転生したら大仏だった件Ⅵ ―神滅魔導戦線:カオス界遠征
プロローグ
魔導界が仏の力により再構築され、
新たなる秩序「仏導文明」が芽吹き始めた頃。
宇宙の彼方、
“法も魔も通じぬ混沌”――**《カオス界》**が覚醒した。
そこに棲むのは、神すら食らう存在。
その存在が次元を食い破り、
ついに仏導界へと侵攻を始める。
仏を中心とした新世界政府《仏導議会》が発足。
そこに集う六賢者:
魔導主席:ミア=グランマギカ(全属性魔法)
魂奏者:エレネ=ルーン(霊願法特化)
鉄仏拳僧:ロガン(怒涛法使い)
時渡り:ル=トー(空寂法の達人)
癒しの乙女:マリサ(慈愛法の巫女)
そして仏自身――
だが、会議中に異変が起こる。
宇宙の彼方から、言語を持たぬ侵略波が押し寄せ、
“祈り”そのものが食い破られる。
「これは……祈りも魔法も通じない……?」
仏は決断する。
「祈りの届かぬ場所があるのなら、
そこへ私が座ろう」
人智を超えた仏船《蓮界母艦・マハーカルナ》に乗り、
仏と六賢者はカオス界へと旅立つ。
宇宙に響くのは――
「ナム アミダ ブツ」
それは祈りではなく、
因果すらも穿つ魔法詠唱だった。
カオス界。そこは法則のない次元の“泡”。
無重力、無音、無存在。
空間すら不定形で、存在していること自体が破壊される。
仏以外の者たちは精神崩壊寸前。
その中、仏は“悟りの結界”を展開。
周囲に“存在可能領域”を創り出す。
「法なき世界には、法を与えよう。
それが、仏の魔法」
彼の魔法により、空間が安定。
賢者たちも活動可能に。
彼方に浮かぶ虚無の王座から、
カオス界の主、《アビス=クル》が姿を現す。
言葉はなく、声もなく、
ただ“無”そのものとして降臨。
彼の周囲では、すべての魔法が発動前に存在を消される。
ミア「魔法が……なにも出ない……!?何も生み出せない!」
その瞬間、仏が立ち上がる。
仏は五つの系統魔法すべてを融合。
「――五智円満・宇宙願仏法、顕現せよ」
姿が変わる。
人間形態ではなく、
巨大な光輪に包まれた宇宙大仏形態へと覚醒。
その額に浮かぶ第五の目が開かれ、
すべての“非存在”に干渉可能となる。
「祈りは存在を越える。
無にも、私は届く」
戦いは世界単位。
惑星が剥がれ、星々が巻き込まれる。
仏は以下を発動:
《大界法・輪廻強制再生》:
敵の存在自体を前世に送り、消去
《空寂法・無限因果遮断》:
相手の行動すべてを「起こらなかったこと」に
《霊願法・記録抹消の祈り》:
アビス=クルの記憶をすべて消去
最終的に、仏は沈黙の中で両手を合わせ、こう告げる。
「ナム……アミダ……ブツ」
宇宙に静寂が走り、
アビス=クルは“存在ごと浄化”された。
カオス界に光が差し、
無法の次元が、“祈りの届く世界”へと生まれ変わる。
仏は静かに座し、
すべての命に、再び祈りの届く時代を築いた。
第六部 完
次回:
『転生したら大仏だった件Ⅶ ―仏導帝国と時の終焉―』
“未来”そのものが消えゆく時、仏は“時間”と向き合う。