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『さて、これで野郎共への悪戯は終わりだな』
『そうだな。二人共綺麗になったな』
デュランとゴーちゃんが一仕事終えたとばかりに、汗を拭うような仕草をする。
二体の足下にはガムテープと除毛クリームのお陰か、股間部分がつるりとしたシンとキールが転がっていた。
除毛クリームを使われたキールは、未だに意識を覚ますことなく穏やかな表情をしている。
一方、ガムテープを使われたシンは白目を剥きながら気絶している。無理矢理毛を引き抜かれたせいか股間部分も真っ赤で痛々しい。
シンは、剥がす時に引き起こされる壮絶な痛みのせいか何度か起き上がり、その度にデュランに気絶させられていたからな。
引き剥がされる度に、獣のような咆哮を上げるシンの姿は見ていて面白かった。
被害者であるシンは堪ったものではないだろうが、俺は加害者でも被害者でもない傍観者だ。 俺にまったく関係性がないので、俺はゲラゲラと笑いながら様子を見ていた。
所詮どれだけ他人が不幸となろうとも、自分さえ巻き込まれなければ人間は幸せでいられる。
そんなことをヒシヒシと感じられた瞬間だった。
『それにしても、やっぱりガムテープはダメだな。思ったよりも毛が抜けねえな。しっかり貼ったのに六回くらいやらないと綺麗にならなかったぞ。それに抜け残りも少しある』
『それに比べて除毛クリームは凄いな。時間を置いて水で洗い流すだけで、ごっそりと抜けたぞ。抜け残りもほとんどない』
デュランとゴーちゃんが二人の股間を見比べて、冷静に分析する。
やはり、毛を取り除くことを目的とした製品の方が使いやすいってわけだな。
今回の実験で俺達のくだらない好奇心は大いに満たすことができた。
それに二体の魔物によって、男としての禁忌を犯す大切さも教わった。
今度からはもっと頭を柔軟にしていかないとな。
自分が嫌だなと思う事を率先してやらないとどうするのだ。
やはり人間の枠組みから外れている魔物の意見は参考になるな。
今回は剥がしちゃいけないものを剥がしたのだから、今度は付けてはいけないものを付けたりしてみよう。
一度、接着剤とかで絶対に付けてはいけないものを付けてみたかったんだよね。
『ガムテープはいらないんじゃないか?』
『そうだな。毛を抜いてやるなら除毛クリームの方が楽だな』
「おっと、その考えは少し早いんじゃないか?」
ゴーちゃんとデュランの安直な考えに、俺は待ったをかける。
『というと?』
「毛を抜くことに関してガムテープは効率が悪い。だが、ガムテープには除毛クリームにはないものがあるぞ」
『痛みか?』
俺の言葉にデュランが即座に答える。
「それもそうだが、最大の特徴は絶望だ! 粘着質のあるものが毛根に貼り付いた時、人は脱毛と痛みからは逃れられないと絶望するのだ! そして、それに抗おうとするが、それがどうしようもないことに気付く。その揺れ動く感情は、俺のダンジョンに置いて素晴らしい贄となるぞ」
『なるほど、考えてみると確かにそうだな! 面白え!』
『さすがはマスター。相手の嫌なことを考えるのはピカ一ですね』
「相手を思いやる心が大事なんだよ……」
フッと前髪を指で払い、俺は自分の性格の良さに酔いしれる。
母さんから常に相手を思いやれと言われていたからな。
俺がこうして相手を思いやれるのも母さんのお陰だよ。
そんな思いやりの心を持って、俺はガムテープを使われると最も嫌がるであろう人のことを考える。
やっぱり絶望感を与えるには、抜けてはいけない毛というのが重要だよな。 となると、こいつらのように毛が豊富だったりしてはいけない。
ひとつひとつの毛が重要であることが大切だ。
……頭髪が寂しい冒険者の頭部に、ガムテープを貼り付けたらさぞかし絶望するだろうな。
相手の反応を想像しただけで笑えてきた。 今後のためにも、頭髪が寂しい冒険者のために色々と作戦を考えておこう。
『ところでデュラン。転がっている女達はどうする? 同じように股間の毛を剥がすか?』
俺がそんな事を考えていると、ゴーちゃんが素朴な疑問を言った。
男としてもそこは気になるな。決してやましい気持ちとかではなく。
『そうだな。初めは同じように剥がしてやればいいと思っていたんだがな。マスターの話を聞くと、もう少し違う事をしたくなったな……』
デュランが気絶しているアイシャとフローラを前にして悩む。
どうやらデュランが新たに考えを巡らしているようだ。
『女達って股間の毛を処理してる奴もいるらしいから、剥がしても何とも思わなさそうだな。むしろ、楽に処理できて嬉しがることも考えられるぜ』
『……じゃあ、育毛剤で生やすか?』
『それもアリだが地味な気がするな。時間もかかるだろうし』
腕を組んで考え込むデュランにゴーちゃんが提案するが、確かに微妙だな。効果が出るまで時間がかかるし。
『女にとっての絶望って何だ?』
『女の冒険者がよく突っかかるのは胸の大きさとか……後は体重か? おお! エルフのように胸のサイズとか書いて、さらに体重とか書いてやったら喜びそうだな! 年齢はまだ若いし、別にいらないか。おばさんが来たら書いてやろう』
凄いぞ魔物。女にとっての禁忌を平然と犯してくる。
考えてみれば、女というのは常々見栄を張りたがる生き物だ。
その見栄の部分を突いてやれば容易に崩せる。 見栄という名のベールに包まれた秘密を暴かれた時の奴等の顔は見物だしな。
女は裏表が激しい生き物であるから故に、激昂して裏の顔を出した時の反応が面白いものだ。
前世での女関連の事件を思い出して笑っていると、デュランがパンと手を叩く。
『それじゃあ、色々とやる前にまずはパンツを脱がせてマスターに渡すか!』
『そうだな。そうするとマスターが喜ぶ』 「おいこら、ちょっと待て。お前達は俺をどういう風に認識しているんだ。あれは冒険者達に最適な嫌がらせであって、別に俺の趣味というわけでは――」
『じゃあ、いらねえのか?』
『いらないんですか?』
「……けどまあ、リンスフェルト教のこともあるしな! いつ同じことが起きるかわからないし貰っておこう。邪神器としての触媒になるかもしれないしな!」
そう、これからの作戦の為とアイシャとフローラをあおるために奪っておくだけだ。決して俺の趣味などではない。
『いや、いつも嬉々として奪っておいて今さら取り繕っても』
「デュランのレベル減らそうかな? そうしたら、魔力が他のところに回せそうだな」
『おい、ゴーちゃん。さっさとパンツを回収するぞ』
『お、おう』
俺がボソリと言うと、デュランとゴーちゃんが焦りながらパンツを脱がしにかかった。
俺は自分の部屋にボックルがいないことを確認して、こっそりとその光景をスクリーンショット。秘蔵のフォルダを作って保存しておく。
『こっちの金髪魔法使いは赤色だな』
アイシャのパンツは泥にまみれながらも、はっきりとした赤色のものだった。
攻撃的なアイシャのイメージにぴったりだな。
下着はその人の性格を表すというのは、合っているのかもしれないな。
『こっちは修道女は泥で汚れているけど白だな』
ふむ、品行方正なことで。修道女たるもの汚れなき白ってか?
まあ、どちらも同じパンツだ。未だにリンスフェルト教の動きや思惑がわからない以上、迂闊に一階層に奉るわけにはいかないし保留だな。
『それじゃあ、マスター! 女達を計測するから体重計とメジャーを送ってくれよ!』
「ああ、パンツと交換な」
デュランとゴーちゃんが地面に置いたパンツを自分の部屋に転送し、代わりに召喚した体重計とメジャーを転送してやる。等価交換成立ってな。
『よし、早速計るぞ!』
『おう!』
意気揚々と準備にとりかかる二人をよそに、俺は送られてきたパンツを光にかざす。
「やっぱり泥が邪魔だな。先に洗ってしまおう」
そう思い、俺は席を立つ。そして奥のプライベートルームに入って洗濯機へと放り込んだ。後は機械が全部やってくれるだろう。
『ノフォフォフォフォ! さぁ、計ってください!』
しばらくして、水晶に戻ると十階層の部屋のメンバーにはボックルが加わっていた。
様子を見る限り、気絶していた奴を計るのが面倒になったのでボックルに変身して手伝ってもらったという感じだろう。
まあ、そっちの方が正確に計れるだろうしな。
『よーし、計るぞー』
デュランがセットした体重計にフローラに変身したボックルが乗ろうとする。
『……ちょっと待ってください。胸元に違和感があります』
ボックルは立ち止まると、自分の胸に無造作に手を突っ込んだ。
すると、ボックルの胸の膨らみがしぼんだ。
『なんだ? 胸がしぼんだぞ?』
『おやおや、どうやら彼女は詰め物の類いをしていたようですね』
女性の尊厳を保つため、女らしく見せるためと言えば聞こえはいいが、それは立派な詐称である。
世にいる男がどれだけその詰め物に騙されてきたことだろうか。
『体重を計るのにこれは邪魔ですね』
ボックルが詰め物をゴミのように投げ捨てる。それは狙ったのか偶然なのか、貧乳であるアイシャの胸に落ちた。
『こっちの方が胸が貧しいな。後でこれを詰め込んでやるか』
ゴーちゃんがアイシャの平らな胸をポスポスと叩きながら言う。
それをするともう、アイシャは絶対にゴーちゃんを許さない気がするな。また階層主に熱烈なファンができそうだ。
俺がそんなことを思っていると、ボックルが体重計に乗った。
【五十四・五】
これが体重計に表示された数字だ。
思えば、女性の体重を見るのは初めてな気がするな。
何というか女性の生態を見たというか、秘密を見てしまったというか不思議な気分だ。
『五十四・五キロだなー』
デュランがそう言って、フローラの背中にマジックで重さを書く。
これに値段や出身地などを書けば、お店で売られている商品のようだ。
『スリーサイズは八十八、五十八、八十三。だが、詰め物で八センチ盛っているためにマイナス八で胸囲は八十だ』
『ゆったりとした修道服だからこそ、いけると踏んでの犯行だったのでしょう。これは間違いなく黒ですね』
『……ふむふむ、スリーサイズは八十、六十三、八十三。そして胸囲詐称と……』
ゴーちゃんとボックルが結果を纏めて、デュランがそれをフローラの身体に油性ペンで書き込んでいく。
脇腹の辺りにスリーサイズ。そして、腹部には『胸囲詐称』と犯行を咎めるように赤で書かれていた。
『二の腕やお腹の辺りを囲んでおきましょう。少し贅肉がついていますね』
『女はそういうところ気にするしな。よし、二の腕、お腹に無駄な脂肪アリと……』
これは傑作だ。これほど女の尊厳を踏みにじることがあっただろうか?
まるで商品のようにペンでチェックをつけられるフローラを見て、俺はゲラゲラと笑い声を上げる。
無事に商品情報が書かれた者は、出荷予定としてキールやシンが転がっている中央へと運ばれる。
ボックルがアイシャに変身して、次の商定めが行われる。
【四十三・二】
これがアイシャの体重だ。まあ、小柄な女の子なのだ。四十代ということは予想ができていた。
同じようにデュランが背中に体重を書き記す。
『スリーサイズは七十一、五十四、七十三。子供のようだな』
『身体にまったく凹凸がありませんね。きちんと栄養のあるものを食べているのでしょうか? ゴブリンのメスの方がまだ凹凸がありますね』
『……ふむ、幼児体型。栄養不足の可能性が如実に表れており、くびれがゴブリン以下と』
そして、こちらも同じように脇腹にスリーサイズを書き、腹部には『幼児体型で栄養不足。くびれ無し』と身体の健康を危ぶんでいる医者のように赤で書き記した。
もう、こんなことを書かれて怒らない女などいないだろうな。怒らなかったらそいつは女じゃない。
アイシャの商品情報を書き記したデュランが立ち上がる。
『よし、これで転送できるな。助かったぜボックル』
『いえいえ、私の変身バリエーションも増えますし、こんな面白いことならばいつでも気軽に呼びつけて下さい』
ボックルがデュランの言葉に爽やかに答えて転移陣に戻っていく。
多分、まだゴブリン達の教育に戻るのだろうな。それすらも面白さのためだろうけど。
『そんじゃマスター! 冒険者達を転移陣に放り込むから、行先を一階層に設定してくれ!』
「わかった」
そうやって、俺達は冒険者パーティーを一階層に送り返した。
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