第7話:暴走の代償
カインの前に立つ三人。
再戦の時が来た。
「条件は前と同じ。アタシに“一撃”入れたら、全員で旅に出るのを許してあげるわ」
そう言って、カインは軽くローブを払っただけなのに、空気が張り詰めた。
「行こう、ユキ、エリス!」
「ええ、手加減しないわよ!」
「うん、全力で!」
三人は息を合わせて突撃。
エリスが風で奇襲をかけ、ユキが氷の足場で一気に距離を詰め、シアが正面から突く。
これまでの訓練の成果が見えていた──が。
「まだまだ甘いわよ、坊やたち」
次の瞬間、地面が隆起し、カインの魔力が一気に炸裂。
三人の魔法がすべてかき消された。
「うそっ……!? 今回は、連携だって上手くいったのに!」
「……やっぱり、すごい……!」
ユキとエリスが動けなくなり、最後に残ったのはシア一人。
カインが手を緩めないのは、それだけ彼に“見えない不安”があるから。
「もうやめ──」
シアが叫ぼうとした、そのとき。
──また、会えたね。
頭の奥に、声が響いた。
ユキに似た声。けれど、どこか冷たい。
──力が欲しいんでしょ?
──君を、護るために。
「……やめろ……僕の、力じゃない……」
──違うよ、これは“君の中にある”力だよ。
次の瞬間、シアの身体が黒い光に包まれた。
銀髪が揺らぎ、紅い瞳が輝きを失い、禍々しく染まっていく。
「シア……?」
「こいつ、魔力が……暴走してる!?」
シアの中で何かが解き放たれた。
地面が砕け、空気が震え、全属性の魔法が一度に噴き出す。
炎、雷、風、氷、闇、光──全てが暴走し、渦を巻く。
「……ッ、シア! 落ち着いて!!」
カインが手を出そうとしたその時。
エリスが叫んだ。
「駄目! 今のシアに下手に触れたら……!」
魔力がさらに膨張する。
ユキが、恐る恐る近づきながら叫ぶ。
「お願い……戻ってきて……! あんたがいなきゃ……ダメなの!」
──その声に、ふと影が揺らぐ。
シアの中の“何か”が、一瞬だけ止まった。
「……僕は……僕の力で……」
歯を食いしばり、シアは自分自身を押さえ込む。
爆発寸前の魔力を、意志の力で無理やり封じ込め──
「が……ッ」
膝をつき、そのまま気を失った。
静まり返る訓練場。
立ち尽くすユキとエリスに、カインがぽつりと呟く。
「……とんでもない子ね、まったく……」
その夜。
カインは一人、闇の中で空を見上げていた。
「ユキの中に“それ”がいると思ってたけど……違うわね。
……よりによって、シアに移ったのかしら……?」
小さく、だけど確かに震える声。
「面倒なことになったわね……」
カインの眼差しの先には、気絶したまま眠る少年──シア。
その胸の奥に、まだ蠢く“影”が潜んでいた。
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