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そなたに邪神の加護があらんことを

日間ランキング入りしました。嬉しいです。

 

『『『『ようこそ邪神界へ!』』』』


 邪悪な笑顔と共に告げられた一言。


 その笑顔とおぞましい声を聞いてしまったら、子供なんて恐らく一発で泣きじゃくるであろう。かくいう俺も少し顔が引きつっていたりする。


『さて、黒井幸助さん。私達邪神は貴方を邪神界へとお招きいたしました。それは貴方に新しい世界でとある事をやって欲しいからなのです』


 理知的な瞳をした邪神が俺に語りかける。


「……その、やって欲しい事とは?」


『私達が管理する世界では人間、魔族、獣人、エルフ、ドワーフなど様々な生き物が存在している世界です。言わば、地球という世界からしたら、ファンタジー世界と言ってしまえば、理解が早いでしょうか?』


「何となく想像がつきます。魔法とかがあったりするんですよね?」


『その通り。そして我々神々は世界を壊さないように管理をしていました』


「邪神である、あなた達もですか?」


『そうですよ』


 俺がそう問いかけると、その邪神は穏やかな笑みを浮かべるようにも見えたが気のせい。


 すごい笑顔なのに黒いものが溢れている。


『しかし卑劣にも女神達は異世界から人間を召喚し、果てには力を分け与えて世界を無茶苦茶にしだしたのです!』


 テーブルを思い切り叩き、嘆かわしいとばかりに頭を押さえる邪神。


 それは他の邪神達も同じで、


『あいつら無茶苦茶だぜ』


『世界を壊す気かよ』


 などと悲しそうな顔をする。しかしどれもがうさん臭く見えてしまうのは気のせいなのだろうか。


「……しかし、意外ですね。そういう事は俺の世界では邪神がするパターンなのですが」


『私達はそんな異世界の人間を大量に召喚して、世界を無茶苦茶にしませんよ』


『『『そうだそうだ!』』』


「ですよね。そういうのは偏見で――」


『ちょっと面白そうな事は手伝うけどな』


『ああ、でもちょっとだけだ。世界が面白くなるようにスパイスを加えるだけだ』


『そうそう。魔族を魔王に進化させたり、ダンジョンを作ったり』


「とんでもねえなっ!」


 思わずため口が出てしまった。


 魔王を作ったり、ダンジョンを作ったりしたらそりゃ人間困るわ。


 特に魔王。これはスパイスとしては余りに強烈すぎやしないだろうか。


『いや、でも信仰が強くて負のエネルギーが多ければ勝手に強くなるし』


『あいつはいずれ魔王になっていたしな』


『ああでも、オークを魔王にしてみたら意外に強くなって焦ったよな』


『だなだな。最終的に『黒鬼』とか恐れられていたっけ』


『どちらにせよ、人間は多すぎるから間引きしないといけないしな』


 邪神達は楽し気に過去の話を語りだす。


 いや、そんな事をしたら女神も異世界から召喚しちゃうって。


 だって魔王だよ? 人間たちの世界へと攻め込んだりする圧倒的な力を持つ奴。


 それはもう勇者必要だわ。


「で、どうして俺なんですか?」


 これは気になっていた事だ。俺の他にもたくさんの候補者がいたはずだ。なぜ俺なんだ。


『性格が悪いから』


『特に悪そうな笑顔が気に入った』


 即答する邪神達。


 失礼な。俺の性格が悪い訳がないだろう。


 それに笑顔だって素敵だ。俺の笑顔を見れば、その神々しさに皆恐れ慄くと言うのに。


 その証拠によく友達に「いい笑顔をしているな」とも言われる。


『ちょっと笑ってみろよ』


「いきなりは無理ですよ」


『クリスマスにカップルを爆破できるスイッチが手に入ると思うとどう思うと?』


「……………………」


 そんなもの……あんなクソ野郎共を恐怖と絶望の海に沈めてやれると思うと……心踊るに決まっているだろ?


『………………顔がやべぇ』


『ありゃ邪神顔だな』


『……相当な悪だな』


『…………いい笑顔をしている』


 邪神達が何やら騒いでいる。俺の笑顔が爽やかで褒めているのだろうか。


『とにかく我々は君が気に入ったのだ。そんなことで君には新しい世界で負のエネルギーを集めて瘴気で満たして欲しい』



「……負のエネルギーとは一体どんな物なのですか?」


『負のエネルギーとは生物の負の感情の事だ。 憎しみ、恨み、絶望、恐怖、嫉妬、怒り、過剰愛、悲しみなどだ。それらをばら撒き、瘴気で満たす事によって魔族や魔物はパワーアップをする。すると魔族達はより邪神への信仰心を抱き、我々の力も上がる。我々の力が上がれば黒井幸助の力も上がる。皆幸せだ 』


 な、なるほど。とにかく負のエネルギーをゲットすれば、弱体化した魔族達も強くなり世界は安定すると。それに邪神への信仰も集まり、邪神と俺も強くなると。


 しかし、ただの人間である俺が、そんな世界で負のエネルギーとやらを集められるのであろうか。


『そんな心配はするな。我々の【邪神の加護】という物を授けるので心配はいらない』


「……な、なるほど」


 となると、曲がりなりにも神の加護。相当な力を得られるらしいな。これは効果が期待できそうだ。異世界に召喚されて、すぐに殺されてはたまらん。


『やってくれるかな?』


「勿論です。こんな面白そうな事、見過ごせません」


『ククククッ……君なら引き受けてくれると思ったよ。どうやって負のエネルギーを集める? 魔王となって全ての生き物を恐怖のどん底へと誘うか?』


 魔王か。それも魅力的だが勇者と命がけで戦わなければいけないし、そういうのは俺の性分ではない。もっと面白い物がいいのだが……ん? 待てよ? 確かさっき邪神の一柱がダンジョンと言っていた気がした。


「すいません。さっきダンジョンと言っていましたけど、ダンジョンってあの魔物が溢れる迷路のような物ですか?」


『ん? ああ俺が言ったな。確かにダンジョンは存在するぜ。俺達の造った塔や地下迷路。様々な物があるが、大抵は高位の魔物や魔王、もしくは魔族が住み着いて『ダンジョンマスター』ってやつをやっているな』


 少しちゃらそうな見た目の邪神だったけど、結構親切に教えてくれる。


『『ダンジョンマスター』とは、簡単に言ってしまえば迷宮を自由に改造できる者の事だ。ダンジョンの構造、外観、罠、存在する魔物など魔力があれば自由自在だ』


 そうなのか。自分だけの城を作れるってワクワクするな。罠を設置したり、魔物を育成したりと実に楽しそうだ。ゲームはよくやるので、こういうことは得意だぞ。


 しかし、そんな危険な場所にのこのこと人がやってくるのであろうか。


『この世界には魔物を狩って報酬を得て暮らす、冒険者という奴等が沢山いる。いい宝でもあると知れば大勢とやってくるさ。まあ、無くても修行とか浪漫とか言って来るんだけどね。あとたまに勇者も』


 なるほど。つまり需要はあるわけだ。勇者と言う奴が怖いが、ダンジョンの奥に隠れるなり、身代わりを用意すれば大丈夫であろう。まあ勇者と言えど人間なのだから、追い返してみせるが。


「ダンジョンの中でも負の感情を抱かせれば負のエネルギーは回収できるのか?」


『『『『…………ッ!』』』』


『…………可能だが、ダンジョンで負のエネルギーを回収するのか? 魔王なり、魔族なり人間なり、色々と方法はあるぞ?』


「これが一番面白そうだ。他にも魔王はいるのだろ? 直接的な事はそいつらに任せる。俺はダンジョンマスターとなり負のエネルギーをゲットして、瘴気で満たす。問題はない」


 考えるだけでも笑みがこぼれてくる。今までにプレイした、ゲームの仕掛けも使えるな。ひょっとしたら世界最強のダンジョンが作れるのではないだろうか。


『最高の黒い笑みだ。これなら信じてもいいだろう』


『面白い人間だな。ダンジョンマスターとは』


『変わった人間だな。冒険者に討たれるか、勇者に討たれるか。それがどうなるかは分からないが、興味深い。』


『では、黒井幸助よ。お前を新しい世界にて【邪神の加護】と『ダンジョンマスター』能力を与え召喚する』


「わかった」


『『『『そなたに邪神の加護があらんことを』』』』


 そんな声が聞こえると同時に、俺は光に包まれ視界が真っ白になった……。




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