第二部:転生したら大仏だった件Ⅱ
旅の途中、リュミエと俺は「魔王の残党」に襲われた。
リュミエは善戦するが、数が多すぎる。
「仏さま、お願い……動いて……!」
その時、俺の体が光に包まれた。
【スキル進化:「輪廻顕現」】
・一定時間、人間形態に変身可能
・人格・戦闘力維持したまま活動
光が収まると、そこには――
「……おいリュミエ。久しぶりに喋るから喉が乾いたぞ。」
20代半ば、金色の髪と仏印の額を持つ青年僧兵が立っていた。
俺だ。
俺は魔王軍を前に、手を合わせて一礼した。
「悪業、ここまで」
【スキル:如来剣・無音斬】
・剣の抜刀音すら無く、音速で斬る
・精神を斬る技
――刹那、全員が無音で倒れた。
リュミエ、唖然。
「仏さま……カッコよすぎ……」
いいだろ、変身ヒーロー大仏!
戦いの裏で、世界各地の魔王たちが目覚め始める。
彼らはかつて「十字架の神」に仕え、
声の力を使う“契約魔法”で世界を支配していた。
「沈黙の神が再臨した?
ふん、なら我らも“騒がしさ”を極めよう」
世界に響き渡る音、音、音――
静けさを取り戻すため、俺とリュミエの旅が加速する。
第四話:神変・天衣無縫
俺は大仏形態と人間形態を任意で切り替えられるようになった。
大仏モード:超広範囲の結界、精神干渉、防御特化
人間モード:機動力・接近戦・言葉による加護
さらに新スキルが発動。
【神変:「天衣無縫」】
・状態によって服装と能力自動最適化
・僧衣 or 軍衣 or 裁きの鎧
リュミエは言う。
「私の魔法と仏さまの変身……最強じゃないですか!」
ああ、最強になってきた実感あるな。
でも、次に出てくる奴はヤバい。
「魔界断崖」にて、かつて世界を滅ぼしかけた
千の魔王たちの魂が解放された。
その中心にいたのは――
「我は“声の王”ノヴァ・ヴォクス。
お前の沈黙、我が響鳴の刃で裂こう」
あの十字架の神の残留意識が、魔王として復活していた。
「貴様が沈黙を語るなら、我は絶叫を以て世界を支配しよう」
対する俺は、合掌し静かに応える。
「沈黙は、消極ではない。意志だ。」
ノヴァ・ヴォクスは、叫ぶたびに人々を狂わせる。
街が、森が、空さえも震えだす。
リュミエは耳を塞ぐが、それでは魔法が使えない。
そのとき、俺は叫ばずに祈った。
【スキル:「静声経」発動】
・対象の精神を“沈める詩”で保護
・仏語は言霊とならず、静謐となる
リュミエの耳に、やさしい沈黙が響く。
「仏さまの……声にならない声……私、聞こえる……!」
魔王軍との決戦。
空には音の兵器、地には叫ぶ悪魔。
俺は人間形態で突撃し、ピンチには巨大大仏に変身。
「千の声よ、千の沈黙で応えよう――」
【最終奥義:無量光明音刹陣】
・全音波を無力化
・敵の意識を静謐へ導く極大結界
戦場が静寂に包まれ、敵も味方も立ち尽くす。
そこに俺の言葉が響いた。
「戦いよ、静まれ。怒りよ、沈め。」
リュミエは俺に問う。
「仏さま、あなたはなぜ沈黙で語ろうとするの?」
俺は一瞬黙り、そしてこう言った。
「静けさの中にしか、本当の声はないからだ」
彼女は泣いた。
彼女の心にはもう、騒がしい世界はなかった。
「私は、あなたの沈黙を信じます」
第二部・完
――次回『転生したら大仏だった件Ⅲ ~無音世界の創造者~』へ続く