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魔法大国の花嫁様!?  作者: ルナ
惑う少女
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プロローグ ~世界を呪う娘~

 相沢美冬あいざわみふゆは、かなり田舎の方に住む、

世界を呪っている少女である。

 「世界が滅ばないかな」

 最低十回は呟く毎日だった。

 彼女は不幸体質である。生まれたころから

不幸は始まっていた。なにしろ、人並み外れて

醜い相沢夫婦のもとに、かなりの美少女が生まれた

のだから。相沢夫婦は美冬を愛さなかった。

 それどころか、最初から娘などいないかのように

ふるまった。当然世話もしない。

 美冬は足音を立てることも許されず、もしそれを

破ろうものなら、鞭で何度もぶたれた。

 泣いてもわめいても、かれらの気が済むまで

ぶたれた。顔だけは、一切殴られなかったが。

 彼女が生き延びてこられたのは、今はクビに

されていない使用人が、こっそりと育ててくれて

いたからだった。そのことがバレ、クビにされたが。

 美冬という名も、彼女からもらった。

 彼女は娘を亡くしたばかりだったらしく、本当の娘の

ように少女を愛した。少女のそばを離れる時も、ぼろぼろと

涙を流して別れをおしんでいた。

 相沢夫婦は村長だったので、それ以来、彼女は村人にさえ

愛してもらうことはなかった。



 村人は、彼女をいないもののように扱っていた。だが、彼女が

村の畑や生け簀に手を出した時のみ、怒鳴り、殴りつけた。

 村の子供たちは、そんな彼女に「遊んであげている」という、大義名分の

もと、嫌がらせをしていた。中傷するのはまだいいほうで、蹴ったり

殴ったり、いろいろなストレスのはけ口にしていたのだ。

 美冬は逆らわなかった。ただ逃げただけだったので、子供たちは増長した。

 一枚きりしかない真っ黒い服をひきさき、一足しかない木靴に穴を開けたり

した。美冬は体中あざだらけで、破かれた袖や裾から痛々しいほどの痕が

いくつも見えた。そんな毎日はいつまでも続いた。



 相沢美冬は、十五歳になっていた。つやつやと輝く黒髪と、同じ色の澄んだ

瞳、美しい顔立ちをしている。彼女は草を煮ただけで、何の味付けもしていない

スープだけで生きているので、まるで病人のようにやせほそっていた。

いじめはまだ続いていた。体中のあざも、毎日のようにつけられるので、

決して治っていなかった。

「くせえよ、よるな、美冬!! きったねんだよ、お前!!」

「え~、ひっどーい。駄目じゃーん、ホントのこと言ったらさあ」

「お前の方がひでえっつの」

「きゃははははっ!! なんかいったらあ? 美冬ぅ」


 美冬はなにも言わなかった。悪口もなにもかもどうでもいい。

彼女の心は闇に縛られていた。

「なによ、その目」

「文句があるなら言えよ」

 どんっと、美冬は突き飛ばされた。

地面に転がった彼女の後ろには、崖があった。

 立ち上がりかけてよろめいた彼女は、そのまま落下した。

「きゃあああああっ!!」

「うわああああっ!!」

 悲鳴が上がった。もちろん、美冬のものではない。

美冬を落とした少年たちだ。

 いじめをしても悪いという考えはないが、人を、何かを

殺す、ということには抵抗を感じるらしい。

 少年たちの中に、ひとつの考えが現れた。

埋めればいい、証拠を隠してしまえばいい、と。



 少年たちは回り込んで崖下に行くと、美冬に

土をかけ始めた。そのとき、美冬は生きていた。

だけど、何か言おうとも、体を動かそうともしなかった。

 これですべてが終わる。私のひどい人生は終わる。

美冬は土がかけ終わる頃、土の中で笑っていた。



私の書くヒロインは、だいたい豊かな生活を送っているので、

不幸なタイプを書いてみました。

徐々に幸せになる予定です。

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