免許返納しろ!運転やめちまえクソジジイ!
コンビニから出てくると車がボコボコになっていた。
誰だよ!くそぉ!
おーっと!てめぇか!この野郎!ナヨナヨしてムカつく顔だな。
「おいっ!どうしてくれるんだぁ!」
「いやいやいや!あのぅ……ふがふが」
ああ。自慢のセレナが傷物に。
分かった。こいつは免許を持っていてはいけない人間だ。
運転の才能が無い奴は免許を持つべきじゃない。
こいつに免許返納させる事で救われる命があるはずだ。
「はぁ。はぁ。そうですかねぇ〜?よく分かりませぇん」
結構強めに叱ったのだが、のらりくらりと躱された。
こいつ。耳が遠いのか?
もしかして薬とかやってる?
「はいはいはい。どいてね〜」
おお。やっと警察が来たか。
最近の警官は白衣とか着るのか?
「私のセレナが!」
「ワシのじゃ!」
「駄目だ。興奮してらぁ。薬。薬っと」
「おい。なんだその薬は!やめろ打つな!」
「とりあえずコンビニに突っ込んだ罪で現行犯逮捕ね」
「あれ?ワシは?ワシは?」
ああそうか。ワシは73歳。ワシは痴呆症。ワシは入院患者。ワシは職員の車を盗んだ。ワシはコンビニに突っ込んだ。
薬が効いてる間は脳みそが冴える。
「……」
若者がワシを見ている。
何か言わなくては。
「すまんな」
「免許返納しろっ!運転やめちまえクソジジイ!」