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忍び寄る二体

 

『おいおい、あのデブい猫って変身能力を持っているのか!?』


 デュランが目の前のドッペルゲンガーとソファーの上で寝転がるベこ太を見比べる。


「デブい猫って言うな。べこ太って呼べ。ベこ太に変身能力はない。そいつは新しく召喚したドッペルゲンガーだ」


『そういう事です。デュランさんのお姿に変身させて頂きました』


 俺が紹介してやるとドッペルゲンガーが恭しく頭を下げる。


 こいつってば何かこういう動きが様になっているな。執事とか似合うんじゃないだろうか。


 というかデュランの声で丁寧に言われると気持ち悪いな。


『はー、へー』


 デュランは自分と同じ姿をしたドッペルゲンガーを様々な角度から眺めている。


『俺ってばこんな風に見えているんだなー』


 やはり自分と同じ姿を見た感想は大体同じらしい。まあ、誰も自分を客観的に見る事などできないからな。


「てなわけで、対象に触れるだけで変身できるようになるから、ドッペルゲンガーを大広間にでも連れて行ってくれ。あそこにはパンツを眺めにきている暇人達が多くいるだろ」


 黒騎士の格好をした冒険者として認知されているデュランならば、冒険者へと接近する事は容易いことだ。まあ、本人の豪快な性格で好かれているっていうのもあるんだけどな。


『おう! じゃあ冒険者に会いに行くか!』


『なるほど、変身できる姿が増える事は私にとっても嬉しい事です。是非お願いいたします』


 二体は脇に抱えた兜をすっぽりと装着して、黒騎士の姿となる。


 あのゴツイのが二体並んで歩いているのは、なかなか圧巻だなあ。


「おい、ドッペルゲンガー」


『はい?』


 ふと気付いた事があったので、ノシノシと歩いていくドッペルゲンガーを呼び止める。


『デュランの声のまま行くなら双子設定にしなければならんから、声だけでも素に戻しておけ』


 デュランの姿を模したとはいえ、声まで同じだと双子に思われる。長年一緒に連れ添ってきた相手なら双子らしく振る舞えるが、こいつらは今会ったばかりだ。双子らしい仕草は難しいところだろう。


『そうですね。……声だけは素のままで行きましょう。仲間という設定で』


 今後、ドッペルゲンガーが姿を真似たはいいが、さりげない仕草で見破ってくる相手がいるかもしれんしな。高レベル冒険者などが相手の場合は、しっかり観察させてから短時間の変身で紛れ込み、決着をつける必要があるだろうな。


 即席パーティーとかならともかく、長年同じパーティーでやっている冒険者には短時間だ大事なことなので二度言う。


『ああ、それとマスター』


「何だ?」


『私に名前をくれませんか?』


 確かに毎回毎回ドッペルゲンガー、ドッペルゲンガーと連呼するのは面倒くさい。


 ここはいっちょ名前でもつけてやるか。


「……じゃあ、ボックルで」


『ありがたく頂戴します。ではボックル行って参ります』


 デュランの姿をしたボックルが軽く頭を下げて、転移陣へと入っていく。


 気に入ってくれたよな?




 ◆



 何はともわれ、一階層の端へと転移したボックルとデュランは大広間へと目指して歩いている。


 二体が狭い通路をガシャガシャと音を立てて歩いていると、魔物でも逃げ出してしまいそうな程の迫力だ。


『ボックルって名前微妙じゃね?』


 デュランが歩いている途中で、俺の付けた名前にケチをつけやがった。


 後であいつの兜でリフティングをしてやろうと思う。いい音を出して跳ねそうだ。


『いーえ、私はそうは思いません。自分でも結構気に入っていますよ』


 さすがボックルいいやつじゃないか。


『そうか? 俺はもっと強そうな名前の方がいいと思うなぁ』


 すでに階層全体を頭に叩き込んでいるデュランの案内によって、二体はスムーズに大広間にたどり着いた。


 大広間はいつものように何故か賑わっており、今日もエルフのパンツは冒険者の視線に晒されていた。


「お! デュランじゃねえか。お前もご神体を拝みにきた――ってデュランが二人!?」


 一人の戦士の男がデュランに声をかけるが、今日はもう一人いる事によって驚く。


「ん? デュランが二人いるのか?」


「本当だ! あいつ仲間がいるって言ってたけど、仲間も全身鎧なのかよ」


 驚愕の声が広がり、冒険者の好奇心の交じった視線がボックルとデュランへと集まる。


『おう! 紹介するぜ! 俺の仲間のボックルだ』


『はじめましてボックルと申します』


 ボックルの執事のような挨拶に感嘆の声を漏らす冒険者達。


「おー、何だかデュランとは正反対の奴だな」


『どういう事だよ?』


「そういう事だよ」


 デュランが不満げな声を出して、周りの冒険者が突っ込む。


 それに合わせて周囲の冒険者も大笑い。


 あれ? 何だかデュランがリア充に見えてきた。あいつってば冒険者に溶け込みすぎじゃないだろうか? まるでクラスの人気者のようだ。


 それほどデュランは冒険者をハメるのが上手いってことなのだろう。冒険者から疑われたりする様子は全くなかった。


 冒険者を後ろから落とし穴に蹴り落としていた奴なのに……。


 人気者のデュランに紹介されて、ボックルは次々と冒険者と挨拶を交わしていく。


 握手、肩を叩いて挨拶、防具や武器を褒めてさりげなく触れる。


 何だろうか。この背徳感。


 ボックルが触れるだけで、厄災という名の病原菌を撒いているように見えてゾクゾクする。


 今ボックルに触れられた冒険者達の姿は、悪用されてとんでもないことに利用されてしまうのだろうな。


 奴等が陥れられる姿を想像するだけで楽しくなってきた。


 ボックルとデュランが冒険者達と親交を深めている間に、先程侵入してきた冒険者達が二階層へと到達しようとしていた。


 そいつらのステータスを確認してみる。




 名前 カッツ

 種族 人間

 性別 男性

 年齢 二十二

 職業 剣士

 レベル 十八

 称号 なし



 名前 ロブ

 種族 人間

 性別 男性

 年齢 二十二

 職業 騎士

 レベル 十九

 称号 なし


 名前 ナタリア

 種族 人間

 性別 女性

 年齢 二十四

 職業 魔法使い

 レベル 二十一

 称号 なし


 名前 クルネ

 種族 人間

 性別 女性

 年齢 十七

 職業 魔法使い

 レベル 十五

 称号 なし



 ふむふむ、憎たらしい男女混合パーティーだな。


 こいつらがダブルカップルだとしたら、俺はこいつらを爆破せねばならない。


 いつも通りに冒険者達の姿を水晶の映像にて確認。


 四人はどうやら二階層へと至る階段を下りているようだ。


「ん? こいつらは……」


 男達の顔を拡大して眺める。


 どうも見た事のある顔だ。どこかで……どこかで見た事がるような。


「あっ! パンツ取りに来たエルフに魔法で吹き飛ばされた奴等か!」


 胸のつっかえがとれたようでスッキリとした。


 剣士のカッツに騎士のロブか。


 あいつらなら後ろにいる女と恋人関係にあることは無さそうだな。


 童貞そうな顔だしな。恋人がいたらパンツなんて見に来ないだろう。


 俺はどうなんだって? ほっとけ。


 くだらない事は置いておいて、後方の魔法使いらしき者達を確認。


 色っぽい紫色の髪をした巨乳魔法使い。ナタリア。


 気の強そうな金髪碧眼の貧乳魔法使い。クルネ。


 見事に対極な奴等だ。ちょっと胸の事でクルネとかいうのを刺激してやれば、簡単に内部崩壊を引き起こしそうだな。プライドとか高そうだし。


 よし、今回のターゲットは予定通りにこいつらにするか。


「ボックル、デュラン。急いで二階層へと向かえ。そこに今回のターゲットになる冒険者がいる」


『わかった!』


『了解です』


 念話を飛ばすと、デュランとボックルがダンジョンに潜ると言い訳をして冒険者から離れる。


 そして、冒険者の視界から消えると二体は猛スピードで走り出した。


 先にいる冒険者達へと追いつくために。




聖騎士はこの次に来る予定です。少しお待ち下さい。

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