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 用を足し、安定性の高い枝の根元まで戻ってきた僕…しかし、この時、枝の根元に戻ってきた事もあり、つい僕は油断してしまった。


『ズルッ』


 木の枝の表面に生えていた苔に足を取られ、滑ってしまったのだ。

 幸いにも枝の根元だった為、眼の前の木にしがみ付く事で、転ける事もなく怪我もなかった。

 だが、この瞬間、最大のピンチを迎える事となる。


『ガッ』


 何かが足に触れる感覚がした。

 そして、『ドサッ』っと言う音と共に、下で待機していた狼達が急に騒ぎ出す。


 何事かと、態勢を整えて見た僕は絶望を感じた。


 先程、僕の足に当たり落下し、僕に絶望を与えた物…すなわち、僕のリュックである。

 あの中には、食料だけでなく水筒も入っている。

 それが今、僕の目の前で狼達に蹂躙(じゅうりん)されているのだ。


 破られる生地…そして、中から周囲に飛び出すパンと干し肉、そして水筒。

 パンをガリガリと咀嚼(そしゃく)する音、干し肉を奪い合う狼。

 水筒の筒を咥え振り回す狼…そして、口を離した…。


『バカッ』


 勢いよく飛んでいった水筒は、近くの木に当たると割れ、中の水が溢れ出す。

 先程、水筒を振り回していた狼は、その水を美味しそうに、ペロペロと飲み始める。

 どうやら、ただ遊んでいたのではなく、水が入っているのを分かった上で、水筒を破壊した様だ。


「え?ちょっと待って…つまり、こいつら、それを実行するだけの知識があるって事?

 いやいやいや、それだと降りれずに詰んでるじゃん!」


 当たり前な話だが、目の前に餌があるのに、離れる狼などいないだろう。

 もっとも、脅威となる存在が現れれば話は別だが、その場合、別の問題が発生するので、どちらが良いのか判断出来ない。

 何にせよ、現状、食料も飲み物も失った事で、僕は命の危険が加速度的に上がったのだけは分かったのだった…。



 リュック落下(アレ)から、どれだけの時間が経ったのだろうか…。

 だが、それを知ろうにもそれを知る術はない。

 実は、城を追い出されてすぐに『スマホ』を見た事があった。

 まぁ、電波が届かないのは当然だが、問題は電池の残量…情けない事に、前日に充電をし忘れていた事もあり、残量は10%程だった。

 その後も、何度か時間を確認していた事もあり、森に入る頃には充電切れを起こしており、ただの板に成り果てていた。


 みんな知ってる?携帯って電波が届かないと、充電の減りって早いんだよ?

 思った以上にガンガン減っていく電池残量に、焦りを覚えた事を思い出す。


 いや、それだけじゃない…昨日食べた、モックの…あの安っぽいフライドポテトや、近所のそこそこ美味いラーメン、他にも色々な食べ物…。

 そして、家族の顔が頭をよぎる…みんな元気かな…。

 まだ、一日も経っていないのに、何故か懐かしく感じるから不思議だ。


「って、コレ、走馬灯ッ!?」


 木の上に居るだけの状態ではあるが、もう疲れ果ててヘトヘトな状態。

 そりゃ、命の危険だけでなく食料もなく飲み物もない状態なのでストレスも半端ないのは分かるが、走馬灯が見えるのは、マジでヤバイ…。

 その中でも、水分摂取が出来ないのがヤバいのが分かる。


 慌てて身体を起こしたのあるだろうが、手足の痺れに軽い頭痛…熱中症とか脱水症の症状だ。

 このままだと本気で死んでしまう…だが、手元にはそれらを回避する物は一切ない。

 しかも、眼下にはまだ諦めないのか、狼達がいる。


「くそー!飲み物がほしいッ!!」


 残る力を全て込めるかの様に声を張り上げる。

 そんな願いが届いたのか、奇跡が起きた。


【命の危険により救済処置として、スキル:レプリカが『無条件(・・・)』で発動します。】


 突如として頭の中に聞こえた声…そして、目の前に現れたのは、街で見かけた『魔法の水筒』?

 『?』が付いてるのには理由(わけ)がある。

 と、言うのも、街で見かけた『魔法の水筒』に比べたら作りが雑なのだ。

 それこそ、偽物(パチモノ)と言った方がしっくり来る様な物が、何処からともなく顕れたのだ。


 だが、そんな事は、今はどうでも良い事で…僕は顕れた『魔法の水筒』の蓋を開ける。

 ちゃんと動くか分からないが、『魔法の水筒』を起動させ、コップにもなる蓋に中身を注ぐ。


『トクッ、トクッ、トクッ…。』


 『魔法の水筒』から、透明な液体が出てきた。


「ほ、本当に、これった水だよな?」


 もしかしたら、違う液体かも…と、疑心暗鬼になりながらも、コップに入った液体に顔を近づける。

 うん、匂いはないみたいだ…。


 ならばと、指を軽く液体の中に入れ、急いで引き抜く…。

 特に痺れたり痛みを感じる事もない、コレも大丈夫だな…。


 次に、もう一度、指を液体に漬け、その液体を腕の皮膚に軽く塗る。

 やはり大丈夫…と思いつつ、内心ドキドキしながら時間が経つのを待っている。

 いくら待てども、何も変化は感じない…いや、水分が蒸発して乾いたと言う変化はあった。

 どちらにしろ、皮膚に触れただけでは無害である。


 ならば…と、意を決して、コップに口を付けて、本当に少量だけだけだが、口に含む。

 うん、現状問題ない…。

 そして、僕は『ゴクッ』と飲み込んだのだった…。

拙い作品ではありますが、気に入って頂けたら幸いです。

また、感想や誤字報告等ありましたら、励みになります。

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