表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法大国の花嫁様!?  作者: ルナ
悩む少女
11/29

第十幕 ~思い悩む少女~

 相沢美冬あいざわみふゆは、青ざめた顔でお花畑に座っていた。

 座ったまま動かない。否、体が動かない。

「好きじゃないなら、カインのそばをうろちょろしないで!!」

 そう怒鳴った少女は、つらそうだった。

 自分のせいで不幸な目にあう子がいるなんて。

 ここでは、美冬は求められていたけれど、傲慢だったのだろうか。

 愛されて当然だと思っていたのだろうか。

 あの美冬なのに。いじめられっ子の、いくじなしの、役立たずの美冬。

「私、傲慢だったよね……。カインのことを本気で好きじゃないかも

しれないのに、彼の花嫁になろうとした……」

 美冬の心の暗い闇が頭を上げたーー。



「お姉さま私の勝ちよ!!」

 部屋に戻ろうとした時、飛び出してきたフィレンカが笑顔で言った。

 美冬は、ようやくかくれんぼのことを思い出した。

「おしかったよなあ、ミー。二人は見つかったんだけど」

「次やるときは、見つけられるよ。お姉ちゃん!!」

「そう……」

 ルーとフィレンカは首をかしげた。美冬の顔は、

かくれんぼに負けたからという訳ではない気がしたのだ。

 あんなに張り切っていたけれど、この表情はひどく

青ざめていて、たかが遊びで負けたからといって、

こんな顔をするだろうか。

 シーレーンは気づいていないらしく、

ふわふわと笑顔で空中を飛んでいた。

「ミー、どうした? 具合が悪くなったのか?」

「お姉さま、どうなさったの!?」

 驚いたように二人が聞いてきたけれど、

美冬はあいまいに笑って彼らと別れた。

 今は誰とも会いたくなく、一人で考えたかった。

 彼女の言葉は、ただのきっかけだった。

 ショックだったけど、その通りだと思えた。

 わからない。彼のことを愛しているのか、

好きなのか、わからない。

彼のやさしさに甘えていたのだろうか、

と美冬は考えた。そして、気づいた。

美冬は、一度も彼に好きだと言っていない。

 カインは何度も言ってくれたけど、

 美冬だけが言っていない。

「カイン……」

「呼んだ?」

「きゃっ」

 小さく呟いた時、当の本人が顔を出したので、

美冬は飛び上がりそうになった。

 今、一番会いたくない人だった。

 美冬の部屋に行こうとしていたらしく、

 笑顔で歩み寄ってくる。

「ごめんね、おどかしちゃって。

ねえ、散歩しない? いいところがあるんだ。

湖と花畑があるところ!!」

 さっきの人魚がいたところだ!!

 美冬は慌てて首を振った。

 勢いよく振りすぎたため、首が痛くなる。

「今、具合が悪くて……」

「そう……」

 カインの顔が悲しみで染まった。

 しまった、と美冬は思う。

さっきまで出歩いて、部屋にいなかったのだ。

具合が悪い人間は、そんなことしない。

 嘘をついて断られた、と思ったのかもしれない。

「ごめん、また、今度ね」

 カインが行ってしまう。美冬は思わずひきとめそうに

なり、なんで引き止めるのだと、自己嫌悪した。

 美冬は暗い気持ちで部屋を開けた。

 そこには、ミステルがいる。

「授業の続きをしましょうか?」

「ごめん……ミステル、また今度にしない?

 ちょっと疲れたの」

「あらあら、姫様たちにも困ったものね」

 ミステルは疑いもせずに部屋を出て行った。

 美冬はふらふらとベッドまで歩み寄り、

倒れ込む。スミレの香りがただよった。

「ううっ!! ・・・・・・っく!!」

 美冬は一人きりで声を殺して泣いた。



 美冬はそれから、一人でいることが

多くなった。カインの誘いも、

フィレンカたちの誘いも、幾度となく

断った。ミステルの授業も、具合が

悪いからと受けなかった。

 テレーズたちも、部屋にいれなかったので、

食事も何もかもしないでベッドにいた。

 あれから、何度考えてもわからない。

 カインのことを好きなのかわからない。

 半端な気持ちで彼に会いたくなくて、

美冬はかなり長い間彼に会っていなかった。

(このまま、私なんて、死んだ方がいいんだ

……。そうしたら、カインだってあの子と

結婚するかもしれない……)

 鬱鬱うつうつとしたことばかり、

最近は考えている。食事をしていないので

体は痩せほせ、水もとっていないので、

美冬は脱水症状におちいっていた。

 頭がクラクラするけれど、起き上りたいとも、

食事をしたいとも思えない。水も欲しくない。

 死にたい、と本気で思っていた。

 すっかり明るくなっていた彼女は、

前の性格に戻っていた。世界のすべてを

呪い、いじめっ子を呪い、両親を呪った、あの時に。

 消えたい。このまま消えてなくなりたい。

 自分がいたって、この世界にとって益にも

なることはない。害にもならないけれど……。

 もうどうでもいい、と美冬は回らない頭で

考えていた。もう、目を開けていることも

難しい。手足も動かす気になれない。

 涙さえももう出ない。

 とーー。

 冷たい水が洪水のように美冬に

押し寄せた。おぼれそうなほどの

水に、ついせき込んでしまう。

 水が口に入ったので、少しだけ意識が

はっきりしてきた。薄眼を開け、

あたりを見回す。すると、怖い顔を

した少女がそこに立っていた。

 その姿は、人間の姿をしていたけれど、

間違いなくあの時の人魚だったーー。

美冬が悩みすぎて死にかけます。

そこにやってきた、人魚の少女。

彼女の目的は!? 

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ