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Karmafloria(カルマフロリア)  作者: 十六夜 優
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第87話 輪廻のカケラ



「……今日は、お前たちに客が来ている」


 夜の食堂。


 張り詰めた空気の中、ダイがそう告げた。


 兵士に目配せをする。


 扉が開いた。


「……随分な扱いね」


 紫がかった黒髪を揺らしながら、カインが入室する。

 その後ろに、苦笑いを浮かべたデントが続いた。


「元勇者パーティーが二人揃って魔界の王都に来たんだ。そりゃ警戒もされるさ」


「器が小さいわね。助けに来てあげたっていうのに」


 軽口を交わしながらも、カインの視線はまっすぐシアとカグヤへ向いていた。


 そして、唐突に言う。


「今日はね、アンタたち二人の力について話しに来たのよ」


 食堂の空気が変わる。


 シアとカグヤが同時に顔を上げる。


「……俺たちの?」


「ええ」


 カインは一歩前に出る。


「シア。アンタの“創造”」


 次にカグヤを見る。


「そしてカグヤ。アンタの“破壊”——いえ、今はもう違うわね」


 カグヤの瞳が細くなる。


「アンタたちの力は、ただの戦闘能力じゃない。世界の構造そのものに触れている可能性がある」


 デントが腕を組む。


「だからわざわざ魔界まで来たってわけだ」


 カインは懐から一冊の古びた本を取り出した。


 擦り切れた革表紙。

 金の箔押しの題名。


 ――はじまりの神々。


「アンタたちも知ってるでしょう?」


 本を開き、静かな声で語り始める。


「神々が世界を創り、役割に見合った力を与えた。鳥には翼、魚には鰓。生き物は役割を受け入れ、それぞれの場所で生きた」


 一度視線を上げる。


「ここまでは、この世界に生きている人間や魔族なら誰でも知っている“お話”」


 ページをめくる音だけが響く。


「でもね、ここからが重要なの」


 カインの声が低くなる。


「神々は“役割を与えた”のではない。生き物が選んだ役割に見合った力を与えた——そう解釈されている」


 シアが息を呑む。


「選んだ……?」


「ええ。受け入れることは順調の証。でも同時に停滞でもあった」


 そして。


「そこで神々は、同じ役割を持つ存在に、あえて違う力を与えた」


「……人間と魔族」


 デントが言う。


「その通り」


 カインは本を閉じた。


「停戦後、何が起きている?」


 シアが答える。


「……魔法が停滞している気がします」


「それもあるわ」


 カインは頷く。


「でも重要なのは——」


「ミギドだろ」


 カグヤが言う。


「ええ」


 カインの目が鋭くなる。


「今回のは戦争の再来じゃない。神々の構図の再現よ」


 そして、改めてシアを見る。


「ミギドはアンタに言ったでしょう。“生成”と」


 シアの拳が震える。


「創造の一段上にある可能性がある力」


 ダイが険しい顔をする。


「なぜその名を、あいつが知っている」


「欲しているからよ」


 カインは即答する。


「シア。アンタの力は“器を作り替える力”になり得る」


 視線がカグヤへ移る。


「カグヤ。アンタは破壊の延長線上にある力が収束し、“消滅”に至っている」


 静寂。


「破壊より一段上。存在を断ち切る力」


 エリスが小さく息を呑む。


「ミギドは分配」


 カインは続ける。


「分け与える力。でも次の段階があるとしたら?」


 ユキの胸が強く締め付けられる。


(流れ……)


「……神にでもなろうとしてるのか?」


 カグヤが低く呟く。


 カインは静かに答える。


「神の座を、再現しようとしている」


 重い沈黙が落ちる。


「生成で器を作り替え、分配で力を与え、消滅で統制する」


「管理された世界」


 エリスが呟く。


「ええ」


 カインは頷く。


「だからアンタたちの力について、今のうちに伝えに来たの」


「これはただの戦いじゃない。世界の構造に関わる話よ」


 シアは拳を握り締める。


 カグヤも視線を落とす。


 ユキは俯いたまま、胸の鼓動を抑えられずにいた。


 神々の影が、確かにこの世界に落ち始めている。


ご一読いただきありがとうございました。

誤字などございましたらコメント等含めて教えていただけると幸いです。

よろしくお願い致します

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