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Karmafloria(カルマフロリア)  作者: 十六夜 優
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第85話 兆候



 簡易の会議室には、重い沈黙が落ちていた。


 誰もが分かっている。

 ここで語られることは、これまでの推測ではなく――現実だ。


 最初に口を開いたのは、カグヤだった。


「……ミギドに会った」


 その一言で、空気が張り詰める。


 ダイが視線を向ける。

 ユキは小さく息を呑み、シアは黙って続きを待った。


「やつは、はっきり言ったよ。

 蝶の力を使って、望んだ運命を与える世界を作る、とな」


「運命を……与える?」


 ダイが眉をひそめる。


「そんなことをすれば、耐えきれない者が必ず出る。

 犠牲が増えるだけだ」


 カグヤは静かに頷いた。


「ああ。

 だからこそ、器を作り替える力が必要だと言っていた」


 その言葉に、会議室の視線が一斉に――シアへ向く。


「……まさか」


 ユキの声が震える。


 カグヤは目を伏せ、低く続けた。


「そういうことだろうな。

 シアの“生成”……ミギドが欲しているのは、あの力だ」


 沈黙。


 シアは何も言えなかった。

 喉が、ひどく乾く。


「だから勧誘した。

 それが叶わなかったから、回収に切り替えた……」


 ダイが深く息を吐く。


「……状況は理解した。

 最優先はシアの保護だ。

 同時に、ミギドを捕らえる」


 拳を握りしめ、言い切る。


「作戦が固まり次第、再度打ち合わせを行う」


「……急いだほうがいい」


 カグヤがぽつりと付け加えた。


「やつは、動いている」


     ◇


 次の日の朝。


 王都に、警報が鳴り響いた。


「魔獣発生!

 スタンピードの可能性あり!」


 兵士たちの叫びに、シアは跳ね起きた。


 駐屯地前には、すでに人が集まっている。

 ダイが前に立ち、短く指示を飛ばした。


「状況が状況だ。

 作戦は未確定だが、動くしかない」


 一人ひとりを見渡す。


「カグヤ、前衛に合流。

 ユキはカグヤの支援。

 エリスは後方から回復と解析」


 一瞬、間を置いて――


「シアは後方支援だ」


 シアの指が、無意識に強く握られた。


「……了解」


 声は出た。

 だが、胸の奥がざらつく。


     ◇


 現場に到着した一行を待っていたのは、奇妙な光景だった。


 兵士たちは集まっている。

 だが――戦闘の形跡がない。


「どうした!?」


 ダイが問い詰める。


 兵士が戸惑いながら答えた。


「それが……

 すでに、討伐されているようでして……」


 視線の先。


 魔獣たちが、地面に倒れていた。


 外傷はない。

 血も、ほとんど流れていない。


 カグヤが一体に触れ、顔を歪める。


「……クソ」


 ダイが、その異変に気づく。


「これは……まさか……」


     ◇


 拠点に戻り、報告が行われた。


「魔獣たちは、兵士たちと同じ状態でした」


 ダイが言葉を選びながら説明する。


「筋肉や関節を、限界以上に動かされた痕跡。

 さらに……」


 拳を握る。


「力そのものを、抜き取られたような状態だ」


 カグヤが続けた。


「おそらくミギドだ。

 あいつの力は分配……

 だが今回は、“奪っている”」


「え……?」


 エリスが目を見開く。


「じゃ、じゃあ……

 あの量の魔獣を全部……?」


 ダイとカグヤが、同時に頷いた。


「……前回の戦闘とは比べものにならない」


 ダイの声が低くなる。


「このまま放置すれば、

 やつは、さらに力を蓄える」


 カグヤが腕を組み、呟いた。


「慎重に……だが、急ぐ必要があるな」


 視線を上げる。


「次も同じことをされれば、

 もう止められなくなる」


 会議室に、再び重い沈黙が落ちた。


 それは、はっきりとした兆候だった。


 ミギドは、確実に力を集めている。


 そしてその先に待つのが――

 何であるかは、誰の目にも明らかだった。

ご一読いただきありがとうございました。

誤字などございましたらコメント等含めて教えていただけると幸いです。

よろしくお願い致します

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