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魔法大国の花嫁様!?  作者: ルナ
陰謀に巻き込まれる少女
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第二十一話 ~変わっていく少女~

 第五王子カインは、仲間とともに

神の村に向かっていた。

 アクア、ルー、シーレーン、フィレンカ、

ミステルで美冬を救出する部隊は組まれている。

 美冬つきのメイドたちも行くと言ったけれど、

危険なので城に残ってもらっていた。

(待っててね、ミフユ……ッ!!)

 カインは不安そうな彼女の顔を思い浮かべ、

ぎゅっと拳を握りながら心中で叫んだ。

「お姉さま、きっと悲しんでいるでしょうね」

「ミー……」

「ミフユお姉ちゃん……」

 三人も心配そうな顔をしている。

アクアは一見何でもないような顔を

しているように見えたが、眉がしかめられていた。

 きっと、口には出さないけれど美冬を

かなり心配しているのだろう。

 彼らはすぐに村に乗り込んだ。

門の前には門番がいて、ぎょっとしたように

全員を見ていた。門番とは言っても、

明らかに戦闘なれしていない、村人のようだった。

着ているのも、鎧などではなく、薄汚れた服だ。

 武器も木を削って作ったらしい槍だった。

「だ、誰だ、貴様たちは!!」

 門番はアクアたちに木の槍を向けて来た。

ため息をついた後、アクアがすっと彼の前に手をかざす。

 大量の水が彼に襲い掛かった。

村をそのまま埋め尽くさんばかりの勢いの水が

その場にあふれだす。

 悲鳴を上げ、彼はそのまま水に飲まれて

もがきまわった。

 アクアはちょっと悲しげな顔になると、

「ごめんね」と小さく言う。

 フィレンカたちは男の行動に目を見張っていた。

彼女たちには何も見えなかったのだ。

 男は何もないところで悲鳴を上げ、

まるで苦しむかのようにのたうちまわっていた。

 そう、このアクアの技は、幻術なのだ。

幻の水を出現させ、男を溺れさせたのである。

 動かなくなった男が、ただ気絶しただけで

あることを確認してから、彼らはまた歩き出した。


 その頃ーー。

相沢美冬あいざわみふゆは、エルダと共にいた。

 話をしていて、彼女の顔は嬉しそうだ。

だが、エルダだけはせっぱつまったような、

話さなくてはまるで死んでしまうかの錯覚を

受けるような、そんな表情だった。

 美冬はそれには気づいていないらしい。

エルダは本心を言うならば、ここには

いたくはないのだった。

 美冬に対する後ろ暗い気持ちや、

悲しみを味わいたくないから。

 だが、自分は巫女だ。

我慢しなくてはならない。

 美冬が話したいというのならば、

無理をしてでも話をするほかない

 悲しい気持ちを打ち消すかのように、

エルダは声を張り上げて話し始めたーー。


 その頃、カインたちは村人たちと戦っていた。

なんとか門番は倒したものの、迷ってしまい、

村人たちが住むところにやってきてしまったのだ。

「皆、殺すんじゃないぞ!! 大怪我もさせるな!!」

「分かったわ!!」

「了解です、お兄様!!」

 カインは全員に指示を飛ばしながら

強化した拳で村人たちをなぎ飛ばしていた。

 シーレーンが歌で何人か眠らせ、

ルーが爪をしまった拳で村人たちを気絶させる。

 アクアは何度も幻術を使用していた。

フィレンカはなるべく魔術をセーブした

力を使い、村人を倒していく。

「かなりいるわね……私、疲れたわ」

 と、ここでアクアがリタイアした。

幻術はかなりの精神力と集中力が

使われる。なので、長時間の使用は難しいのだ。

 シーレーンも歌いすぎてのどを抑えていた。

戦える人数が半分に減り、そのせいで何人かを

逃がしてしまった。やがて、顔をひきつらせた

エルダが彼らの前に姿を現した。


「私の村人たちを傷つけたわね」

「美冬を傷つけたお前に言えることか!!」

 あくまで冷静な声を出そうとする彼女に、

カッとなってカインは怒鳴り声をあげた。

 その声に驚いたのか、エルダの後ろにいた

少女がひょっこりと姿を現す。

 その顔を見た時、カインの表情が驚きに染まった。

そこにいたのは美冬だった。

 カインの愛しい少女。

愛する婚約者がそこにいたのだ。

「エルダ、美冬お姉さまを返してよッ!!」

 フィレンカが鋭い声をあげる。

エルダは嫌な笑い方をすると、あっさりと了承した。

「いいわよ。ただしーー」

「ただし、何よ!?」

 苛立つような声を上げたアクアが立ち上がる。

さらにエルダは笑みを深くすると、こう言った。

「美冬が、生神様が、それを望んでいるなら、

私も止めはしないわ。ねえ、生神さま?

 彼らを知っている? 彼らと帰りたい?」

 何か含みがあるのに気付いてカインが眉をひそめる。

美冬は全員をちらりと見ると、首を振って

彼らを知らないことを示し、帰りたくないことも示した。

「あなたたち、誰? 私は分からないわ」

「ミフユ!?」

「お姉さま!?」

「ミー!!」

「ミフユお姉ちゃん!!」

 カインたちは悲鳴のような声を上げた。

アクアだけは、こいつが何かしたといわんばかりに

エルダを睨みつけている。

 しかし、エルダはただ指示を出しただけだった。

「あなたたち、お客様に退出願うのよ」

『はいっ!!』

 追い出せと命じられ、ずらずらと村人が彼らを

取り囲んだ。青ざめたカイン達は動けない。

「ミフユ、本当に僕達が分からないの?

ミフユーーーーーー!!」

 どれだけ叫ぼうとも、彼女は彼の方を

一切見ようとはしなかったーー。



記憶を消されているため、

カインたちが分からない美冬。

彼らの運命は!?

そして、美冬は、エルダは

どうなるのか!?

次回は生神編に突入します。

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