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見知らぬ若造

久々に、高遠はDDメンバーとLinen会議をしていた。

「4月2日以来、大阪の事件以外、事件が起こっていない。不思議だね。」と依田が呟いた。

「『準備中』の札、どこかに飾ってないか?」と物部が言うと、「笑えないですよ、副部長。」と、福本が文句を言った。


 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子だいもんじでんこ・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 橘なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。夫の一ノ瀬と死別したが、暫く「一ノ瀬」姓を名乗って、一ノ瀬家に留まっていた。来年、ロバートと再婚予定。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。


 久保田嘉三・・・誠の叔父。警視庁管理官。交渉案件があれば「交渉人」の仕事もする。EITO初代指揮官。

 久保田誠・・・警視庁警部補。あつこと結婚してから、警視庁の『雑用係』的な仕事をしながら、あつこの事務仕事もやっている。自分では「スーパー主夫」と言っている。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。


 斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁警部。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。


 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持


 藤井康子・・・伝子のマンションの仕切り隣の住人。モールに料理教室を出している。EITO準隊員。

 大文字綾子・・・伝子の母。介護士。


 物部一朗太・・・喫茶店アテロゴのマスター。伝子の同級生。大学翻訳部の副部長。

 高遠達には、今でも「副部長」と呼ばれている。

 物部[逢坂]栞・・・伝子の同級生。物部と再婚した。童話作家だったが、一時を設けてから、完全引退した。

 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は、建築事務所で働きながら、ノンプロ演劇団を率いている。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。宅配便ドライバーをしていたが、ホテル社長小田にスカウトされてホテル支配人に。社長の姪と結婚した。

 南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。高校の国語教師をしていたが、同僚達の『活動』に絶望して離職。今は見合い結婚した文子と学習塾を経営している。

 服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。シンガーソングライターで路上ライブをしていたが、見合い結婚したコウと音楽塾を経営している。

 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。造船ミニチュアを作っていたが、才能を見込まれて、海自臨時職員に。南原の妹蘭と結婚した。


 山村美佐男・・・伝子と高遠が原稿を収めている、みゆき出版社編集長。

 青木新一・・・DDメンバー。大学生。SNSに詳しく、Linenのグループを複数持っている。

 中山ひかる・・・DDメンバー。伝子達の大学に入学した。アナグラムに詳しい。

 ロバート・・・オスプレイのパイロット。アメリカ空軍からのEITO出向。来年、帰国予定。



 =================================================

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 4月7日。午後3時。伝子のマンション。

 久々に、高遠はDDメンバーとLinen会議をしていた。

「4月2日以来、大阪の事件以外、事件が起こっていない。不思議だね。」と依田が呟いた。

「『準備中』の札、どこかに飾ってないか?」と物部が言うと、「笑えないですよ、副部長。」と、福本が文句を言った。

「すまん、ついな。大阪って言えば、一昨日の事件は模倣犯なのか?高遠。」

「模倣犯って言うより、兵庫県の事件の続きですね。だが、あの犯人の意見も正論ですね。メガソーラーが儲かるからって、どこの自治体も取り入れちゃって。山火事の多くは、自然発火じゃなくて、メガソーラーの誤作動って、ネットでは有名な話。マスコミは隠してるけど。お日様は、毎日照らしてくれないですよ。だから、洗濯物干すのが大変。」

「出た、主夫の意見。」と、依田がからかった。

「山潰して自然破壊して、環境保護なんて、矛盾してますよね。」と、山城が珍しく積極的に発言した。

「耐用年数が短い上に、壊れたら、産業廃棄物。太陽光発電は、昔の通り、必要と感じた家庭だけが取り付ければいいのに。しかも、殆どが那珂国の欠陥品。」と、南原も溜息をついた。

「あのセールスもしつこいねえ。ウチは店子だから、『大家さんに聞いて』って言ったら、大家さんはどこですか?って聞くから、『議員会館』って言ったら、諦めて帰って行きました。」と、服部が報告した。

「僕は、常備するのは、医療機関と災害の時の非難所だけでいい、と思う。」と、高遠が発言した。

「今は、ドローンがあるからね。マスコミが隠しても、ドローンで撮影した人がSNSでばらしたら終わり。未だに分かってないね、オールドメディアも政治家も。」

「ひかる君、言うようになったねえ。あ。新学期は?」と物部が尋ねると、「来週、京都に戻ります。」と、ひかるは応えた。

 山城が、「栞さんは、ウーマン銭湯行かなかったんですか?」と尋ねた。

「DDメンバー女子は、子育て大変なのよ。と言っても今は皆病院だけど。私はアテロゴの手伝いがあるし、実家から母が来てくれて病院に行っているから、店の手伝いが出来るけど。蘭ちゃんも大変でしょ?」

「ウチも実家から母が出てきて、欄の世話をしてます。やはり、こういう時は、母親の出番ですね。」と、南原が言った。

 そう言う南原も、妻の文子の為に文子の母が世話を焼いている。

「乳幼児の時は、男はただ働くだけ。でも、いつでも『パパ』を認識出来るようにしなくちゃいけないって、池上先生がおっしゃってましたね。」と、服部が言った。

「僕らも、いつかそういう時期が来るのかなあ。僕は持てないから、このままお爺ちゃんになりそうだけど・・・。」と、青木が言うと、「この前の彼女、どうしたの?」と、ひかるが冷やかした。

「振られたよ、あっさり。やっぱりネットでは、実態が見えないからね。デートに漕ぎ着けたのはいいけど、散々奢らせれた挙げ句、『ごめんなさい。タイプじゃないの。予定空けて貰って悪いから、お付き合いしたけど。影ながら応援してます。』だって。」

「振られたのは悲しいけど、『男女関係じゃないお友達』には、なってくれそうね。『相談相手』って割り切ればいいのよ。男女関係に発展しない場合もあるけど、ウチみたいな例もある。ね、一朗太。」と、栞は言った。

「ああ。物部君。もう吹っ切れてるから、『試してみる?』って聞いた時は驚いたよ。『いいのか?滑り止めで。本命じゃないのに』って言ってみたら、『おんなに恥かかすんじゃない!!』って・・・で、今だ。」

「副部長。逢坂先輩に口説かれたんですか?逆プロポーズ?」と依田が大袈裟に言った。

「ヨーダ。副部長に恥かかせるなよ、知ってた癖に。」と、高遠が窘めた。

「ふうん。」「そうだったんだ。」「知らなかった。」「勇気あるなあ。」「やっぱり女性は強い。」と、服部、山城、南原、ひかる、青木が異口同音に言った。

「ヨーダは、皆に情報共有したかったんだな。」と、福本が笑った。

「ところで、あの『パラ・リヴァイアサン』って、大人しいね。」

「副部長。さっき、それ、ヨーダが言いましたよ。」高遠が言うと、「そうだっけ?」と物部は惚けた。

「ひかる君、青木君。ネットで『声明』見かけない?」と高遠が言うと、草薙がLienに入って来た。

「今、見かけました。ごめんなさい。盛り上がっているところを。Redに出てます。」

 そして、EITO用のPCが起動した。

 皆に解るように、高遠は予備のスマホをPCに繋いだ。

 皆にEITOのネットは繋がっていないが、間接的に、そして、一時的に繋ぐ為だ。

「今回は、Redです。Redは動画も投稿出来ますが、文字メッセージです。」

 草薙の言葉に、「草薙さんが開発したチェックシステムで見付けたんですか?」と高遠は聞いた。

「左様でございます。」と、まるで、みちるの『手下』の玉井のような口の利き方をしたので、皆、笑った。

 まるで、執事のように忠実にみちるに従うので、伝子が『手下』と言い出した。

 その玉井の店は、EITOと協力関係が出来てから、エマージェンシーガールズや、大阪支部のEITOエンジェルズのユニフォームを製作している。

 PCの画面には、こういう文字が並んだ。

「初めまして、と言うべきかな。ジジイは嫌いだったから、どさくさで始末する予定だったが、凄い防御力だね。ジジイや先輩達に見習って、僕も『なぞなぞ』作ることにしました。以後よろしくね。なぞなぞは、『有馬辛く小雨よ』です。時間は、10時の方向で検討しました。偲ばずに来てね。ごきげんよう。」

「まるで、ひかる君達と同年代みたいな口調だな。でも、実際は分からないか。」と物部が言うと、「いいのかなあ、こんな簡単で。最初のアナグラムだから、小手調べかな?草薙さん、理事官。一応、解けました。『有馬辛く小雨よ』は、『アメ横サクラ祭り』です。『10時の方向』は、ご存じ上野恩賜公園。偲ばずにってのは、『不忍池』でしょう。」と、ひかるが言い、「『アメ横サクラ祭り』は13日の日曜日までですが、多分13日のことでしょう。3日間、間があるけど、日曜日が最適かも。」と、青木が言った。

「優秀な準隊員がいて助かるな、草薙。13日は入園停止にして貰い、万一の場合に備えて3日間は警邏を強化して貰うように警視庁に依頼する。大文字君達は、定時連絡があった時に伝えるよ。」と、斉藤理事官は言った。

 午後4時半。ウーマン銭湯。

 着替える途中で目の色が変わったのを見て、金森は「どうしたんですか?隊長。」と尋ねた。

 ここは予約制で、今は貸し切りだ。

 伝子は、皆に伝えた。

「お座敷がかかったみたいだ。パラ・リヴァイアサンから。お座敷は日曜日。明日から準備にかかれ。」

 着替えた後、伝子は、病院にいるあつこに電話し、なぎさにはメールで要件を送った。

 本当に吹っ切れたのかどうか分からないが、なぎさは今、ロバートと付き合っている。

 みちるには、なぎさが不在になった後、副隊長を継ぐように言ってある。

 子育てしながらの闘いは、お互い様だ。

 物部の言う通り、将来お互いの子供達が仲良く育つことを夢想しながら闘うしかない。

 スタートした時のように、あつこ、なぎさと3人で頑張っていた時代とは違う。

 どんなに闘いが長くなろうと、隊員達の成長と新人育成で継続して行くしか無い。

 こんな積もりじゃなかった。

 スタートした後、実は「案内人」では無く隊長だったことを知った時は、スカウトした久保田管理官を恨んだが、今は満足している。『2足の草鞋』の筈の翻訳は、編集長は煩く言わなくなった。夫の学は、細々と主夫をやりながら小説を書いているし、物部と立ち上げた『煎餅』の副業も順調だからだ。

 午後4時40分。病院。

「おねえさまからだわ。」と、あつこは、電話を切って、健太郎を見ながら、夫の誠に報告をした。

「休息は一日か。まあ、仕方無いな。」「ごめんね、まこっちゃん。主夫と助手ばかりやらせて。」「気にしなくていいよ。健太郎、名前負けしてないね。」

 久保田誠警部補は、妻のあつこ警視がEITO東京本部に出向しているので、警察の『書類業務』を代行している。主夫と言っても、古くからいる執事や家政婦がいるので、家のことは、あまりやっていない。たまに、あつこのパンティを洗ったり、シリアルの注文をしたり、トレーニングルームのチェックをする位だ。

 午後4時40分。ある、ホテル。

 密会と言う訳ではないが、念の為、別々にチェックインして、なぎさは仕事の無いときは「逢瀬」を楽しんでいた。

「おねえさまからだわ。」と、なぎさはロバートにメールを見せた。

「今度は、どんな作戦?」「部外秘よ、未来のハズ。」

 ロバートは、なぎさを『お姫様だっこ』をして、バスルームに向かった。

 午後5時半。伝子のマンション。

 伝子は、隊員達とウーマン銭湯の前で別れて、バイクで帰宅した。

 追跡システムのバージョンアップのお陰で、『煽り運転』を装った襲撃は最近無い。

 何より、敵の『幹』が替わったばかりだ。

 伝子は、あさりのスパゲティと海老グラタンを食べながら、高遠の説明を受けた。

「パラ・リヴァイアサンかあ。あ、パラって、どういう意味?婿殿」と、綾子は高遠に言った。

 伝子に尋ねると、「クソババア」が返ってくるかも知れないからだ。

「接頭辞として「~の近く」「~に似る」「擬似の」「にせの」などを意味しますが、ギリシャ語の「超えて」「反対側に」という意味でしょうね。リヴァイアサンの前に付けて言っているし。リヴァイアサンって言うのは、前に説明したかも知れませんが、『旧約聖書』に出て来る、怪物の名前です。蛇とか龍に近いとか。」

 高遠は簡潔に説明した。

 伝子は、あさりのスパゲティも海老グラタンも2杯目だ。藤井が呆れて見ている。

「朝から何も食べていない子供のようね。」「朝は、いつも通り食べましたよ。お昼は、皆とウーマン銭湯に行く前に、うどんを食べました。もう太っても気にしないから。妊娠してからデスクワーク多かったし、おさむ産んだ後、太ったあい。太ったら、みちるの手下に、ユニフォームを作り直させます。」

 午後7時。

 藤井が帰った後、編集長山村がやってきた。

「原稿、出来てませーん。」と、伝子は機先を制して言った。

「分かってるわよ。高遠ちゃん。この間の小説、文庫化するから、『あとがき』書いてくれない?今月中でいいわ。」

「了解です。編集長、痩せました?」と、高遠は余計なことを言った。

 編集長は、延々とフィットネスの話をし、2時間が過ぎた。

「あら。もうこんな時間。ごめんなさい。私ったら。大文字くぅんの後輩、頑張ってるわよ。それじゃ、お邪魔様。」

 編集長を見送り、ドアののぞき穴で確認してから、伝子は衣服を脱いだ。

 洗い物を片づけようとした、高遠の手が止まった。

「これ、終ってからでいい?」高遠は愛妻に質問をした。

 今日は何ラウンドかな?と、思いながら。

 そして・・・。




 4月13日。午前10時。上野恩賜公園。不忍池付近。

 ―完―


「あら。もうこんな時間。ごめんなさい。私ったら。大文字くぅんの後輩、頑張ってるわよ。それじゃ、お邪魔様。」

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