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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

水人形

作者: sisousi.kenta

精霊に好かれるとはどういう事か知って頂きたい。


私は今日もヒタヒタと追いかけられる。


私は追いかけられる。

川から上がって来る何かに。

川沿いの道路、その道の川の側を通る時に人の形をし異臭を放つ不気味な何かに追いかけられる。


道路の逆側にうつると帰っていく。

だだそれでも恐ろしい。ほんの1カ月前まではその何かは道の反対側に渡ると帰るではなく見えなくなっていたのだった。

帰る姿が見えるという事は心が捕らわれ始めている証だろう。

専門的な知識のない私には気にしない方がいいのか、逃げなければいけないのかもわからない。


人の歩くよりは少し速く、走るよりは遅い。

とりあえず走れば逃げられる事は分かっている。


お祓いにと考える事もあったが、決断出来ないまま更に一月が経つ。決断出来ないのには理由がある。私は何かを思い出そうとしている。お祓いをする事でその道を閉ざす事に抵抗があった。


私は出来るだけ川沿いの道を避けて通るようにしていた。

どうしても通る際にも逆側を通り、川の方をなるべく見ないようにする。

その日もチラリとだけ川の側を見ただけだった。

それは私の目の前に迫っていた。

なんの気配も音もなく異臭さえも気がつくまで感じさせずにそれは目の前にいた。そして私に手を伸ばす。その手に触れられた瞬間、私は小さい頃の記憶がよみがえる。

私は幼い日、精霊に出会った。


名前も思い出せない友人と2人、川で遊んでいたはずが知らない町の前にいた。大きなアーケードがあり、見えないけれど見える何かに案内される。知らないはずの言葉がわかる。

精霊と遊び、たくさんのお菓子やジュースが振る舞われる。透明なジュースはなぜかたくさんの果物の味がする。飲みたいと思う味に変わって行く。

とても楽しい時間だったけれど私はみたいアニメがあった事を思い出す。

私と友人はその街から出る。2人で出口へ向かっていく。2人並んで会話をしながら向かったはずなのにその街から出る時私は1人だった。

そこで私は意識を取り戻す。私は近所の少し年上の少年に溺れた所を助けられていた。

嫌な予感がした。怪談話の類でよくあるように友人は死んでしまったのではないか。だからその少年に友人の事を尋ねたが、そんな子は知らないと言われてしまう。狭い田舎町、全員同じ学校に通っている。知らないはずはない。私は母や他の同級生にも聞くが誰もその子を知らないという。

その子の家にも行ったが子のない夫婦が理由もなく寂しげにしているだけだった。

そして次の週には私も友人の名が思い出せなくなっていた。


追いかける何かはその友人だった、彼のその後の記憶が私の頭に流れ込む。彼は泣き叫びながら体を精霊に変えられていく。

精霊にしたら人間の気持ち等関係無いのだろう。人間だって気に入った動物を捕まえてペットにする事が有る。


その友人は生気を失った顔なのに笑っている。

「やっぱり君も来てもらうことにした。その子が寂しがるから」

友人とは逆側からの声だった。実際には日本語ではない別の言葉だったがなぜか意味がわかる。振り返ると何もいない。声だけがいつまでもそこにあり続ける。何度も聞こえるというのとは違う。でも声はあり続ける。


私は川から来る何かから逃れるため護身用に買っていたスタンガンをかつての友人に押し当てる。私はそのまま病院に駆け込む。

友人につかまれた部分から体が壊れて行く感覚があった。私は病院の受付で倒れ込む。私は全治に数年かかる血液の病気だった。


病院では点滴が腐った水に変わっていた事があるし、その後も川どころか水に近づくだけで友人は現れるようになった。

隣のベッドが御守り作り関係の人でなければ、私は今ここにいないだろう。

隣の男にもらったそれをみにつけていなければ私は風呂にもトイレにも行けないし水も飲めない。

私と同じ病室になった者の中には親しくなった者も何人かいるが、御守り作り関係の人含め皆半年以内に亡くなったと聞く。 御守りを外さなければもっと死ぬとでも言いたいのだろうか。


今も友人は現れ続ける、これ以上近づけないだけなのだ。








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― 新着の感想 ―
精霊に好かれることがここまで恐ろしい体験として描かれるとは予想外で非常に引き込まれました。川から現れる異形の存在に忘れ去られた友人、そして幼い日の精霊との出会いの記憶がまるでパズルのピースのように繋が…
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