第一回邪神会議
書籍化決定!
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『最近さあ、女神とか神とか異世界から勇者とか召喚しすぎじゃない?』
『『『それな!』』』
一人の男の言葉に、三人の男の声が唱和される。その息の合いようは心からの同意を如実に表している。
『ズルいでしょっ! 勇者を呼んだり、異世界人を大量に召喚したり能力や伝説の武器を分け与えたり! もう魔族も魔物も大変だよ!』
『これじゃあ俺達の信仰心も薄れていく一方だよ!』
『……最近は負のオーラが少なすぎる』
『俺達だって神なんだぜ?』
『ちょっと邪だけど』
『ちょっと個性が強いだけだって』
『俺達そんなに悪じゃない』
『お前は悪人だよ』
『邪神だよ! ちょっとウザいから上司斬っただけじゃん!?』
『『『それで?』』』
『神界から追放されて邪神認定された』
『邪神だね』
『ああ、邪神だ』
『そう言うお前こそ、魔王に神殺しの剣を持たせただろう! あのクソ爺一刀両断されていたぜ』
『『『あれは面白かった』』』
一人のリーダー格らしき男が咳払いをして、本題へと入る。
『まあ、そんな事今はいい。とにかく今の世界は不公平だ。この世界の人間を使うならともかく、異世界から呼び寄せて能力を与えるなんて女神達は介入しすぎだ』
『それも一人や二人じゃない。一時期は三十人とか召喚されたな』
『ゲームは公平だから面白いというのに』
『ちょっと魔王が強いからってやりすぎ』
『もう、魔族困惑。勇者ってば、追い詰めたら覚醒とかして理不尽な強さを手に入れるし』
『全くだ。意味が分からん。大体――』
口々に不満を零す邪神たち。よほど溜まっているのかその声は止まることがない。
『皆の不満ももっともだ。勇者達のせいで世界からは負のエネルギーが減るばかり。我々の信仰者である人間や魔族も数を減らすばかりだ。こんなのはおかしい』
リーダー格の邪神が熱弁をふるい、三柱の邪神もそれに同意の声を上げる。
『『『そうだそうだ!』』』
『ってな訳で今回は俺達も異世界から召喚してみないか?』
ザワ
『できるのか?』
『魔力は有り余っているけど方法がわからん』
『全くだ』
口々に疑問の声を上げるなか、リーダー格の邪神は高らかに一冊の書物を掲げた。
『じゃーん! 神界からパクッてきた! 異世界召喚のススメ』
『『『悪いなぁ』』』
『よせって照れる』
邪神たちの間では「悪い」「卑怯」「外道」などは最高の褒め言葉とされている。リーダーが照れるのは当然である。
『と言う事は俺達でも召喚できるんだな?』
『ああ。軽く読んでみたが問題ない』
邪だが神は神。神字を読むことは造作もないことだ。
『じゃあやるか! 俺達邪神も異世界召喚ってやつを!』
『『『賛成!』』』
『で、呼ぶ人数は?』
『一人だな。女神のように大人数を召喚したくはない。一人の方が観察もしやすい』
『まあそうだな。世界を不安定にするのは良くないし』
『女神と同類はごめんだな』
『中途半端な力を複数人に与えるよりも、一人に強い力をつぎ込んだ方がいいしな』
『じゃあ一人で問題ないか?』
『『『問題なし』』』
『ところで召喚する奴の種族は?』
『おう、それだそれ』
『何にする?』
『そりゃあ勿論人間でしょ。あっちも人間なんだから』
『それもそうだな。何より人間は他の生き物よりも面白いからな』
それから邪神たちは黒い笑みを浮かべ笑い合う。
不気味な笑いが収まったところで、リーダー格の邪神が静かに告げる。
『……それでは、俺達邪神の異世界召喚をはじめる』
活動報告にて表紙が公開されてます。