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魔法大国の花嫁様!?  作者: ルナ
悩む少女
10/29

第九幕 ~非難される少女~

 相沢美冬あいざわみふゆは今日も勉強をしていた。

 今日の教師せんせいは、ミステルだ。

「いいですか、ミフユさま。まずは、ご挨拶から

教えましょう。テレーズのやり方では、

覚えにくいのでね」

「は、はい……」

「まずはおはようございます……

これは、〝フィン・レン〝です。

フィンはおはようだけで、レンが

ございますですわ」

 早速美冬はやってみた。

桜の花のような唇を動かし、

必死で言おうとする。

 発音は難しかったが、

なんとか言うことができた。

「ふぃん・れん……」

「なかなかですわ、ミフユさま。

後、わたくしたちに接する時は、

〝フィン〝だけで結構ですわ。

では、おっしゃってみてください」

「ふぃん、ミステル……。

これでいいんですか?」

「バッチリですわ」

 母親のような笑顔を浮かべる

ミステルに、美冬は嬉しくなった。

 少しずつでも、自分は変わって

いっている。もう、前の自分ではない。

 ここに来てから、美冬は幸せだった。

「お姉さま、遊ぼう!!」

「ミフユお姉ちゃん、あたしも遊びたい!!」

「ちょっとお前ら待てって!! いてて……」

 と、いきなり窓から、第五王女フィレンカ、

下働きをしている鳥少女セイレーンのシーレーン、

同じく下働き狼男ウェアウルフのルーがやってきた。

 ルーは止めようとしたらしかったが、窓枠に頭

をぶつけて呻いている。

「何をやっておられるんですか、姫様!!

 下働きの者たちまで巻き込んで!」

「まきこんでないもん!!」

 ぷうっ、とフィレンカは頬をふくらませていた。

 ルーは巻き込んでるだろ、と叫び、フィレンカ

に睨みつけられている。

 三人はかなり仲がいいようだった。

 ルーも苦笑はしているけれど、

それは嫌ではないらしい。

「フィーは考えなしすぎなんだよ!

 今はミフユは勉強中だろ!!」

「うるさいな、ルー!!

 勉強も大事かもしれないけど、

交流を深めるのだって立派は勉強でしょっ!!」

「口にへらないやつ……」

「なんですって!!」

 言い合う二人の様子に、ミステルは驚いた

ような顔をしていた。

 それから、くすり、と笑う。

 その顔は、まるで母親のようだった。

「姫様が、あんなに楽しそうに。あの子たち

を城に呼んだのは、結果的によかったわね」

 美冬は首をかしげた。あんなに元気そうな

感じだったけれど、いつもは違うのだろうか。

「どうせ、もう勉強にはならないわね……

ミフユさま、どうぞ姫様たちと遊んでください」

「え、いいの!?」

 太陽のようにフィレンカの笑顔が輝く。

シーレーンも同様だ。

 しかし、ルーだけはすまなそうに謝った。

「すみません……」

 ミステルはさらに大きな声を立てて

笑い、暗に怒っていないことを示した。

「その前に、お茶にしましょうか」

 チリリン、とテーブルに置かれた鈴

を鳴らし、ミステルは言った。

 この銀色の美しい鈴は、

メイドや下働きのものを呼ぶ時に

使用されるものである。

 しばらくして、若い少女が

やってきた。ミフユが会ったことのない

メイドである。気位の高そうな雰囲気だった。

「およびですか」

 髪を風変わりな形に結いあげたメイドは、

髪や腕や足にまでごてごてと装飾品を

飾っていて、およそ仕事をする気など

ないような感じだった

 お仕着せにも、レースやフリルやリボン

を勝手に縫いつけ、スカートは三段になっている。

 ミステルは眉をしかめたが、

すぐに表情を引き締めて口を開いた。

「お茶をお願いするわ」

「それは私の仕事ではありません」

 今度は少女の眉がしかめられた。

それが実際の仕事ではなくても、

やるのがメイドである。

 だが、貴族出の者の中には、

高慢で決められた仕事以外は

やらない者もいた。

 はあ、とミステルのため息。

 去る間際に、そのメイドは

じろりと美冬を睨んで去って行った。

 拒絶するような、言葉にしなくても

憎しむが伝わるような、そんな目、だった。

「私が入れてきます」

 仕方なく、ミステルが席を外し、

お茶を入れて戻ってきた。

 今日のお茶は、コルネルの花の

香りがするお茶だった。

 美冬の世界のバラに良く似ている。

美冬のお気に入りのお菓子、〝クルリア〝

と、ふわふわに焼きあげたチョコレートの

ケーキに良く似た、〝ルーナエル〝が出た。

 どれもおいしく、美冬が一口食べるだけ

で大好きになったものだ。


 こうしてお茶は楽しく終わり、

全員はかくれんぼをして遊ぶ

ことになった。フィレンカが

提案し、シーレーンが

私もやりたい、と言ったのだ。

 ルーだけはそんなガキみたいな

こと、とかぶつぶつ文句を言っていたが、

二人に押し切られてやることになった。

 美冬は断る理由もないので、

加わっている。じゃんけん(この世界にも

それはあるらしい)で鬼を決め、

彼らは走り出した。

 鬼は美冬だった。

 百を数えた後、早速はりきって探し

始める。友達のいなかった美冬は、

かくれんぼをやるのは生まれた初めてだった。

「皆、どこにいるのかしら……あ、ルー!!

 見つけた!!」

 一番最初に見つけたのは、ルーだった。

 廊下に飾られた、巨大な壺の中に隠れていたのだ。

 本人は文句を言っていたわりには上手く

隠れたようだが、手が出ていたのですぐに

分かってしまった。

「ちぇっ!! 見つかっちゃった」

 文句をいいつつ、ルーは出てきた。

「次は二人ね!!」

「はりきってるなあ、ミー」

「ええ!! 私、かくれんぼって

やるの初めてなのよ」

 ルーに手を振り、美冬は歩き出した。

 すぐにシーレーンを見つける。

 ここまでは、すごく簡単だった。

 シーレーンの場合、裏庭の茂みに

隠れていたのだが、ふわふわ浮いていたので、

すぐにわかってしまった。

「さあ、あとはフィレンカね!!

 どこへ行ったのかしら」

 だが、フィレンカはそう簡単には

見つからなかった。この二人よりは

ここのことも詳しいはずなので、

無理はない。美冬はさんざん歩き

回り、ついに前庭にたどりついた。

 前庭は、色とりどりの花が咲き乱れていて、

とても素敵なところだった。

 美しい湖まである。

「とっても素敵!!」

「誰!?」

 思わず声を上げると、誰何の声が投げられた。

 湖から、きれいな顔立ちをした人魚が出てくる。

「あんた、誰?」

「美冬っていうの。よろしくね!」

「ミフユ? あんたが異世界の姫?」

「異世界から来たわ」

 刺すような視線は、決して美冬を歓迎はしていない。

 どうして嫌われてるのか、美冬にはわからなかった。

「私、あんたが大嫌い!!」

「どう……して……」

「あんたが、カインの花嫁だからよ!!

 どうして異世界婚が認められているのに……

異種族婚が認められてないのよ……」

 憎々しげに人魚が叫ぶ。

美冬はなんと言っていいのかわからず、

その場に立ち尽くした。

「あんた! カインのことが好きなの!?

 好きじゃないんなら、カインの周りを

うろちょろしないでよね!!」

 人魚はそれだけ言うと、湖に帰ってしまう。

 後に残された美冬は、茫然とするだけだったーー。

美冬が少しだけ異世界の

言語を覚えました。

 ちなみに、この人魚は

第七話の最後に出てきた

声の持ち主です。

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