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「はじめての冒険ですか?」
ダンジョンの受付嬢はぼくにそう聞いてきた。
ダンジョンにはいくつかの入口があり、その入口ごとに受付嬢がいる。
受付嬢にスティールカードを見せることで、任意の階層に続く階段を開いてもらうことができる。
ちなみに、受付嬢はみんなかわいい。特に第4入口の受付嬢はとんでもない美少女だとか。
僕はなるべく爽やかに、笑顔を作って答える。
「はい、下1階層でお願いします」
「了解でーす」
受付嬢が、カウンターの横にある扉を開けた。そこに現れたのは小さな階段だった。
これらの階段は、発掘ギルドが、せっせこ働いてダンジョン内に作っている階段だ。
階層から階層へ移るときは、ボスいる所の奥に大抵、階段があるが、ダンジョンへ行くたびに1階層から始めるのは、いくらなんでも効率が悪い。ということで発掘ギルドが誕生した。
ちなみに現在、33階層までは階段で行ける。便利だ。
「それじゃあ、頑張ってくださいねー」
階段を降りると、まずは一本道が長く続いている。薄暗く、どこかからかカタコトと小さな者音がしている。歩みを進めていくと、背後に何かがいるような気がして、こまめに後ろを向いてしまう。誰かが今の僕を見れば、怪しいやつだと思うだろう。
しばらく歩くと、前の方に2人の人が見えた。声をかけてみる。
「おーい、こんにちはー、冒険者の方ですかー?」
すると、向こうから返事が返ってくる。
「ちがいまーす。畑用の土壌を取りに来ているものでーす」
……まあ、人であることには変わりがない。安心だ。ダンジョンには人型の魔物も多く生息している。人が他の魔物は基本的に強いことが多い。と、ショージが言っていた。
しかしその安心もつかの間、後ろを振り向くと、そこには魔物がいた。
小さな岩から手足が生えたような姿。土石族だ。
皮膚が硬い事以外に特記すべきことはない。強いて言うなら、魔物の中でも1,2を争う弱さを誇っており、某RPGゲームでいうとスライム的な存在であるということだ。
ちなみに、魔物の強さを表す単位はちゃんと存在している。〈F1〉から〈S3〉までの21段階のなかで一番下土石族は〈F1〉、要するに最弱。恐るような相手ではない。
右足を半歩前に出し、鉄の矛を魔物に向ける。「【スラード】!!」
刃が魔物の手のあたりを掠める。ハズレだ。
あたっていない。おそらくダメージはほとんどない。
「グギッ!」魔物が僕に向かって石を投げてくる。
「痛っ!」
「グギギッツ!」
「痛っ!痛い痛い!」
小さな石が僕の足にバシバシと当たる。
地味に痛い。これは明日、アザになる。
「【スラード】!」今度は魔物にしっかりと狙いを定めてからスラードを使う。
「ググッ!!」
手には確かな感触。剣はしっかりと魔物を捉え、魔物は上下に真っ二つになった。
すると魔物の体は腐るかのようにボロボロと崩れ、土になってしまった。土の上に残ったのは小さな石ころ。
「大したお金にはならなさそうだけれども、一応素材だし、拾っておくか……」
僕は石ころ、もとい石土族の足をカバンの中に入れた。