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親友に彼氏が奪われる件〈高校時代 アヤ〉

前回の、カノンとアヤの過去の出来事───

 高校2年で初めて同じクラスになったのだけど、その前から彼女のことは知ってた。



 カノンは入学当初から目立ってたから。弓道部にすごくかわいい子がいるって噂になっていた。


 彼女がいる1年E組に、クラスの男子たちがこぞって見に行く相談してるの聞いた。


 私は流石にそこまでの興味はなかったけど、すぐに彼女を知る機会は訪れた。



 私は陸上部だったけど、外水道の近くで弓道部の新入生が集まってるのを見かけて、その時初めて彼女を見た。


 集団の中でひときわ人目を惹きつける、袴姿の清楚な乙女。すぐに直感で分かった。あの子が噂のカノンって子だって。



 ***



 2年進級時の大きな分かれ道。文系と理系。


 私は理数系が得意だから理系にしたけど、やっぱ理系は少数派。


 理系は8クラス中、2クラス。さらに理系を取った女子はさらに少数派で、それぞれ7人づつしかいない。だから必然的と女子はお互いに親しくなる。私はカノンと特に仲良くなった。


 カノンは中身は至って普通の子だった。決してギャル寄りじゃ無かったし、どちらかと言えば大人しいくらい。自分が目立つことも嫌ってた。


 礼儀作法に厳しい弓道部に入っていただけあって、スカートも短く折ってなんていないし、ノーメイク。それなのに、アイプチしてメイク頑張ってるオシャレなイケイケな子たちも叶わない天然の美貌を持ってる。


 それなのに、カノンは彼氏も作らず私と仲良く過ごしてた。すごくモテてるはずなのに。


 彼女と過ごす高校生活はすごく快適で楽しかった。


 こんなに可愛いカノンの隣にいられることは私にとっては名誉なことだったし、実際、私は彼女といることによって、クラスでの立ち位置も誰も触れられない特殊な位置に置かれた。カノンはこのクラスの女神だったから。


 それくらいカノンは天然のまま可愛いの。普通レベルの顔がいくらメイクしたって張り合えるレベルじゃない。加工写真の美少女だって無理だと思う。だって、ああいうのって不自然さは否めない。


 彼女は写真よりも実物の方が映えてる本物。


 彼女の瞳にじっと見つめられたら、同じ女子だって緊張してしまうよ。男子だったらなおさらね。


 だからカノンと仲良しの私は、イケイケギャル2人組を含むウェーイ系男子グループの彼らにもうざ絡みされなくて済んで、快適な生活が出来てた。


 カノンと私の関係に変化があったのは6月の終わり頃。私に陸上部の先輩の彼氏が出来て、申し訳なかったけど、カノンとの付き合いより彼氏といることを優先させた。だって、初めて出来た彼氏だったから嬉しくて。


 だけど、それはあっという間に終わってしまった。なぜって、私は付き合い始めてほんの3週間で先輩にフラれてしまったから。先輩、他に好きな子が出来たって。


 私はすごくショックで、カノンにすごく慰めて貰ってなんとか立ち直ったんだけど、夏休み前にそれはとんだ茶番だったと知った。


 だって、先輩の好きな人はカノンだったんだもの。



 同じ陸上部の繋がりで、情報が流れて来たの。先輩がカノンとのツーショット写真を友だちに見せたらしい。俺の彼女だって。


 私はまさかと思ったけど、カノンに確かめずにはいられなかった。


「アヤ、私は頼まれて一緒に写真を撮っただけだよ? だって、カノンの陸上部の先輩だって言うから断われなくて。高校時代の思い出作りのためにいろんな人と記念写真撮ってるからお願いしますって。私は嫌だったけど、SNSにも上げないって約束してくれたし、アヤの繋がりならって受けたの。その時はその人がアヤと付き合ってるなんて知らなかったし」


「‥‥でも先輩、カノンが彼女だって言ってるみたいだけど?」


「私が彼女っていうのは嘘だよ。そういう人、今までも何人かいたの。私と付き合ってるって勝手に周りに言う妄想系の男子。アヤには申し訳ないけど、きっとアヤの元カレは軽い人だったんだよ。そんな人とはすぐに切れて良かったんだよ? 私を信じてくれないの? だとしたら悲しい。私‥‥アヤのことこんなに大好きなのに‥‥クスン」


 私はすっかりカノンを信じた。その天使のような美しい涙顔を向けられたせいで。


 だけど半年後、私に同級の他のクラスの新しい彼氏が出来たら、また同じようなことが起こった。『俺には忘れられない人がいて、やっぱりアヤとは付き合えない。本当にゴメン。なんなら俺を一発殴ってくれてもいい』と彼に頭を下げられた。


 その後、誰かに耳打ちされたのは、その相手はカノンだって。



「誤解だよ? 私が大切なアヤの彼氏を奪うなんてあるわけない。私はこんなにアヤが大好きなんだよ? ひどいこと言わないで。私にはアヤがいないとダメなの‥‥」


 ほんと、美しい顔って素晴らしいの。これは人間の(さが)なのかな? そんなきれいな顔で否定して(すが)られたら、女の私だって何も言えなくなってしまう‥‥‥


 私にとってもカノンは大切な親友だったし。



 学校の行事でもプライベートでも、カノンとの楽しい思い出が増えていった。彼氏がいなくても、充実した生活が過ぎていく。



 そして、私たちはクラス持ち上がりのまま3年になった。


 

 ***



 私は夏休み、同じ塾に通う他の高校の男子と仲良くなった。すごく気が合って、図書館で一緒に勉強もするようになった。お互い受験生だし告白は控えていたけれど、私たちは両思いだったと思う。


 なのに───


 塾の午前中の夏期講習の授業が終わった時だった。午後は今日も2人で図書館へ行くと思ってた。


「ゴメン。僕、彼女が出来て。彼女に誤解されるの困るし、アヤと二人で図書館へはもう行けなくなった」



 ───どういうこと? 私たち、告白はしてないけど、付き合ってると同然だと思ってたのに。私の独りよがりだったの?



 私はそんな思いを飲み込んで、ニヤニヤしながら冷やかすように脇を肘でつついた。本当は泣きたいくらいだったのに。


「ふうん、彼女が出来て良かったじゃない。どんな子なの? 佐々木の彼女って興味あるなぁ〜」



 おかしくない? 私が彼氏を見つけると、みんな一ヶ月と経たず私から離れて行く。しかも、3人とも好きな人やら彼女が出来たって言って───? いくらなんでも変だよ‥‥‥


「うん、彼女とは、図書館からの帰り道で偶然出会ったんだよねー。スマホで英文法演習しながら歩いてたら、うっかりぶつかってしまったのが彼女だったんだ。僕のせいで彼女がバッグを落として中身が散らばってしまって。‥‥写真見る?」


「うん。見たい、見たい!」


 どうやらこの人は誰かに見せたくてたまらないらしい。自ら見せるなんて、余程マウントになる彼女ってことだ‥‥‥


 嫌な予感しかしない。


「あはは、ちょっと恥ずいな。この子なんだけど‥‥」


 頬を赤らめながら見せられたのは、私の親友とのツーショット。天然の美少女と笑顔の自撮り───



「‥‥か、かわいいねー。じゃ‥‥彼女によろしくね。サヨナラ、佐々木」


 やっとのことでそれだけ言えた。


 私は涙をこらえて逃げるようにその場を去った。



 ***



 カノンは相変わらず、すっとぼけた。だけど、私はもう騙されない。カノンの見る私の目には、怒りの炎が浮かんでるはず。


「どういうつもりなのッ!? 今まで私に彼氏が出来る度に、陰で壊して回ってたんでしょッ!!」


「‥‥そうじゃないの。怒らないで。誤解だよ? 私、アヤのこと大好きなんだよ?」


 可憐な涙顔で相変わらずの泣き落し。やってらんない! 信じないし許さないッ!!



 それから私はカノンとは距離を取った。



 カノンは私の拒絶にあい、今度は大人しい女子二人組の中に入った。


 彼女らはカノンを快く迎え入れてクスクス楽しげにお喋りしてる。


 私と離れたからって、やはりカノンは男子からチヤホヤされていたし、それは男性担任からも同様で、ノーダメージ。


 寂しくなったのは私の方だけ。


 今までクラスの中ではカノンの七光りの下、楽しく過ごせていただけなんだもの。ギャル2人組にからかわれ、軽く嫌味なことを言われるようになった。



 元々成績も上位を保っていたカノンは、相応の私大に早々に推薦合格を決めた。


 私は看護学部のある私大に自己推薦で合格し、私たちは別々の道を歩むことになった。



 ───カノンとの繋がりはそこで終わるはずだったけれど。


 卒業式の後でカノンに言われた。


「信じてくれないみたいだけど、私は本当にアヤのことが大好きなんだよ? 今だって。だから、私はアカウント変えないから、このままSNSは相互フォローしておいてね。そして落ち着いたらまた連絡してくれないかな?」



 なんて図太い神経してるのかしら? いいわ、あんたがそう言うなら次回会う時は、それ相当のお返ししてあげる───



「‥‥‥私がカノンを許せる日が来るとは思わないけれど、あんたがそう言うならそうしとく」


 私だって、消せないよ。あんたは憎いけれど、でも私のアカウントにだって楽しかった高校生活の思い出だってたくさん詰まってるし。二度と戻らないキラキラした青春の欠片だもの。



 ***



 あの子は周りを自在に操るサイコパス美少女───



 私は大学に入学してからも、カノンの動向をずっとネット上で見張ってた。


 あの時の仕返しするために。



 そしてチャンスを見つけた。


 秋の学園祭において、カノンに恥をかかせる計画を立て、あの子を私のキャンパスに招待したの。



 アハハッ、それは大成功だったみたいよ? カノンの彼氏には、とばっちりで申し訳なかったけれど、あの子の真っ赤な顔ったら。





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