第8部・第4話『プロト=エル、創神核展開』
輪廻界の空が、軋むように震えた。
それは神の核心――**創神核**が展開された合図。
プロト=エルの背後に、十二層の黄金螺旋が広がる。
『創造命令、全開放──世界定義再構築。
存在階層、第零因果階へ突入』
それは“この世界ができる前”の構造を呼び戻す禁忌の技。
存在するすべてのものを因果以前へと巻き戻す、神の奥義。
大地は消え、空は反転し、時間すら凍結する。
輪廻界そのものが、仏とプロト=エルの意識空間へと変貌していく。
『我が定義に従え、大仏。
そなたの存在も、我が設計の延長にすぎぬ』
仏は静かに微笑んだ。
「ならば、設計を“超えた”者がいるという事実は、
お前の失敗を意味する」
言い終えるやいなや、仏の足元に光が集まる。
詠唱はない。魔法陣すら描かない。
ただ――彼がそこに「在る」ことが、術式を成立させていた。
「《無相・五輪転界》」
五属性の魔力が螺旋を描き、
世界そのものを再構築する力が炸裂。
プロト=エルの創神核が歪む。
『……この魔術、理論外……!』
無詠唱。無詠式。無媒体。
それはもはや“魔術”の枠組みを逸脱していた。
仏は説明すらしない。ただ、座したまま世界を書き換える。
輪廻界が光に満たされる中、仏の意識はさらに奥へと沈んでいった。
彼が見ているのは、プロト=エルの神核ではない。
そのさらに奥にある、**“創神たちの設計者”**の痕跡。
「プロト=エル。貴様すら……操られし側だな」
その言葉に、神が初めて――“恐怖”を見せた。
『我ら創られし神々に、“創ったもの”が……さらに、いると……?』
仏は目を開けた。
その瞳には、宇宙の深淵が揺らめいている。
「いる。今なお眠るその存在が、この崩壊を“導いて”いる」
その名は、まだ語られぬ。
だが、仏は確かに感じていた。
この神々の帰還は、すべて“誰かの意志”によるもの。
戦いのスケールは、さらに次元を超えてゆく。
次回、創神核崩壊。そして、“最初の仏”の影が揺れる。
次回:第5話『始まりの仏 ― 阿耨多羅三藐三菩提 ―』