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3

 ホームルームが終わり小休憩の時間、俺は頬杖をつきながらイライラしていた。


 なぜなら謎の女が椅子に後ろ向きに座り、その宝石のような瞳でじっと俺を見ているからだ。


 なんだやっぱり知り合いだったのだろうか……なるべく関わりたくないんだが。

 しかし俺が見て見ぬふりをしていると女の方から声をかけてきた。


「あ、あの」

 俺の顔を覗き込むようにして、様子を伺うように訪ねてくる。

 さすがに声をかけられては無視しきれない。


「なんだ」

「今日の時間割を教えて欲しいんだけど」

「時間割!?」

 知り合いかもしれないと力んでいただけに、全く関係のない質問に思わず、情けない声を上げてしまった。


「うん、そう」

 なぜこの女時間割すら知らないんだ。

 当たり前のように登校して、当たり前のように席に着いたくせに。


 ということは教科書類も持ってきていないのだろうか。

 俺にとってそんなことはどうでもいいのだが。


「後ろの黒板に書いてあるだろう」

 俺はそう言って、前を向いたまま親指で後ろを指した。


 この教室には、前と後ろに黒板があって、前は授業用、後ろは連絡事項の記載がされている。

 そこに今日の時間割は記載されているのだ。


「え、でも、何も書いてないんだけど」

 女は、決まりが悪そうに眉を寄せ、もう一度俺を覗き込んでくる。


 何を言ってるのだこの女、黒板くらいしっかり見ろよ。

 女はずっと俺の顔を見つめてくる、ことが解決するまで開放してくれない気だな。


「これだから女は」

 俺は目の前の女には聞こえないように呟きながら、後ろを向いた。


「な……」

 しかし俺の目に飛び込んできたのは、何も書いていない黒板だった。


「昨日の当番のやつサボりやがったな」

 次の日の時間割は、前日の日直が書き込むことになっている。


 俺が女の方に向き直ると、女はほらねと言わんばかりにニコッと笑う。

 馬鹿にされているのだろうか、そんなことを想い俺は大きくため息をつく。


「おいテッタ」

 俺と女が会話をしているのを、自分の席からずっと監視している友達に声をかける。

 面倒だから放っておいたのだが、この際都合がいい。


「なんでしょうか、フーガ君」

 こいつ女の前だからって、いい子ぶってやがる。


「今日の時間割は?」

「えーっと、英・数・理・社で午後からは総合魔法だ」

 総合魔法、通称、総魔この日はカリキュラムごとに別れず魔法の勉強をする。


「だそうだ」

 俺は女の方に視線を向け、そう告げる。


「ありがと」

 女は礼を言うと、自分の席に着いた。

 よかったようやく解放された。


「おいフーガ、やっぱお前あの子と知り合いなのか?」

 耳にテッタの息がかかって気持ち悪い。


 自分の恋の相手と俺の関係が、どうしても気になるらしい、この女が何物であるかなどどうでもいいようだ。


「違うって言っただろ。ただ時間割を聞かれただけだ」

「なんだ、そうだよな、あのフーガにこんな可愛い知り合いいるわけないよな」

 なんか失礼なような気もするがそのとおりだ、俺に同級生の女の知り合いなどいない。

 銀の髪のお姉さんとか、大剣振り回すちっちゃなお姉さんなら知っているが。


「あっでも一人、とびきりの美人がいるじゃねえか」

「誰だよ」

 テッタは身をくねらせながら俺に擦り寄ってくる。


「お前の母さんだよ♡」

「……っ!? 気持ち悪いこと言うな!」

 こいつ俺の母さんをそんな目で見ていたのか。


「母さんに手を出してみろ、お前でも許さないぞ」

「冗談だよって、俺次教室移動だった! じゃあなーフーガ」

 テッタは俺から逃げるように教室から出て行った。

 これでようやく落ち着ける


「ねぇ、教室移動があるの?」

 わけないか……

 テッタの声は、当然目の前の女にも聞こえていた。

 再び俺の方を振り返り大きなおめめをこちらに向けている。


「そうだ」

 英語は理解を深めるためだとかで、少人数で行われる。

 なので、自分の教室と指定された教室の、どちらかに割り振られているのだ。


「私はどっち?」

 女は小首をかしげ俺に訪ねてくる。

 そんなもの俺が知るわけがないだろう。


「担任に聞いてないのかよ」

「うん、聞いてない……」

 なんだこいつ、時間割も知らなければ、授業を受ける教室も知らないのか。


「職員室に行って聞いてこい」

「どこにあるのか分かんないんだけど」

 眉を寄せ、えへへと苦笑いを浮かべる女。


 そんなこと俺には関係ない、説明するのも面倒だ。こういう時はこれ以上関わらないに限る。

 しかし女は俺が無視しているにもかかわらず、ずーっとこちらを見つめている。


 なんだよ、他にも人いるじゃないか。

 期せずして、見つめ合っているような感じになってしまった。


 そんな俺達に、周りの生徒の視線が集まって、教室は今とても居づらい環境になっている。


 ただでさえ、この女のせいで視線が俺の方に集まってるというのに。

 それでも尚、女は俺の方を向いている。


「あーもうっ! 分かった、俺が連れて行く!」

 俺の方が先に痺れを切らし連れて行くことになってしまった。


 これならめんどくさがらずに説明していればよかった。

 これだから女は嫌いなんだ。


「ありがと」

 女は再びニコッと笑みを浮かべた。


「は、早く着いて来い」

 俺は女を引き連れ、教室の視線から逃れるよう足早に職員室へ向かった。

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