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 リンカイと出会ってからも、まあ、一本道がひたすら続き、土石族がひたすら出てきただけだ。僕らはそれをひたすら倒して、足を拾って進んだ。その数、6匹。

 他に特記すべきことはない。

 ああ、そうだ。歩きながらリンカイとした会話ぐらいは書いておこう。


「リューリ、君、なんで矛なんて使ってるの? 槍とか、剣の方が使いやすいんじゃない?」

「まあ、使いにくいには使いにくのですが。僕の所のギルドマスターが、矛を使ってたから、それを受け継いだってかんじです。まあ、そのギルドマスターはもう死んでしまいましたが……」

「そっか、まあ、うちのギルドも、もうなくなっちゃたし、似たようなものね」


 悲しむことはない。そう、どこも似たようなものなのだ。ダンジョンへ行く者なら誰しも、そこには死の危険が伴っているのだ。ダンジョンは危険と隣り合わせなのだ。そして、その危険というのは必ずしも魔物だけとは限らない。ダンジョンには自然的に作られた罠や、冒険者を狙う追い剥ぎ、盗人。しかもそれらは、階層に関係なく、低い階層でも現れるから、ある意味魔物よりもタチが悪い。

 その点で行くと、魔物はわかりやすい。

 階層数と魔物の強さは基本的に連動しているのだから。


「さて、ここが1階層の最奥地か」


 リンカイが息を吐くように、そう言った。

 壁が薄く輝く大広間。ここが正しく、ボスのいる場所。


「さあ、行きましょう」

 僕はゆっくりと足を前に出す。

 と、同時に、横から石が飛んでくる。


「うわっ!」

 僕は慌てて、矛の持ち手の部分でそれを弾く。

 石かと思ったそれは、石ではなく、土石族だった。

「【スラード】!」

 僕の矛の刃は、見事に土石族の胴を捉え、一撃で土石族を倒した。


「ふう……」 

 僕はひとつため息をつく。


「リューリ!! 横!!!」

 リンカイの声に驚いて横を向くと、そこには、僕よりも大きな、土石族がいた。

 先ほどまでの個体とは明らかに異なる大きさ。間違いない。こいつがボスだ。

 

「うぐっ!」

 気がついたときには既に、土石族の手は僕の肩を叩いていた。

 僕は1メートルほど、横に吹き飛ぶ。

 痛がっている暇はない。敵はゆっくりと僕の方に近づいてくる。

 慌てて立ち上がるが、少しふらつく。

 やばい。


「【スライディオ】!!」

 リンカイが敵の足を短剣で切りつける。

 敵がバランスを崩して、後ろに一歩引いたところをすかさず、もう一発。

「【ラインズ】!」

 敵を切りながら、一直線に、リンカイは敵の後ろまで行く。

 おそらく1メートル半程。


 リンカイと比べて、僕が吹き飛んだ距離が短かったのは、パッシブスキルの《防御上昇》のおかげだろうか。


 ちなみに、アクティブスキル【ラインズ】は、武器を自分の横に構えて、敵を切りながら高速で走るスキルである。

 リンカイが使っているのを見るのはこれが初めてだ。おそらく、体力の温存のために、ボス戦までは使わないようにしていたのだろう。移動系のスキルは、ほかのスキルと比べて、体力の消費が大きいから。


 しかし敵も、一階層とは言え、ボス。自分の後ろに来たリンカイに、振り向きざまのパンチを当てる。

 リンカイが【ラインズ】で敵の後ろに移動をしてから、僅か1秒にも満たない時間の間に、リンカイは大きく吹き飛んだ。

 

 とすると、今度は僕の番であろう。

 僕は敵に向かって、走り出す。

 敵が僕のほうを向くよりも早く、スキルを繰り出す。

「【スラード】!」

「グガグーッ!」

 敵も後ろからの攻撃には弱いようで、唸り声を上げる。

 

 不意に、「カチリ」と僕の懐から音がした。慌てて、自分の胸のあたりに目をやると、スティートカードが光っている。


 僕は敵から大きく距離を置き、スティーとカードを確認する。


 『リューリ』

 15歳・冒険者・〔無所属〕・ランク0

 〈鉄の矛〉〈綿の服〉

 スキル 【スラード】【スライディオ】《防御上昇1》《防御上昇2》


 どうやら、新しく、スキルを覚えたようだ。

 僕は覚えたてのスキルを試してみようと、敵に向かって矛を振るう。

「【スライディオ】!」

 敵の胴に亀裂が入る。

「【スライディオ】!!!」

 攻撃は最大の防御なり、敵に攻撃する暇を与えない。

「【スライディオ】!!!!!」

「グギャギガーッ!!」

 

 大きな土石族はその場に崩れ落ち、土の山を作った。

 その上には、茶色い石が静かに光っていた。


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