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Karmafloria(カルマフロリア)  作者: 十六夜 優
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第80話 運命を管理する者



 王都の商業区は、昼間から人の波が途切れない。


 ダイが先頭に立ち、シアとユキがその後ろを歩く。

 教会の周辺――かつてガバゼが足繁く通っていた場所だ。


「……隊長さんか」


 露店の商人が、ダイの顔を見るなり声を上げた。


「ガバゼ隊長なら、よく知ってるよ。

 街の揉め事にも顔出してくれてな。面倒見のいい人だった」


 ダイは短く頷く。


「そのガバゼと、一緒にいた人物について聞きたい」


「子供だろ?」


 即答だった。


 シアとユキが同時に顔を上げる。


「やっぱり、いたんですね」


「ああ。黒髪の、ちょっと大人びた子だ。

 隊長はよく名前を呼んでた」


 商人は、少し考えてから続ける。


「……ミギド、だったかな」


 その名前が落ちた瞬間、

 シアの胸の奥で、何かが音を立てて動いた。


 他の店でも話は同じだった。

 ガバゼは子供と一緒にいた。

 名前も、確かにそう呼ばれていた。


「……確定だな」


 ダイが低く呟く。


 その時――

 シアの視界の端に、石造りの建物が映った。


 教会跡地。


 建物そのものは残っている。

 だが、窓には板が打ち付けられ、扉も封鎖されている。


 理由は分からない。

 ただ――


(……何か、引っかかる)


 その感覚だけが、離れなかった。


     ◇


 宿に戻ると、シアはすぐに口を開いた。


「……教会跡地に行きたい」


 ダイは一瞬、目を細める。


「何も残っていないだろう。

 建物は残っていても、中は空だ」


「それでもです」


 シアは視線を逸らさず言った。


「何か……見落としている気がする」


 ダイはしばらく考え込み、やがて息を吐いた。


「分かった。ただし――」


 指を一本立てる。


「教会、まして跡地は王都管理だ。

 無断で立ち入るわけにはいかない」


「……どれくらい?」


「許可が下りるまで、三日だ」


 シアは黙って頷いた。


 だが、違和感は消えなかった。

 時間が経つほど、むしろ強くなる。


     ◇


 三日後。


 許可を得て、三人は教会跡地の前に立っていた。


 扉は軋みを上げながら開く。

 中は、静まり返っていた。


「……誰も、いないな」


 ダイが警戒しながら足を踏み入れる。


 その瞬間――


「遅かったね」


 幼い声が、響いた。


 三人が一斉に振り向く。


 祭壇の影から、一人の少年が姿を現した。

 黒髪で、年の頃は十代前半。


「……誰だ」


 ダイが剣に手をかける。


 少年はくすりと笑った。


「こっちの方が、馴染みがあるかな?」


 少年の姿が、歪む。

 背が伸び、体つきが変わる。


 次の瞬間、そこに立っていたのは――

 見慣れた青年だった。


「……ミサヤ……」


 ユキが、震える声で呟く。


 ミサヤ――否、青年は穏やかに微笑む。


「改めて名乗ろうか。

 僕がミギドだ」


 空気が、凍りついた。


     ◇


「ふざけるな……!」


 最初に切り込んだのは、ダイだった。


「ガバゼを利用し、兵士を操り、

 王都を混乱させておいて……!」


 ミギドは肩をすくめる。


「利用?

 違うな。使われたのは僕の方だ」


 淡々とした声。


「魔物は事故で生まれた。

 でも世界は理由を探さず、

 “悪”を作って終わらせた」


 視線が、シアへ向く。


「研究者は責任を押し付けられ、

 僕は黒幕にされた。

 使うだけ使われてね」


 ミギドは、ゆっくりと言葉を重ねる。


「だから決めた。

 運命は管理されるべきだって」


 ユキの喉が、ひくりと鳴る。


「僕が管理する。

 力を、平等に分け与える」


 ミギドは、静かに語る。


「やりたいことをやれる運命を与える。

 偶然や神の気まぐれじゃない」


「そのために、蝶を従えた。

 運命を求める場所に、力を運ぶために」


 言葉が、正論のように響く。


 ユキは、唇を噛んだ。


 ――もし、それが本当なら。

 救われる人は、確かにいる。


「君たちなら分かるだろう?」


 ミギドが、シアとユキを見る。


「シア。

 運命を奪われ、それでも進んできた」


「ユキ。

 選ばれず、それでも努力でここまで来た」


 その言葉に、ユキの胸が締め付けられる。


(……間違ってる)


 そう思う。

 でも――


(……でも)


「一緒に来ないか」


 ミギドは、微笑んだ。


「世界を変えよう」


 沈黙。


 ユキは俯いたまま、動けなかった。


「……やり方が、間違ってるだろ」


 シアが、低く言った。


「誰かが管理する世界なんて――」


 ミギドは、残念そうに首を振る。


「そうか。

 なら――奪うしかない」


 その瞬間、空気が爆ぜた。


 ミギドの魔力が、解き放たれる。


「来い。

 君たちの運命を、回収する」


 戦闘が、始まった。


投稿遅くなり申し訳あひません、、、

今後もまだまだつづきます!

最低でも週一更新します!


ご一読いただきありがとうございました。

誤字などございましたらコメント等含めて教えていただけると幸いです。

よろしくお願い致します

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