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戦争ごっこ

珍しく連続投稿です。

 

 ボックルが嬉々として五階層へと向かう一方で、聖騎士はようやく立ち直ったのか一生懸命泥の落とし穴から這い出ようとしていた。


 聖騎士が泥に塗れながら登る様子を見るのも飽きてきたので、俺は気晴らしに水晶の映像を変更する。


 デュランが壁ゴーレムを所持するようになった経緯は、スライムキングとゴーちゃんの戦争ごっこだと聞いた。


 ついこの間までは、お互いが召喚した魔物をぶつけ合わせるだけの単純なものだったというのに一体どういう変化なのか。


 俺はそれが気になった。あいつらは一体何をしているのだろうか?


 水晶をタッチして十階層の階層主フロアを映す。


 そこには予想通り、それぞれの軍勢従えて睨み合うスライムキングとゴーちゃんがいた。


 スライムキングの隣には、主であるキングを守るかのように二体の巨大なスライムが存在し、そしてそれを囲うように様々な種類のスライムが整然と並んでいる。


 スライムキングの隣にいるスライムは多分、ビックスライムとやらであろう。


 一定レベルのスライムが集合してできあがるスライムだったと思う。


 そして対峙するゴーちゃんの陣営には、多くのゴーレムが剣やハンマーを装備し、反対側の腕には小さな壁ゴーレムを腕に持って並んでいるではないか。


 普通のゴーレムとはいえ形は人型。人間のように武装するとそれなりに迫力が出るものだ。


 大柄で無機質なゴーレムが揃って武装していると、ただ佇んでいるだけで圧迫感を相手に与える。


 そんなゴーレム達の最奥で腕を組むゴーちゃん。


 そして、その隣で侍る銀色に輝くゴーレムが一体と銅色に輝くゴーレムが一体。


 銀色のゴーレムは恐らくシルバーゴーレムで、銅色の方はブロンズゴーレムであろう。


 こちらはノーマルゴーレムと違って、大きな槍を携えて堂々と立っている。


 己を一番の金として、二番目に銀、三番目に銅としているのだろう。


 自分の忠臣のような者を二体侍らせるのが流行りなのか、ルールなのかは知らないが可愛いものである。


 しかし、武装したゴーレムと何も武装していないスライムを見比べれば、明らかにスライム側が不利に思えるのだが、どう戦うのであろう。


『前回はその忌々しい盾のせいで押し切ることができなかったけど、今回はそうはいかないぜ?』


『ほほう? 今回は俺の壁ゴーレムに潰されることなく突破できると? それは見物だな。楽しみにしているぜ』


 ビシッと指を突き付けるスライムキングに対して、ゴーちゃんは腕を組んで余裕の態度で受け止める。


 会話を聞く限りでは、前回の戦争は壁ゴーレムによってスライム軍が大敗したようだ。


 まあ、あんな面積の広い盾を持ってこられたら、すばしっこいスライムでもあっという間に押し潰されるだろう。


 スライム側は機動性を生かして掻い潜ろうとするが、ゴーレム側は陣形を組んで密集することで対処するであろうな。


『じゃあ行くぞ!』


『かかってこい!』


 スライムキングとゴーちゃんが大仰に声を張り上げる。


 そして最初に動き出したのはやはりスライム軍であった。


『スライム軍、作戦通り前進!』


 それぞれの属性を持つ、色とりどりのスライム達がペタペタと進軍していく。


 様々な色を持つスライム達が押し寄せる光景はまさに色の波を思わせる。


 色の大行進が続く中、前衛に灰色のスライムがやけに多いのが気になる。


 あの灰色のスライムはメタルスライムだが、あいつらをゴーレムにぶつけてどうするつもりなのだろう。


『ゴーレム軍、密集して盾を構えろ。スライムがきたら一斉に押し潰せ!』


 接近してくるスライム対して、ゴーちゃんはゴーレムを密集させることで対処。このまま広範囲に盾によるプレスを食らわせるつもりだな。


 さて、スライムキングはどうする?


『スライム合体!』


 スライムキングの鋭い声が響くと、前進していたスライムが次々と合体。


 同じ属性のスライム同士が重なりより大きなスライムとなる。


『そして変形!』


 そして、大きなスライムとなったものが瞬く間にゴーレムのような人型に変形した。


 おお、合体して面積を増やすことでより大きなものに変形できるのか。


『はは、スライムがゴーレムの真似をしたところで所詮はスライム。ゴーレムには勝てんよ』


 人型になったスライムを見ても、余裕癪癪のゴーちゃん。


『そうかな? メタルスライム変形武装!』


 スライムキングの号令と共にメタルスライムが変形。


 瞬く間に形を変えて、それは鋭く尖った槍となる。それを人型スライムが手に持ち、一気に前進。


 おお、スライムを変形させて武器にさせるのか。自由に形を変えられるスライムならではの技だな。


『そんなチンケな槍で俺の壁ゴーレムは破れまい!』


『だからこうするんだ! 投擲!』


 俺もそう思ったところで、槍を構えてペタペタと走る人型スライムが一斉にメタルスライムの槍を投げ出した。


 柔らかい身体を限界まで反らした投擲は、スライムの力不足を補なって勢いよく射出される。


 そして、一本の矢とかしたメタルスライムは空中で自らの身体を回して回転。綺麗な螺旋回転を描いて空気を切り裂く。


 一点突破の貫通力を得たメタルスライムは、ゴーレムの掲げる盾を貫通し、本体をも穴を開けた。


『んなあっ!?』


 次々と槍で串刺しになっていくゴーレムを見て、頭を抱えるゴーちゃん。相変わらず仕草が人間くさいゴーレムだ。


『メタルスライムの硬さを舐めるからだバーカ! スライム軍団崩れたゴーレムの足下をすくってやれ!』


 スライム達が崩れたゴーレムの下へと殺到。


 ゴーレム達も慌てて盾で押しつぶそうとするが、先程突き刺さったメタルスライムが間接部分に入り込んできて思うように腕を動かせないようだ。


 うわあ、どこにでも入り込めるスライムって怖いな。


 軍隊アリが大きな肉食動物を倒している映像が俺の脳裏に浮かび上がる。


 中には懸命にスライムと格闘するゴーレムもいるが、後方から鞭が絡みついて足元をすくわれる。


 そして倒れたゴーレムにここぞとばかりに殺到するアシッドスライム。


 倒れたゴーレムは次々と関節部分を溶かされてダルマにされていく。


『うおおおおおお!? 俺のゴーレム達がっ!?』


 やけにしなやかで絡みつく鞭だと思ったが、よく見ればメタルスライムが変形してできた鞭のようだ。


 壁ゴーレムといい、メタルスライムの槍や鞭といい魔物の武装化が凄まじい。


 これからは魔物も武装する時代か?


 スライムを変形させてゴブリン達に持たせてみるのもいいな。


『やべえっ! シルバーとブロンズも出撃だ! スライム達を薙ぎ払え!』


 慌てたゴーちゃんがようやく二体を出撃させるが、遅すぎる。最初に盾を貫かれた際にそうさせて陣形を維持するべきであった。


 ゴーレムに長大な槍を持たせるのは見栄えがいいのだが、スライム相手に槍は悪手だと思う。元々スライムは打撃や刺突に高い耐性を持つのだ。槍だけでは殲滅をすることができないんじゃないだろうか。


 シルバーゴーレムが群がるスライムへと槍を突き刺す。


『無駄だ! スライムに槍の刺突なんて効かな――ぬわぁああああにい!? スライムが燃えている!?』


 槍を突き立てられたスライムは、突如として勢いよく燃え上がった。


 何だ!? 何だ!? 新しいゴーレム武装なのか!?


 俺とスライムキングが目を剥いている中、ゴーちゃんが胸を反らして告げる。


『はっはっは! 見たか! シルバーゴーレムの槍を!』


『その武器もまさかゴーレムか?』


『いや、ダンジョンからパクった魔法武器だ』


「うおいっ! 何やってくれてんだお前!」


『『ひゅおおおおおおおっ!?』』


 ゴーちゃんの言葉に思わず突っ込みを入れると、二体が驚いたような声を上げる。相変わらず変な声を上げるな。


『マスター! 見ていたんですか?』


 ゴーちゃんがおずおずと尋ねる。


「壁ゴーレムが気になって見にきたんだ。それよりもゴーちゃん! ダンジョンからパクったってどういう事だよ!」


『壁ゴーレムで盾はできたんで、次はいい武器が欲しいなあと思ってダンジョンを彷徨っていたらいい感じの宝箱があって……』


「開けたのか!?」


『箱ごと持ち帰りました』


「うおいっ!?」


 道理で最近冒険者の餌用に配置しておいた宝箱が減っていると思っていたんだ。


 冒険者が持ち帰ったのだと思っていたが、お前がパクッていたのかよ。


 あれか? 十階層の階層主をやっていた時、それくらいの武器はダンジョンに転がっていると言っていたな。


 もしかしてあの時からパクッていたのか!? 何という奴だ!?


『するいぞお前! 俺だって魔法武器が欲しいぞ!』


『お前は様々な属性スライムがいるからいいだろう』


『それとこれとは別だっつうの』


 スライムキングはパクッていなかったのか、子供のように欲しいと駄々を捏ねている。


『欲しかったら自分で取ってこいよ』


「ダメだからな!?」


 しれっととんでもない事を言うゴーちゃん。


『えー!? デュランもやっていますよ?』


『あー、デュランの事チクったー』


 自由に動き回るあのデュラハンの事だ。それくらいやっていそうだ。


 あいつの場合宝箱の中身をパクるだけとは思えないのが怖いところだ。一体何をしたんだ?


「とにかく、ダンジョンの魔法武器をパクるのは禁止だ」


『『ええええええええええ!?』』


「えええええ言うな。今度魔物に武器を持たせる実験をやるから、その時に渡す。溜め込んでいた魔法武器は一度返せ」


 ダンジョンに配置している宝箱から勝手に取られたら、こちらの計画が台無しにされてしまうので堪らん。ここは譲歩してやろう。飴と鞭だ。


『わかりました。それなら返しましょう』


 のっそのっそと軍勢を引き連れて転移陣へと戻るゴーちゃん。


『どんな武器をくれるのかな? 楽しみだなー。マスター! 俺にはゴーちゃんよりも強い武器にしてくださいね? 伝説の勇者が持つ聖剣とか魔剣グラムあたりが――』


 十階層に残されたスライムキングがアホな事をほざくので映像を切り替えて、念話もシャットアウトする。


 十階層に聖剣や魔剣グラムといった剣を持つスライムキングがどこにいるんだ。


 そんなのダンジョンじゃないだろうに。


 それにしてもスライムキングとゴーちゃんの戦いは参考になった。


 魔物も工夫してやればとんでもない力を発揮するんだな。


 最近は罠を工夫することばかりしていたが、もう少し魔物を利用することを考えるべきだな。


 俺も全ての魔物の特性を網羅しているわけでもないので何ができるかはわからないのだが、利用する価値はある。


 それにはまずは魔物の特性を調べなおさなければならないな。


 ダンジョンマスターとしてダンジョンの仕掛けを上手く使うだけでなく、己の生み出す魔物の力を最大限に生かしてやるべきだ。


 そうすればもっと面白い事ができるし、戦力の増強にもなるのだから。



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