2
「…お姉ちゃん?」
口をついて出たこの言葉、それに彼女はニコニコと笑ってうなずいてみせた。
「目は覚めた?私はもう少し本の続きを読むけれど、アリスはどうする?」
「私は…もう少し、ここにいる」
そう、と返した彼女は一度私の頭をなでてから、手元の本に視線を移す。
私はそれをぼーっと見つめていたが、しだいに暇になってしまい、周りを見渡した。
可憐な花が咲き乱れたこの丘には、私たちが持たれている大木があり、綺麗な羽の蝶が踊るように舞っている。
そして、目の前を服を着た白兎が走っていった。
私はそれを何の違和感もなく目で追っていた。
それは後ろ足で器用に走り、体の割りに大きな懐中時計を見ながら、暗い穴へともぐりこんだのだ。
そこまで追って、ようやく違和感に気がついた。
それは服を着て、後ろ足で走り、懐中時計を見て、きちんと聞こえてはいなかったが、人の言葉を話していたように思える。
どう考えても、それは普通の兎ではなかった。
少なくとも、私の霞がかった頭では、兎は服を着ないし、四本足で地をかけ、人の言葉など話さないのだ。
私はそれの珍しさと多大な好奇心で、ちらりと隣で本を読む彼女を見た後に兎の入っていった穴へと、足を進めていた。