表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

過ぎ去りし平凡な連休

作者: 武田琥珀
掲載日:2010/05/19

「GW。 通称:ゴールデンウィーク!」

短髪でチビの少女が、そう叫んだ。 今はまさに季節遅れの5月3日だ。


そんなGWを満喫している二人の少女がここに居た。


短髪で背が150cmくらいの、珍竹林ちんちくりんな少女は通称:琥珀こはく

琥珀とだけ覚えてくれると嬉しい。


もう一人、夕食の後片付けをしているセミロングの黒髪少女が雪乃ゆきの。 この家の主で、琥珀の幼馴染ながら親戚で同居人と云う、ありがちな設定だ。 見て判るように眼鏡っ子である。


「明日の夕食は何がいいです?」

「んー、ハンバーグ?」


「まぁ、雪乃が作ってくれるのならなんでもいっさ!」

「じゃあ、ハンバーグとシチューで」


「週末はウチが作るね!」

「・・・インスタント?」


雪乃の返答に、少し頬を膨らませて琥珀が返す。


「ゆきのん、チンしてあげよーか?」

「やっぱりインスタントですか」



☆ ☆ ☆ ☆ ☆


食事を済ませた後、琥珀と雪乃はTVを見ていた。

見て判るとおりペットの特集番組だ。


「あ、そうだ。 明日まゆみんの家に行くから」

「高坂さん・・・?」


「そそ! なんかペットで可愛いの飼ってるみたい

 だから見せてもらうの!」


「猫か犬?」

「鼠の類みたい。 もといモグラ? リス?」


「・・・」

雪乃は知り得る知識の中で、それらしきペットを検索してみた。

マウスの類で、もといモグラ、もしくはリス・・・。


「フェレットですか?」

「それだ!」


どうやら通じたらしい。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 翌日


雪乃が宿題をしているように見えた。 二人は同じクラスなので色々と便利だ。 宿題も写させて貰えば楽だろうし。


帰ってから写させて貰う算段をする琥珀。


「あ、宿題、今日帰ったら一緒にしよ?」

「もう全部終わりましたけど?」


「今やってるのは何・・・?」

「終わった宿題の見直しです。 暇なので」


「帰ったら写させて」

「・・・・・・・・」


「正解分8割でいいから。」

「・・・・・・・・・・・」


「じゃあ7割」

「・・・・・」


「6割5分でどうだ!」

「・・・・・」


「いくらなんでも4割不正解は恥ずかしいから

 6割5分は譲れない・・・」

「・・・・・・」


「帰りに食後のデザートゲットで!」


「あの店のプリンを買ってきます!」

「あの店のプリンなら食べたいです」


あの店の・・・という出だしから、ほぼ同時に、二人が喋った。


「商談成立!」




外は雨。 それほど大降りではないが、雨をしのぐ道具が必要な程度の量がほどよく降っている。 あなたの地域でも雨が降っているなら近所なのかも知れない。


「雨だけど、やっぱり行くの?」

「勿論! この程度の雨で戦を放棄するウチじゃないっさ!」


「・・・・・・」

「まゆみんが優勝した大会のビデオも見せて貰いたいし、

 親睦も深めて是非ウチの取り巻きに!」


「(取り巻きって・・・)」


「高坂さんって、確か弓道部でしたよね」

「ん? そうだけどどうして?」


「(どういう接点で知り合ったのかが謎)」

「ゲームの話題で盛り上がったのだよ!」


「え・・・?」

「?・・・どういう接点で知り合ったかだけど」


「(喋ってないのだけど・・・)」

「?」



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



午後二時。


琥珀が傘を片手に、自転車で友人の家へと向かっている。

距離的にはそれほどでもないけど、雨なので若干機動力不足だ。


途中、前方右方向の駐車場から車がゆっくりとバックしてきた。


そして琥珀が過ぎ去った直後、琥珀の後ろを追走する、カッパを着た学生らしき少年の自転車が車と激突した。


・・・ような気がした。


慌てて自転車のブレーキを掛ける。


後ろを走っていた自転車は、前の自転車のブレーキ音で、同じくブレーキを掛けて速度を落とした。


『風』が琥珀の傘を押し上げる。

「あっ!」


声を上げたのは柄先が折れると感じたからだろうか。

傘の柄先が『ポキン』と折れて、傘がバックしている車の後ろに落ちた。


琥珀はあたふたとひたすら慌てて、自転車を止めて下りる。


自転車を止めた琥珀を、自転車に乗った学生が通り過ぎた。


車を運転していたオバサンは、傘に気が付いて車を完全に止めた。

・・・訳ではなく、舞い上がった傘に気を取られて、アクセルを離してエンストさせたようだ。 


「ご、ごめんなさい、大丈夫ですか?」

窓から顔を出して、傘を取りに来た琥珀に謝る若いオバサン。

車には初心者マークが貼ってある。


「傘が折れちゃって ごめんなさい」


「本当にごめんなさいね」

「いえ、こちらこそ」


車の真後ろに落ちてしまった柄の折れた傘を見て、運転手のおばさんにもう一度会釈をし、傘を拾って自転車に乗る。


再び走り出した琥珀は、折れた柄をポイっと道に捨てた。


琥珀が傘を折ってしまったあたりから、雨が小降りに。


琥珀は何事も無く(?)友人の住む住宅に辿り着く事が出来た。



高坂宅は2度目の来訪で、ついおととい敷居を跨いだらしい。

尤も、その時はペットを見てはいない。


エレベーターに乗り、5階へ。

高坂という表札のドアの前で、チャイムを鳴らした。


「いらっしゃい。 どうぞ上がって」

「お邪魔しまーす!」


「こはくちゃん、いらしゃい」

「コンニチワーw」


「まゆみん、先に大会のビデオ見せてよ!」

「え・・・あ、うん」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


DVデッキにテープを入れて、弓道大会の試合のビデオを再生する。


「これ、優勝したんだよね、まゆみん」

「ん? うん。 この時は凄く調子が良かったから」


多くの選手が一列に並んでいた。 その中に真弓も居た。

そして的がズームアップして、そこに矢が刺ささった。


「うわ! ど真ん中! 凄すぎ>w<」

「あ、あははw」


「うわ! また! すっごくカッコイイ>w<」

「*>_<*」


「凄いなー、ウチなんて麻雀の大会くらいしか優勝した事ない」


「それ、凄いよ! 麻雀の大会は見た事ないけど、凄く沢山の

 人が出てるんでしょう?」


「この前出たのは64チームだったから、いっぱい居たかな」


「一応、優勝したけど・・・」

「やっぱり武田さん凄いんだ」


「・・・琥珀でいいよ」

「んー・・・少し言い難いかも」


「そういう事をいう子にはこうだ!」


とても解説出来ないような事をしている。


「ちょ・・・と、た、武田さん?」

「琥珀と言わないともっと凄いことしちゃうぞ!」


「こ、琥珀ちゃん!」

「琥珀!」


「琥珀、やめてw くすぐったい」

「ち、根性無しめ! もう観念したのか!」

「こらーw 琥珀やめてw」


「あ、ねずみも見せて!」

「はぁはぁ・・・ねずみじゃなくってフェレットだよ」


「・・・ビデオ終わってたんだ」

「まゆみんのおっぱいもんでる時に終わってました」

「・・・・・・」


「あ、アレルギーとかは大丈夫?」

「アレルギーとかうつ病とか、ウチには無縁です!」


「時折入る解説に萎えるくらいかな」

「???」


部屋を出て、ペットの居る部屋に入る二人。

籠の中で一匹のフェレットが体を丸くして眠っていた。


「あ、寝ちゃってる?」

「なんか寝ちゃってるね」


「・・・・・・」


「お母さん、レオンがいないんだけど」


「そういえばさっき出してから、見当たらなかったかな」


「二匹いるんだ?」


「うん・・・レオン! れおーん?!」

「音もしない・・・どうしたのかな?」


「どこかで眠っちゃってるかもね」


「そこのベランダから下に落ちちゃったとか?」

「・・・・・・・・・」

ベランダのドアが開いていた。 一応、ベランダを覗いて見る。

しかし、影も形も無かった。


「お母さん、何時ごろからベランダ開けてたの?」

「・・・・・・」


「そろそろ買い物に出かけるから、一応外見てくるね」


「み、見てくるって、ここ五階だよ?! 落ちてたら」


「れおん いないの? れおん」

「・・・・・・」


「多分いつもみたいに、押入れの隅で寝ちゃってると思う」


「じゃあ、下見てくるから」

「けーくんもみにいく」


「駄目、お外雨降ってるから、お家にいなさい」

「んー」


真弓と小さな男の子が家の中を探す。 レオン! れおん!と。

だが、物音1つしなかった。



「あ、携帯鳴ってるよ?」

「あ、うん。 お母さんからだ」


『下、見てみたけど、レオンいなかったから。

 家の中できっと寝てると思う』


「うん・・・わかった」


「琥珀ごめんね、次に来た時はレオンも見せれると思う」


「うん、楽しみにしてる」


「でも、レオン私にしかなつかないから、触れないかも」


「ぴょんぴょん飛び跳ねて威嚇してくるから」

「この子に触れただけでもう十分!」


体を丸くして寝ているフェレットを、指先で撫でる。


「夕食が待ってるから、今日はそろそろ帰るね」

「今度雪乃ん家にも遊びに来てよ」

「・・・うん」


「あ、鳩がベランダにいる」

「ネット張ってあるんだけど、入ってきちゃうんだ」


「じゃあ、またね!」

「うん、また」



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



下に降り、何故か自転車には乗らずに裏口へと歩を進める。


上を見上げ、真弓のベランダの真下であることを確認し、しゃがみこんで辺りを見渡す。


周りはコンクリートの通路だが、ベランダ直下の場所だけは花壇になっていて、その花壇の花や草に紛れて、見覚えのある奇妙な生き物がいた。 


「レオン?」


ゆっくりと手を差し出し、そして一旦引く。 もう一度ゆっくりと手を差し伸べると、小さな奇妙な生き物が寄って来た。


「おいで、大丈夫だから」


琥珀の手をクンクンと嗅ぐ奇妙な生き物を片手で持ち上げ、胸元に寄せて両手で抱える。


「(野良でこんな可愛いネズミいないよね)」



☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「まゆみーん」

「(武田さん?)」


「どうしたの?」


琥珀がレオンを抱えてそこに居た。


「・・・ど、どこにいたの?」

「一階のベランダ側の花壇の中で、遊んでいたでアリマス!」


「中入って良い?」

「う、うん。 ありがと><」



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



琥珀が帰った後、真弓が母親に文句の電話をかける。


『お母さん! レオン下にいたよ?!』

『え・・・』


『琥珀が見つけて来てくれたんだよ?!』

『・・・暗かったら気付けなかったのかな』


『琥珀が見つけてくれなかったら、レオン死んでたかも』

『無事だった?』

『震えてるけど、雨に濡れてるせいだと思うから、無事かな』


『ほーっ、そっか』

『ケーキ食べたいな』

『・・・じゃあ買っていくわ』


『よろしい♪』


『・・・やっぱやめ』

『え・・・』


『というか真弓、晩御飯抜き』

『生意気言いました。 ごめんなさい』


『・・・イチゴショートでいい?』

『とってもいいです お母様』


『よろしい』



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



琥珀と雪乃が夕食を食べている。 昨日のリクエスト通り、ハンバーグとシチューを。


「んまー! 雪乃の料理って本当美味しい♪」


「あ、雪乃、食べ終わったら」

「駄目」


「・・・何が駄目なの」

「写させませんから」


「あ、明後日は必ずあのお店のプリンを買ってくるから」

「駄目。 大体なんで明後日なの」


「か、必ず明後日に買ってくるから」

「じゃあ、明後日写させてあげます」


「明後日じゃ間に合わないよ><」

「知りません」


「ぺ・・・ペコポン人のクセに生意気だぞ!」

「もう二度と見せません というか琥珀、明日ご飯抜きです」

「あーん、ゆきのーん><」


「・・・何をしてるの・・・」

「・・・雪乃の機嫌悪いから」


雪乃のお腹に、後ろから両手を回している琥珀。

べったりとくっついている。


「・・・」


雪乃を両手で覆っている自分の姿を、ふと高坂邸で見た奇妙な生き物に照らし合わせた途端、あるイメージが琥珀に浮かんだ。


「あ、そっか、フェレットってモモンガなんだ」

「イタチです!」



・・・あの店は、明後日まで臨時休業になっていた。



                                             

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ