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はじめまして、こんにちは。
ゆっくり、まったり更新していこうと思っています。
どうぞ、よろしくお願いします。
気がついたら緑深い木々が無造作にならぶ場所にいた。
つめたい
霞みがかった脳内の霧が晴れていくのを感じながら、私は起き上がる。
起き上がる?どうやら私はまるで落ちたかのように、転んだかのように、そこに寝そべっていたようだ。
服が冷たい。苔の生えたこの場所は、水分を多く含んでいるわりに、空気は澄んでいて、まるで夢の中にいるみたいだ。
ひとつひとつ、記憶を辿る。
ああそうだ、私はいつものように暖炉に火をつけて愛犬と一緒に穏やかな休日を満喫しようとしていたのは、思い出せる。
今の季節、私の住んでいた場所はとても寒く、現に最後の記憶では、外は吹雪いていたはずなのだ。
そんな季節に半そでで外に出るなんて…
半そで?もう一度自分の着ている服を確認する。
淡いピンクのワンピースに白いフリルが沢山ついて、パニエで膨らんだスカートは動くたびにフワフワとゆれるのだ。
そして一際目立つ真っ赤なエプロン。
色は違えど、私はとある童話を思い出した。
―君の物語を、教えて―
ふと、エコーのかかった少女の声が辺りに響く。
私は周りを見回すけれど、人影なんて見当たらなくて。
普通だったら怖いと思うのだけれど、今はなぜか、暖かくて、やさしくて、母親の羊水に浸っているかのような安心感に包まれた。
「…だれ?」
久しぶりに言葉を発したかのように、声がかすれた。
頭は妙にはっきりしているはずなのに、周りの情報が入ってこない。
少女の声だけが、脳に染みてふわりと拡散していく。
―君だけの物語が、見たいの―
ふわり、ふわり
心地のいい声に私は目を閉じる。
なぜ目を閉じたのかは、わからなかった。
私の問いには答えをもらっていない、だとか、まだ聞きたいことは沢山ある、とか。
私がなにかをする前には、もう動かなくて。
少女が発する“何か”をオルゴールに私は簡単に意識を手放したのだ。