架空のお笑いコンビ『ボジョレイ』による漫才
お手やわらかに……。
A「はいどーもー! 『ボジョレイ』ですー! んーっ、解禁解禁!」
B「どうもー! 彼が『ボジョ』で、ぼくが『レイ』で、ボジョレイいうてやっとりますけども。まぁ今日は名前だけでも覚えて帰ってもらってね」
A「えっ、おれ『ボジョ』なん!? なぁ、おれの名前『ボジョ』やったん!?」
B:Aのほうを見ないまま適当に胸にツッコミ。
B「コンビ名が名前なんは珍しくもなんもないやろ! ――ってことでね! ぼく最近ちょいちょい考えてることがあるんですけども――」
A「ちょぉ待て待て待てぇや! なに話進めてんねん! ほんでなに、自分だけ『レイ』て! ちゃっかりカッコエエほう取っとるやんか!」
B:なだめるようにAの背中をさすりながら、声をひそめる。
B「おまえ、待ってほしい言うても本番は待ってくれへんねんぞ? な? 話ならあとで聞いたるから」
A「おう、ありがとぉな。話中断してもうて堪忍やわ――ってちゃうわ!! 今やの! 今ツッコまんとネタにな、ら、ん、の!!! なんで楽屋戻ってから『さっきの名前の件やけどな……』なんて話さなあかんねん! そんなマジのトーンでする話とちゃうわ!」
B「ほな、本気で名前に抗議してたわけとちゃうん?」
A「あたりまえやろ! ツッコミや、ツッコミ! こちとら盛り上げるためにワーワーギャーギャー騒いどんねん!」
B「そんならぼくが『レイ』でええな」
A「おう! ……ぉん?」
B「ほんで最近ちょいちょい考えてたんですけどもね、ほんまおまえが羨ましいわぁー、って」
A「羨ましい? おれが?」
B「そや、おまえに生まれたかったくらいやもん」
A「なんなん!? ええやん、ええやん! 理由聞かせてぇや!」
B「おまえはチビ、デブ、ハゲ、と三拍子揃っとるやろ? おまけにブサイクでいっっっさい女にモテへん。まさに神に選ばれし――」
A「ちょいちょいちょいちょい! えっ、今おれめっためたに貶されよる? 褒められる〜思てたらグッサー刺されよるからビックリしたわ! 自分の勝ちや思てニヤケた瞬間斬られとることに気づいて『なん……だと……』言いながら首と胴がお別れする悪役の気持ちなってもうたわ! ――誰が悪役やねん!! ほんでハゲともちゃうからな!? 見ろやこのフッサフサ! ほれ!!」
B:見せつけるように差し出されたAの頭をスパンッとはたく。
B「生えぎわが去年より5ミリ後退しとるやないかいッ! いうて、めちゃめちゃリスペクトしてますからね。顔面爆発したんかー思うほどデカいクシャミするとことか、小学生レベルの漢字書き間違えるとことか、ほんまぼくにないもんぜーんぶ持っとる!」
A「うっさいわ! 漢字は今関係あらへんやろ!! ――せやけど待って? え? おれ生えぎわ後退しよるん?」
B「おまけに体臭もキツイときて」
A:腕やワキのニオイをかぎながら。
A「マジで!? おれ臭かったん!? ほんなら前に共演者の娘ぉらに避けられてたんもそのせいちゃうん!? はよ教えてぇや! おれずっと何してもうたんやろ思て悩んでてん! ほんで生えぎわの話はマジなん!? なぁ! ほんまにハゲてきてるん!? なぁ! なぁて!」
B「天は二物を与えず、言いますけども、こうやって二物も三物も与えられてる男がいますからね」
A「ほんまに与えられとる!? むしろ奪われとらん!? だいぶ多めにガッサー持ってかれとらん!?」
B「逆にぼくなんかはもう『持たざる者』ですから。どこにでもいるような高身長、高学歴、高収入」
A「嘘つきなや! 高身長、高学歴はぁ〜……まぁ〜……その通りやけども! そやかて高収入はどうみても嘘やん!? ギャラおれと同じなんやから! 耳クソくらいのもんやで!」
B「まぁいやらしい話、ギャラはボジョくんの5倍もろとりますけども」
A「フィフティーフィフティーちゃうん!? えっ、コンビのギャラ配分、フィフティーフィフティーちゃうん!!? 5:1!? ほんでやっぱおれの名前『ボジョ』なんな!!」
B「そのうえ顔も、ご覧の通りのイケメンでして」
A「うっさいわ! たしかにこいつ、イケメンではありますけどもね!? ふつう自分で言います!?」
A:Bの顔を指さして客席を見渡す。
B「シュワちゃんとブラピとIKKOさんを足したような」
A「なんでも足せばええってもんちゃうぞ」
B「シュワちゃんとブラピとIKKOさんをかけたような」
A「か、け、算!! こいつ、『足す』より上を狙ってきよった……! ほんでも最後にIKKOさんかけたら全部が台無しになっ――、いやっ、台無しいうんもあれですけどもね? 全然そういうあれとちゃいますけどもね? いうて『イケメン芸能人』言われてIKKOさんの名前挙げる人おると思うん?」
B:不快感をあらわに、ドスのきいた声で。
B「他人の目ぇ気にせんと自分のスタイル貫いとる生き様がイケメンやろが」
A「まぁ……まぁ、そうね! たしかにそう! 自分を貫くんはイケメンかもしらん!」
B「そんならイケメンで文句ないやろが」
A「……っ、うん! せやな! せや、イケメンや! よーぉ考えたらイケメンやった! ごめんごめん、いらんこと言ったおれが悪かったな!」
B「チッ、おまえみたいなもんがイケメン語れる思うなよ、このボジョ風情が! ――まぁ謝罪については楽屋に戻ってからゆっくり聞きますけども」
A「あ、今すぐにはゆるしてもらえへん感じ? おれのほうがめったくそ言われよるけどおれが悪いねんな? ――せやな! 先にやったほうが悪い言うもんな!」
B「そんでぼくね、昔からずーっと芸人に憧れてまして」
A「おう。ゆるされてへんけど聞くな? なんかごめんな? ゆるしがたい人間が話し相手で」
B「まぁ、ひとくちに芸人いうてもいろいろあるやないですか。知性派〜だの、天然〜だの。そんなかでもぼくがいっちゃん好きやったんが、登場するだけで笑いが起きるようなタイプの芸人さん!」
A「あー、おるなー。見た目だけで笑けてまうような人な!」
B「そう。そんな芸人になりたかったんですよ」
B:片手で、パッと花が開くようなジェスチャー。
B「登場して、ドーン! 裸んなって、ドーン! ネタやって、シーン……」
A「すべっとるやないか! 芸で笑い取れてへんやないか!!」
B「まぁ、芸のほうはさておきまして」
A「一番さておいたらあかんもんちゃう!? 大丈夫? 『芸人』から『芸』取ったらただの人やで? ――ただの人て!!」
B「憧れるわけですよ、脱いだだけでドッカーンみたいなん」
A「あぁー、ねぇ! 自分の身ぃひとつで笑い取れる、いうんは強いわな!」
B「そやからね、ぼくこのコンビ組む前にちょっとピンでやってたんですけども、その時代に裸芸をやったんです」
A「おう、ええやんか! どんどんやったりぃや!」
B「そんなら服脱いだ瞬間、会場中が『イヤーーーッ!!』って」
A「まぁそらね? おれら芸人なんてもんは脱いだら、毛虫が落ちてきたーみたいな悲鳴あがるもんですからね? せやけどそこをどう『笑い』につなげていけるか、っちゅーところが腕の見せどころと言いますか醍醐味と言いますか」
B「ちゃうねん、黄色い歓声やねん」
A「どういうこっちゃねん」
B「『イヤー! ナイスバルクー!』とか、『イヤー! キレてるキレてるー!』とか、『イヤー! 肩にちっちゃいジープのせてんのかーい!』とか」
A「それ会場間違ってません? 舞台の上にいるん全員マッチョやったりしてません? 筋肉のこと『バルク』て、ふつうのお客さんはよう言わんからね?」
B「そやからぼくの裸で笑いは取れへんのやな、って気づいてもうて……」
A「ある意味『ドッカーン』沸いたみたいですけども。まぁまぁまぁ、たしかにそこは向き不向きあるかもしらんね。脱いでおもろなるんは、たるんだ身体しよるけったいなおっさんくらいやから」
B「まさにボジョくんやん」
A「おうおう、おまえあとで話あるからな。楽屋でIKKOさんの件を正式に謝罪させてもろてから、覚えとけよ!!」
B「それはいいんやけど、ぼく楽屋で一個だけ心配なことがあんねん」
A「なんやなんや、聞いたるわ!」
B「ぼくが着替えで脱いだとき、『イヤー!』って歓声あげるんだけはやめてな……?」
A「誰が相方の裸見てよろこぶねん! もうええわ!」
AB「「ありがとうございましたー!」」
暗い話を書いていた反動からか、突然頭のなかで架空の芸人による漫才がはじまったので書き起こしました。
ボジョくんのほうがちょっと関西弁濃いめなイメージ。老けて見られるけど実際はレイくんと3歳差くらい。
本名は佐々野くんと五十嵐くん。
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