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記念すべき一番手は有名なこの童話から。
ずしり。
全身が重くなり、目を開ける。
私は大きな木にもたれかかって、ひざに本を置いていた。
ふふふ、とひかえめな笑い声が聞こえてそこを見ると、隣には、とても美人な女性が本を片手に優しく笑っていたのだ。
「…だれ?」
声を聞いてから深い霧がかかった脳内はずっと変わらず。
まるで脳を使うことを拒んでいるかのように。
なにか考えようとしても、それは水に溶けるようにゆらりと消える。
私の問いに彼女は優しく笑ったまま、私の頭をゆっくりとなでた。
「アリス、ここで寝ていたら、風邪をひいてしまいますよ。」
「…ありす?」
私の名前、だろうか。
そういえば、私は自分の名前を覚えていない。
忘れた、というよりも、最初からなかったかのような感じだ。
彼女は悪い人には決して見えなかった。
私は何の疑いもなく、彼女を受け入れたのだ。
「ありす、私の、名前?」
「あら、まだ寝ているの?本当に、お寝坊さんね。」
口元に手を当てて、静かに笑う彼女はとても綺麗で、儚かった。
誤字、脱字等、教えていただければ、嬉しいです。