでもなく、大きいわけでもない。


 パーティーメンバーは男性であるセバスチャンだけなので、比較する相手もいないから面白みが足りない。


 これにはデュランもさすがにお手上げか?


『おっ! エルフにこう言われていたし、これがいいだろう! あの言葉にピッタリだ!』


 何やら楽しそうな言葉を言いながら、胸元にペンを躍らせるデュラン。


 エルフが言っていた言葉から着想を得たらしいが、一体どのようなものなのか。


『よし、こんなもんだな』


 →乳、没落。


 そ、それは中心店部分なのか全体を表してなのかどっちなのだろうか。


 ただ、そのどちらかが没落していることだけはわかった。


『……後は女のパンツを持って帰ってマスターの土産にしてやるか。何か知らねえけど、マスターは女のパンツを持って帰ると喜ぶからな』


 デュランにまで、そのような台詞を言われると、どこか複雑な気分になる俺だった。





本当にこの作品……本になっていいのかな?

活動報告やTwitterで表紙イラストをUPしていますので、そちらもチェックしてください。


後の詳しい情報は、また活動報告やあとがきでお知らせします。

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