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貴族令嬢と執事がやってきた

 

 面倒くさそうな方は最後に回そう。召喚してから姿を見ていないミノタウロスが何をしているか気になるからな。


 俺は水晶を操作してミノタウロスのいる場所へと映像を切り替える。


 すると三十階層の中にある大広間で、ミノタウロスと荘厳な鎧を着こんだアンデッドらしき魔物がぶつかり合っていた。


 禍々しい黒色の鎧に包まれた人型のアンデッド。その背丈は三メートルはありそうなミノタウロスとほぼ同じくらい。顔はスケルトンと同じ骸骨であるが、その眼窩の奥には紫色の炎が揺らめいており、低位の魔物とはとても思えなかった。


 気になったので相手のステータスを覗いてみる。


【エルダースケルトン レベル三十】


 ……おかしい。俺が認知するところでは、こんな強いアンデッドはいなかったのだが。


 階層主と同じぐらいのレベルだぞ。


『ぬうんっ!』


 ミノタウロスがその巨体にある筋肉を膨れ上がらせて驀進。その手にある巨大な斧を勢いのままに振り下ろす。


 それに対してエルダースケルトンは、その巨体を覆うほどの盾をかざす。


 斧と盾とがぶつかり合い、甲高い音を鳴らす。


 それは互いの武器が悲鳴を上げているかのようで聞いているこちらが耳をふさぎたくなるようなつんざく音であった。


 室内にいるイビルウルフやべこ太が不快そうに顔を歪ませる。


 俺は慌てて水晶による映像の音量を下げた。


 俺が騒音に慌てている間に、エルダースケルトンが反撃とばかりに片手に持った直剣を鋭く突き出す。


 ミノタウロスは機敏に上体を逸らすことで避け、エルダースケルトンの懐に潜り込むと己の拳を顔面へと叩き込む。


 エルダースケルトンはそれを受けながらも、左手にあるシールドでミノタウロスの顔面を強打していた。


『ぬっ!』


 打撃によってバランスを崩した二体は、どちらも迫撃にうつることができずにたたらを踏む。


 中途半端な間合いが空いて睨み合う中、ミノタウロスがフッと笑う。


『……さすがは不死王が生み出して配合した上位個体のアンデッド。いい鍛錬になる』


『それはこっちも同じだ。これほどのパワーと技を兼ね備えた魔物は滅多にいない』


 なんだエルダースケルトンも喋れるのか。


 というか配合ってなんだ? こいつもキメラみたいにして生み出されたってことなのか?


『では、続きをするとしようか』


『ああ、勿論だ』


 俺の脳を疑問が埋め尽くす中、ミノタウロスとエルダースケルトンが再び戦い出す。


 とりあえず、ミノタウロスが鍛錬をしているのはわかった。真面目なのもわかった。


 今はそれに満足して、一番怪しい不死王を覗きに行こう。


 ミノタウロスの映像から不死王へと切り替える。


 不死王がいるのは神殿の奥にある広間。


 そこには不死王以外にも多くのアンデッドで溢れ返っており、床には不気味な光を発する巨大魔法陣が浮かび上がっていた。


 何だこの状況は……またアンデッドを召喚しようとしているのか?


『主よ、次のアンデッドを呼びますか?』


『ああ、面倒くさいけど頼むのぉ』


 魔法陣の中心でしゃがれた老人の声を出すのが不死王。


 全身骨姿に黒いローブを被っている不気味な魔物であるが、魔法陣の上には転々と同じ黒ローブの魔物が存在していた。


 もしかして、これはリッチとかいう下級のアンデッドだろうか。


 気なったのでステータスを見てみる。


【エルダーリッチ レベル二十五】


 違った。さっきのミノタウロスと戦うエルダースケルトン並の魔物だった。


 同じようにさっき不死王に話しかけていた奴も同じ個体だった。


『主よ、次のアンデッドを連れてきました』


 そう言ってエルダーリッチが大量のアンデッドをゾロゾロと連れて広間に入ってくる。


 スケルトン、ゾンビ、キメラ、ソウルイーター……あらゆるアンデッドがいてもう数えきれない。百鬼夜行っていうのは、こういう感じなのだろうか。


 大量のアンデッドを見た不死王は、大きくため息を吐いた。


 心なしか眼窩の奥にある赤い炎の光が弱まっている気がする。


 嬉々としてアンデッドを召喚する不死王が憂鬱になる作業とは一体なんだろうか?


『主、頑張ってください』


『はぁ……最近マスターが魔物を増やし過ぎだとうるさいからのぉ。仕方がないな』


 それは不死王が魔物の管理をきっちりと行わないからだ。


 上の階層にアンデッドが上がってくるとか勘弁してくれ。


『まあ、でも配合したら魔物の数も減るし、魔物も強くなるし問題ないじゃろ。それじゃあ、いっちょうやるかのぉ』


 不死王はアンデッドを種族ごとに分けて魔法陣の上に乗せる。


 そして、何か低い声で呪文を唱えると、それぞれのアンデッドが引き寄せられるように集合していく。


 そして、眩い光を放った後には……、


【デスバイパー レベル三十五】


【エルダースケルトン レベル三十】


【ジェノサイドグール レベル 二十八】


 ちょっと待って。階層主よりレベル高い魔物がいるんだけど……。さっきのエルダースケルトンもいるし、これはどうなっているのか。


 もしかして、キメラみたいに多くのアンデッドを合体させてこれらを生み出したってことか? いや、いくら何でもレベル三十程度の不死王にそんな魔力は……。


 不審に思って不死王を見渡していると、周囲にいるエルダーリッチが何体か倒れているのが見えた。


『エルダーリッチの魔力を使えば大分楽じゃな』


 中心にいる不死王は涼しげな表情でそんな事を言っている。さすがは生前禁忌を破って不死王になった魔法使い。部下であるエルダーリッチを駒のように使い捨てたな。


『よし、このまま全員分の魔力を使ってさっさと終わらせるかの! こいつら全員を配合させるか!』


 不死王は清々しいでそう言い。魔法陣に手を当てる。


 すると、魔法陣にいたエルダーリッチが魔力を吸い上げられ糸の切れた人形のように倒れ伏す。


 そして、今度はデスバイパー、エルダースケルトン、ジェノサイドグールが引き寄せられるように一か所に固まる。


 三体の魔物はどろりと身体を溶かせると、即座に絡み合って新たな存在を形作る。


 下半身は骨が連結したように長くてムカデのようであり、胴体には様々な肉が集まっているのか獣のような腕やら、人間のような足が見え隠れしている。


 顔面部は鬼のような骸骨であり、上半身にはうっすらとした筋肉を纏っており、両手には鎌のような湾曲した剣を手にしている。


 これまでの魔物とは一線を画す残虐性に怯えながらステータスを確認してみる。


【旧き時代の剣豪 レベル四十五】


 あかん、完璧に俺のダンジョンにいてはいけない系の魔物だ!


 名前がカタカナじゃなくて漢字になっているところがヤバい匂いをプンプンと感じさせる。


『ヴォオオオオオオオオオッ!』


 不死王が合体させた魔物が怨嗟のような叫び声を上げて、眼窩の奥で青い炎を揺らめかせる。


「おいこら不死王! お前、なんて魔物を勝手に作っているんだよ!?」


『おお! これはマスター! ちょうど今、階層内で増えすぎたアンデッドのほとんどを片付けた所じゃよ!』


「その代わりとんでもない魔物が生まれてるじゃないか! こんな奴、怖くてうちのダンジョンに置けるか!」


『えええー? こやつはワシの魔法によって縛られた魔物です。ワシの上位存在であるマスターの命令にも従いますし安全ですぞ?』


 不死王が魔物の安全性を示すように、下半身を撫でる。


 配合された魔物は不死王を目で追うだけで何も反応しない。


「お前がそう言うと暴れ出すフラグにしか聞こえないんだよな」


 こいつの前世の話を聞く限り、禁忌の魔法に手を出してやらかしたっぽいからな。こういう部分は特に信用できない。


『……フラグとは何です?』


「いや、知らないならいい。とにかく、そいつは危険すぎるから神殿の奥にでも待機させておけ。絶対に制御を離すなよ? それと今後は俺の許可なしで配合は禁止だ。破ったら階層を狭くさせてレベルダウンだからな!」


『ええええええええええっ!?』


 俺は不死王の抗議の声を聞かずして映像をシャットアウトする。


 まったく、うちの階層主達は少し目を離すとこれだ。


 それぞれが目標を持って活動しているのはいいが、いささかやり過ぎる傾向があるな。迂闊に目を離すこともできない。


 企業の脱税とかに目を光らせている職員とかも俺と同じ気持ちなのだろうか?


 何だか階層主の視察をするだけでドッと疲れた気がする。


 疲れたようにため息を吐くと、水晶が冒険者の来訪を示す音を鳴らす。


「……何だ冒険者か? せっかくだし、この疲れを冒険者にでもぶつけて発散するか」


 そんな思いから、俺はダンジョンに現れた冒険者のステータスを確認する。




 名前 エイナ=ハークライト


 種族 人間

 性別 女性

 年齢 十七歳

 職業 剣士

 レベル 二十二

 称号 不運 



 名前 モズル

 種族 人間

 性別 男性

 年齢 五十歳

 職業 執事

 レベル 二十七

 称号 なし 



 長い金髪の髪をカールさせたピンクのドレス少女と、灰色の髪をオールバックにし黒いスーツに身を包んだ老人。


 冒険者というよりは、貴族令嬢と執事というべき姿だな。


 少女の方に家名があることから、本当に貴族っぽいな。


 たまにやって来る道楽貴族であろうか? お転婆なお嬢様に付き合わされて執事が護衛としてやってきたとかそんな感じの。


「行くわよ! セバスチャン!」


「お嬢様、私の名はモズルでございますよ」


 ……どんな奴等かはわからないが面白そうだな。俺の鬱憤を晴らすのに付き合ってもらおうか。




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