表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Karmafloria(カルマフロリア)  作者: 十六夜 優
50/81

第46話 迫りくる影



 スタンピード現場へ向かう道は、夜に沈みかけた空の下で不気味なほど静かだった。

 湿った風が木々を震わせ、遠くで魔獣の咆哮がこだまする。


「……そろそろ話しておくか」


 列の先頭を歩く分隊長ダイが、肩に担いだ巨大な斧を軽く叩きながら口を開いた。


「魔族はな、全部が全部“人間嫌い”ってわけじゃねぇ。ざっくり言えば――穏健派と過激派、二つの派閥がある」


 後ろから歩いていたシアが目を上げる。


「穏健派……過激派?」


「ああ。俺は穏健派だ。人間との和平を望む側だな。だが――」


 ダイはわざとらしく肩をすくめた。


「ガバゼ隊長は過激派の筆頭だ。ここ数年で勢力を一気に伸ばしてよ。ま、あれだけの武功があれば当然っちゃ当然だがな」


 その名を聞いた瞬間、後ろで歩いていたカグヤがわずかに表情を曇らせた。


「過激派が力をつけている……ってことですか?」


「そうなるな」

 ダイは低く唸るように続けた。

「お前らがこれから行くアンゲールは、珍しい“穏健派の村”だ。人間界にも近くて、商業も発達してる。過激派からしたら喉から手が出るほど欲しい土地ってわけよ」


「そんなところにガバゼさんが駐屯しているのは……」

 シアが言いかけたところで、ダイが重く頷いた。


「察しがいいな。あの隊長なら……何かしらやる可能性がある。今の魔界は、それぐらい不安定だ」


 空気が静まり返る。

 その瞬間――シアは、背後にゾクリとした気配を感じ振り返った。


 だが。


 何もいない。


 ただ、風が枝葉を揺らすだけ。


(……気のせい、じゃない。でも……)


 シアが訝しげに目を細めると、カグヤも同じ方向をちらりと見たが、すぐに視線を前へ戻した。


 ◆ ◆ ◆


 軍本隊へ近づくと、轟音と共に戦場の気配が押し寄せてきた。


 魔族兵たちが必死に防衛ラインを維持し、黒い影――大量の魔獣が前線を押し潰そうとしていた。


「くそっ、押しきれねぇ――ッ!」


「隊長まだか!?」


 悲鳴に近い叫びが飛ぶ。


 その刹那、


「どけぇぇぇええええッ!!」


 ダイが前へ飛び出し、巨大な斧を思い切り横薙ぎにした。


 風が爆ぜ、斧の軌道に沿って木々が揺れ、

 黒い魔獣たちの群れが――まとめて吹き飛んだ。


 周囲の兵が目を丸くする。


「分隊長……すげぇ……」


「バケモンかよ……!」


 ダイは斧を肩に担ぎ、豪快に笑った。


「道ぁ開いたぞ! 行くぜガキ共!!」


「はいっ!!」


 シア、ユキ、エリス、カグヤが一斉に前へと走り込んだ。


 シアは迫りくる魔獣を斬り伏せ、一歩、また一歩と陣地を押し返す。


「やるじゃねぇの、シア!」


「ダイさんほどじゃないですよ!」


 シアが軽口を返したその瞬間――


「シア、右!!」


 ユキの鋭い声。

 シアの死角から魔獣が牙を剥いて突撃していた。


 ユキは素早く魔法を展開し、魔獣を瞬時に氷結させる。


「油断しない!」


「ご、ごめん!」


 その後ろでダイが肩を震わせながら笑う。


「おーこわ! あの子は怒らせねぇ方がいいな!」


 それでも斧の勢いは落ちることなく、

 ダイはシアたちに並んで魔獣を次々に薙ぎ倒していく。


 夜の森が轟音と魔力光で満たされ、

 戦場は混乱と熱気の渦へと変わっていった。


 ――ただ一つ、誰も気づかない。


 闇の奥で、

 シアたちを「観察するように」漂う微かな殺気だけが、

 確かにそこに存在していたことに。


ご一読いただきありがとうございました。

誤字などございましたらコメント等含めて教えていただけると幸いです。

よろしくお願い致します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ