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教室に入ると大変だった、何せ二人で一緒に登校する形になってしまったので、それを見たテッタがとにかくうるさかったのだ。
やっぱり何か関係があったのかとか、俺の恋の邪魔をするなだとか。
俺はそんなテッタを落ち着かせて、昨日あった話や俺の苦悩を事細かに教えてやった。
それでも疑いの目で見てくるテッタに永久之を紹介してやると、それで満足したのか午後になってからはおとなしく寝ている。
今この教室に、永久之はいない、午後になってカリキュラムごとに分かれたからだ。
永久之は戦闘系カリキュラムを選択したようだ、俺も始めは戦闘系カリキュラムを選択していたが、途中で守備系に移ってきた。
俺は教室で訳のわからない講義を受け、永久之は外で訓練を受けている。
退屈な授業に嫌気がさし、ふと外を眺めると、グラウンドでは数体の”アンクル”と戦う生徒の姿が見える。
みな様々な武器を形成し、魔力の炎を揺らめかせている。
この学園母が通っていた頃には全体に強力な結界を張り巡らせていたようだが今は違う。
グラウンドの部分だけ違う結界をはり、生徒でも倒せるような弱いアンクルだけ侵入可能にしてある。
なんでもより高みを目指した学園が生徒に実戦経験を積ますためにそうしているらしい。
いつどれだけ現れるのかわからない敵に、いつでも対応できるように訓練をしているみたいだ。
もともとアンクルが集まりやすい地域だったので、週に2、3回は現れるだろうか、その度に生徒は駆り出されるのである。
だがこれは全員がそうなわけではない。
すべての学年の戦闘系・守備系の中でも特に優秀で、戦闘を行っても良いと教師に認められ、指名されたものだけである。
よく見ると、戦闘を行っている生徒の中に永久之の姿があった。
二日目にして既に腕を買われて指名されたのだろうか。
彼女の手には、一本の剣が握られていた。
刃は日本刀のようなのだが柄のデザインは西洋刀のようで、さらに柄には大きな護拳がついている、サーベルに近い形だろうか、少し不思議な武器だった。
まあ武器は本人が一番イメージしやすい形を取るのが基本なので、どんなものでも使えれば問題はない。
彼女は刃を片手に閃かせ、瞬く間に敵に迫ると、次々に撃退してゆく。
話している時の単純でバカな彼女は見る影もなかった。
あの男を探して旅をしていただけある、各地で相当数の経験を積んできたのか、上級生がいる中でも彼女は段違いに強く見える。
「きれいだ」
まるで舞うように敵を殲滅して行く彼女の姿に、思わずそう呟いてしまう。
戦っている永久之の姿にじっと見とれていると、俺の机に何かが飛んできた。
手に取ると、それは紙だった、ノートの切れ端だろうか。
こんな事をするのは、一人しかいない。
テッタの方を見ると、案の定俺の方を向いて開けろとジェスチャーしている。
先程まで爆睡していたはずなのに、いつの間に起きたのだろうか。
中を開けると『トワちゃんつえーな♡ byテッタ』と書いてあった。
再びテッタの方を見ると窓に向かって熱烈な投げキッスを送っている。
トワちゃんとは永久之のあだ名だろうか、テッタのやつもうそこまで仲良くなったのか。
テッタからグラウンドの方に目を向けると、既に戦闘は終了したみたいで、永久之を含める生徒達はひとつの所に集まり始めている。
強い……か。
いくら敵が弱いといっても、攻撃をくらえば傷つくし、当たり所が悪ければ致命傷になるかもしれない。
それなのに彼らは、永久之は怖くないのだろうか。
もちろん、実戦と言ってもここは学園内だ、教師や魔法警察などが危険時には助けに入れるよう常時配置されている。
それでもやっぱり敵に相対するのは己自身だ。
「怖くないんだろうか……」
俺はいつの間にか強く握り締めていた拳をほどき、机の上に突っ伏した。




