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ユメウツツー夢と現実の狭間のデスゲーム  作者: クソラノベ量産機
2/5

一章 日常編

 スレンダーマンからデスゲームを宣告され疑心暗鬼の状態になっている俺達は自身に用意された部屋へと戻り考えを纏める。


「死んだ人間の数……か。」

(願いを叶える為に殺人を犯すなんて間違ってる、けど嫌な予感はするな。 あれ? 机に何かある?)


 最初に起きた時には気付かなかったが、壁には張り紙と机の上にはタブレットが置かれていた。


「何だこれタブレットか?」


 先ずはタブレットを起動すると自分の他にも残り十五人のプロフィールが書かれていた。


「何で黎菜の事まで書かれているんだ? それに高梨が元サッカー部なのも知ってるのか。」


 順番にプロフィールを見てみる、先ずは自分の情報だ。


白井黎斗 身長158cm 帰宅部


高梨蒼太 身長160cm サッカー部


御定真弓 身長156cm 弓道部


黒墨柊生 身長180cm 研修医


色彩輝 身長150cm 科学者


八雲久治 身長165cm オカルトマニア


五条一生 身長170cm サーファー


楠木凛奈 身長160cm 植物学者


高峰写六 身長165cm 探偵


菓子折瑞葉 身長158cm パティシエ


キャロット金剛 身長175cm ダンサー


太巻亮太 身長160cm 美食家


笹原紗々羅 身長145cm セラピスト


東栄御笠 身長155cm 映画研究部


青梗菜 身長170cm 拳法家


汐留環 身長180cm プロボウラー


(あまり詳しくは書かれていないな、名前と身長と部活? プレゼントってコレの事か? てか俺が帰宅部て事まで書くなよ……)


 次に張り紙にめをやると注意事項が書かれていた。


「何々、夜9時以降は消灯時間の為、照明は点きません。 校舎内に忘れ物をした方の為に懐中電灯を引き出しの中に用意しました?」


 机の引き出しを開けると懐中電灯がコロコロと転がり、他に何も無いのが解る。


「何か寂しい机だな、忘れ物なんてする奴居るのか? こんな場所で。」


 疑念を抱いているとドアをノックする音が聴こえ、開けると高梨が立っていた。


「高梨?」


「朝飯の時間だとよ場所は調理実習室みてえだな、俺は先に行ってるから黎斗も早く来いよ。」


 そう言うと高梨は調理実習室へと向かい、暫くすると隣りの部屋から眠そうにしている御定が出て来た。


「ふわ〜、おはよ白井君。」


「おはよう御定さん、今から調理実習室で朝ご飯だって。」


「そうなの? じゃ、一緒に行こっか。」


 調理実習室に着くと中華料理が所狭しと並んでおり、太巻は滝の様な涎を垂らしながら早く食べたそうにしているのを菓子折が睨み付け制御し、他の皆は大人しく座っている。


「もう我慢出来ないっすよ! 白井殿も御定殿も遅いっす、早く席に着いて食べるっすよー!!」


「何だこの量!?」


「わあ〜、凄い! この料理シャオパオさんが作ったの!?」


 机にはチャーハン、中華スープ、麻婆豆腐、焼売に餃子、ピータン、青椒肉絲が並んでいる。


「そうアル、そこの欲しい食材が開ける度に出て来る冷蔵庫から作ったネ。」


「本当に不思議なのです。」


「君達も早く座りなよ、皆待ってたんだ。」


「そうね。」


「それじゃ、いただきまーす!」


 皆で手を合わせいただきますと言うと、鎖から放たれた猛獣の如く太巻は両手を使い料理を口に運んでいく。


「おい汚いな! こっちに飛ばすなブタ!!」


「太巻ちゃん、まだまだ沢山あるんだから落ち着いて食べなさいね?」


「ほんま食い意地の張ったやっちゃな。」


「まだまだあるヨ! 遠慮なくおかわりするネ!!」


 皆で食事する、こんな普通の日常が続けば良いと俺は心の底で願っていた。 だけど、この時は誰も知らなかった……あんな事件が発生するなんて。


「ご馳走様でした。」


「皆よく食べるアルな、ウチも嬉しいヨ。」


「シャオパオさん料理上手いんだな、今度教えてもらおうかな。」


「良いヨ、ウチの武術料理極めればどんな奴もイチコロネ!」


「いや、教えてくれるのは普通の料理で良いから。」


「そうだ! 肝試ししない?」


「肝試し?」


「そう! 学校と言ったら七不思議でしょ? だから親睦を深めるのに良いかなって思ったんだけど……ダメかな?」


「面白そうじゃねえか! なあ黎斗もやるだろ肝試し!!」


「分かったよ、分かったから叩くなって。」


 八雲が立ち上がると肝試しを提案し、高梨も俺の背中を叩きながら面白がって参加する気まんまんのようだ。


「はぅ〜紗々羅、怖いのは苦手なのです。」


「ボキもちょっと……。」


「なんや、怖がりなんか?」


「無理に参加する必要はねえんじゃねえか、アタシもパスだな。」


「楽しそうアルのに。」


「やっぱり、あの張り紙が気になるのよね。 夜の9時以降照明が点かないってやつよ。」


 キャロット金剛の言う様に照明が点かない時間、何が起こっても不思議じゃない、それを危惧した笹原、菓子折、太巻、キャロット金剛の四人は不参加となる。


「暗いから良いのに、それに皆の部屋にも懐中電灯は無いのかな?」


「あの引き出しから出てきたのだな、ちゃんと点くし光源は確保できるぞ。」


 八雲が不安そうに言うと高梨は持って来ていた懐中電灯をカチカチと点けたり消したりする。


「ふむふむ、お化けの代わりに天才科学者のあたしが仕掛けを作ってやるのだ!」


「仕掛けって何を作るんだ?」


「出来てからのお楽しみなのだ、向こうの校舎の二階が科学実験室になっているのだよ。」


「馬鹿馬鹿しい、オレは部屋に戻らせてもらう。」


「おい、高峰も参加するんだろ?」


「悪いがオレもパスだ、まだ調べていない箇所もあるし何より頭を休めたいのでな。」


 そう言い残し高峰は調理実習室から出て行くと後を追うように笹原、菓子折、太巻、キャロット金剛も出る。


「何だよつまんねー奴等だな、俺達だけでも準備しようぜ八雲。」


「そうだね、仕掛けは色彩さんに任せて良いかな?」


「任せるのだ。」


「ねえ、私も色彩さんの手伝いさせてもらっても良いかな?」


「おお、助手と言う奴か! 構わないのだ、早速向かうのだ!」


 御定は色彩と共に科学実験室へと向かい調理実習室から出て行くのを見ながら隣りの校舎とコチラの部屋が丸見えなのに気付く。


「そうだ、確か職員室にゴム紐が有った筈だよ。」


「ゴム紐? そんなの何に使うんだよ?」


「菓子折さんが参加してたら激怒になるの分かってるけど蒟蒻に穴を開けて通せば文化祭にやったお化け屋敷みたいに出来ると思ってね。」


「あー成程な、良いなそれ黒墨に任せるぞ!」


「高梨、本格的にやる気なのか?」


「当たり前だろ、何時でも全力を尽くすのが俺なんだからな! そうだ、黎斗は多目的室に使えそうなのが無いか探してくれよ。」


「アタシも行く、面白そうだしね。」


 俺と汐留さんで多目的室へと向かい、何かないかと探っていると唐突にスレンダーマンが現れる。


「うわっ!?」


「きゃあっ!?」


「ぬわー!!」


「て、何でお前まで驚いてんだよ!」


「いやー、何か面白そうな事してますねー♪」


「お前には関係無いだろ!」


「悲しいなぁ、折角寒い夜の為に多目的室にカイロを用意して差し上げたのに……およよよ。」


「カイロ?」


 棚には大量にカイロの袋が置かれており大きな白い布が何枚か用意されていた。


「そ、カイロです。 ちょっとした衝撃を加える事でこの通り直ぐに温かくなるのですよ!」


「熱っつ!? 熱すぎるだろ!!」


「でしょうね、なんと言っても60度まで上がりますからね〜♪ ばっはは〜い!」


 カイロを手に取りパンと叩くと俺の肌にピトッと着くと高熱で火傷しかけた。


「何なの……、大丈夫?」


「だ、大丈夫だよ……何しに来たんだあいつ、消えたし。」


「それより、この布使えないかな? 両目出せる様にすれば簡易的なオバケの完成だよ。」


「俺達に出来るのはそのくらいかな、直ぐに取り掛かるか。」


「うん。」


 俺は布を広げ頭から被ると汐留さんが赤いチョークで目を出すところに丸を書く。


「こんなもんかな? もう取って良いよ白井君。」


「よっと、鋏は確か職員室にあったな。」


 職員室から鋏を持って来るとマークした箇所を切り抜き簡易的なオバケの衣装が完成する。


「うんうん、良い感じだね。 皆にも見せに行こう、ほら被った被った。」


「分かったよ、てか前がよく見えないんだけど……。」


「大丈夫、アタシがエスコートしてあげるから。」


 オバケの恰好は歩き辛く視界も悪い上に階段を上るのも一苦労だが高身長の汐留の柔らかい部分が当たり恥ずかしく感じる。


「じゃーん、どうかな? これイケてるでしょ?」


「うおー!?」

(黎斗てめえ、役得じゃねえか!?)


「高梨? お前なんか怒ってないか?」


「お、怒ってねえよバーカ!」

(くっそー、そんな良い思い出来るなら俺がオバケ衣装の準備するんだったぜ!!)


「どうしたの高梨君、今度は泣いてる!?」


「なっ、泣いてねえよ! ちくしょう!!」


 前のめりになる汐留さんの胸部が後頭部に深く押し付けられ、居た堪れない気持ちになる。


「あれ? 楠木さんと五条君は?」


「何だよ、会ってないのか? 倉庫に行ったぞ。」


「倉庫に何の用だろ。」


「あ、もしかしたら他にも掃除が必要な場所があるかもだし掃除道具探しかもね。」


「掃除か、俺ちょっと見てくるよ。 汐留さん後お願い。」


 汐留さんにオバケ衣装を渡し倉庫へと足を運ぶとシャオパオが木の棒を持って困っていた。


「ま、まさかこんな事になるなんてネ。」


「シャオパオ、それ普通に分離するさかい気にしんとき。」


「そうよ、デッキブラシはブラシと持ち手で別れる物も有るし落ち込まないで。」


「何があったんだ?」


「白井はんか、何でもないでシャオパオがデッキブラシ壊した言うて暗うなっとるから励まし中や。」


「ほら、これをこうすれば元通りになったでしょ。」


「アイヤー!? なんと凄いマジックネ、楠木は超能力者アル!?」


「違うから。」


 楠木がデッキブラシを元通りにしただけなのにシャオパオは大袈裟に驚き超能力者と勘違いするのを見て手に終え無さを感じた俺はそっと科学実験室へと向かう。


「うわ、何だこの煙!?」


「白井ではないか、あたしの科学力を見に来たのだな。」


「色彩さん凄いよ、雰囲気作りの為に大量の煙の出る液体作るなんてね。」


「ふっふっふ、単なる液体窒素の煙の量を増やしただけなのだ。 後はこの校舎と旧校舎の二階に設置すれば良いのだ。」


「足元どころか霧が発生してるな。」


「うむ、これは調整が必要なのだ。」


「これはこれで雰囲気出てるけど校舎内だと危なくて使え無さそうね。」


「折角作ったのに勿体無いのだ……」


「そうだ! あの倉庫に仕掛けようか、この煙の量なら渡り廊下の雰囲気出すのにピッタリだし。」


「おお、それはナイスアイデアなのだ! この受け皿にこうやって蓋をすれば収まるのだ。」


 色彩はステンレス製の受け皿に蓋をし、暫くすると霧が止んだ。


「これ倉庫の隅に置いておくわね。」


「後は調整したのを二つ用意するのだ。」


 肝試しの雰囲気作りの為の煙が出来た事を高梨に知らせる為に調理実習室へと向かうと黒いカーテンで中が見えない様になっておりドアを開けて入ると何かヌメリ気のある物が頬にペタッと触れる。


「うわあっ! 気持ち悪いな!?」


「ははは、ごめんごめんそんなに驚くとは思わなかったよ。」


「黒墨?」


「うん大成功だね。」


 頬に触れたのはゴム紐で長い定規と蒟蒻を結び釣り竿の様な形になっている物だった。


「後はこれをあの上窓に仕掛けるだけだな!」


「その前に菓子折さんに見つかると怒られるんじゃないか?」


「そうだね、今は蒟蒻は外しておこうか。」


 蒟蒻をゴム紐から外して八雲が食べるのを見て汐留さんが居ないのに気付く。


「あれ? 高梨、汐留さんは?」


「あのオバケ衣装を倉庫に置きに行ってもらってるぜ、ほら引き戸開けて真っ直ぐのとこに金属製の棚合ったろ? 倉庫から衣装着けて飛び出せば皆驚く事間違いなしだぜ!」


「そうだな、万が一階段で飛び出して転げ落ちでもしたら大変だしな。 それで誰がオバケ役やるんだ?」


「勿論この俺だ、ビビって漏らすなよ?」


「漏らす訳無いだろ……。」


「ある程度準備も出来たし、肝試しは明日の夜9時以降になったよ。」


 黒墨は廊下側のカーテンを開けながら言う、肝試しは明日参加者が皆じゃないのはちょっと残念だけどこんな閉鎖空間で楽しく過ごせる様に八雲が提案したんだ。


(何だかワクワクするな、明日の夜が楽しみだ。)


 俺達はある程度明日に備えて準備し終えると部屋へと戻り睡眠を摂り翌日を迎えるが、玄関の投函口に何か新聞の様な物が入っている事に気付く。


「何だ……新聞か?」


 新聞を手に取り開くとそこには様々な事件や自分に関係の有りそうな事が掲載されていた。


「なんだよ……これ…………?」


 “某病院にて行われた脳手術の失敗、大手病院はこの手術を難しい手術だったと隠蔽、未だ患者の意識は戻らず植物状態にて入院中である。 なお、手術を行ったと思われるのは大手病院の院長の息子であり研修医であるもよう。”


「研修医、確か黒墨は研修医だったよな? いや……考え過ぎか黎奈の事とも研修医が黒墨とも書かれてはいないし。」

(まさか、スレンダーマンの言ってたプレゼントってこれか!?)


 他にも放火事件や店舗が潰れた記事などが書かれており、皆と無関係と思えない様な事柄が並んでいる。


「まさか、こんなタイミングでか。」


 ドアを開けて部屋から出ると同時に出たのか高梨の姿があった。


「チッ、あのスレンダー野郎ふざけた事しやがるぜ!」


「高梨、大丈夫か?」


「こっちの台詞だ、あれ黎斗の妹の事だろ?」


「本当の事が書かれてる訳じゃないと思うけど。」


「どうだかな、クソが! 思い当たる事書かれてんのは気味が悪いぜ……」


 そこへ隣りの部屋から顔色の悪い御定が出て来る。


「あ、二人とも起きてたんだ……」


「ああ、御定もか。」


「やっぱり、御定さんもあの記事に掲載されてるのに思い当たる節があるのか?」


 御定は俯きながらこくと頷く、その表情はまるでこの世の終わりとでも言わんばかりに目は泳いでいた。


「チッ、黎斗どうやら俺達だけじゃなさそうだな。」


「それより、何か食べて考えを纏めましょうか。」


「そうだね、ここで立ち尽くしてても……ね。」


 俺達は調理実習室へと向かうと腹の虫を鳴らす太巻と冷蔵庫に手を出せない様に見張る菓子折な姿、それを宥めるキャロット金剛と八雲の姿がある。


「ピギャア! ピギャア! お腹空いたっす、早く何か喰わないと死んじゃうっす!!」


「うっせえぞブタ! 挽肉にしてやろうか!?」


「落ち着いて菓子折ちゃん! 気が立ってるのは解るけども!!」


「そうだよ、あんな新聞信じたらスレンダーマンの思うつぼだよ!!」


「何故シャオパオ殿が居ないっすか!? 朝から見当たらないっすよ!!」


「うっせえぞブタ、あ? てめえらか、良いとこに来たな。」


「どうしたの?」


「実はな、シャオパオが見当たらねえんだよ部屋にも居ねえし他の連中にも捜してもらってんだよ。」


「え!?」


 シャオパオが居ない、新聞の記事と関係があるのだろうか嫌な予感がする。 背筋が凍る様な、額から冷たい汗が伝い手分けしてシャオパオを捜す事になった。


「いったい何処に行ったんだ? ……あれ、何で掃除道具が廊下に落ちてんだ?」


 俺は多目的室の廊下に掃除道具が落ちてるのを拾い上げ、多目的室に入りロッカーを開けようとすると何故か開かない事に違和感を覚え力いっぱい引っ張ってみる。


「硬いな、これならどうだ!」


「や、止めるネ! ウチを安全地帯から引き剥がすのは!!」


「シャオパオ、こんな所に居たのか。」


「その声は黎斗カ? 何でロッカーに隠れてると分かったアル? ロッカーは絶対見つからない仕様じゃ無いアルか?」


「ゲームじゃないんだから見つかったら終わりだろ。」


「アイヤー!? 盲点アル、確かにロッカーに隠れても見つかる話を聴いた事あるネ!!」


「皆心配してたぞ。」


「そうアルか!? 皆に謝らないとネ。」


 無事シャオパオは見つかり皆で朝ご飯を食べるが、その表情は皆浮かなかった。


「…………」


「何だ何だ、皆暗いぜ? あんなもん出鱈目なんだから気にすんなよ、今日は楽しい肝試しするんだからな!」


 口を開いたのは高梨だ、皆の暗い表情を見て彼なりに励ましているようだ。


「そうは言ってもやな、他のは知らへんが心当たりあるんがな……」


「だあもう! 関係あろうが無かろうがスレンダー野郎の悪戯に決まってんだから元気出せよ!!」


「そうですよ! 私が折角夜なべして書いた記事なんだから嘘書いてる訳無いでしょ!!」


「どわあっ!?」


「スレンダーマン!?」


 声を荒げる高梨の隣りに生えてきたかの様にスレンダーマンが床からニュッと姿を現す。


「いやー楽しそうですね、私も混ざっても良いのよ? き・も・だ・め・し♡」


「ふざけんな! 誰がてめえみてえな怪しい奴誘うか!!」


「あら残念、そうそう私からのプレゼントは気に入ってもらえた?」


「プレゼントって記事の事か?」


「おーイエス! 皆さんにコロシアイをしてもらうには、これが一番と思いましてね。 因みに全部真実ですよ、でないと動機になりませんのでねアディオス!!」


「消えたか……」


 嬉々として現れたスレンダーマンは動機と言う名のプレゼントを全員に配布しており、茶化した後は昨日同様に姿を消した。


「ったく、気分が台無しだぜ。」


「黎斗、ウチも肝試しの気分じゃ無くなったネ。 残りの参加者だけで楽しむアル。」


「そうか、無理には誘わねえよ。 気分を害されたのは事実だしな。」

(はぁ……貴重な女性陣が減りやがる、まさかあのスレンダー野郎こうなる事を見越して?)


「大丈夫か高梨、今にも血管が切れそうなくらい浮き出てるぞ?」


「平気だ、絶対あの野郎には邪魔させねえぞ!!」


 何人か調理実習室を後にすると残った者だけで肝試しの話し合いをする。


「さぁてと、先ずは色彩の用意した玉手箱みたいなやつを科学実験室の階段付近と調理実習室の階段近くに設置だな。」


「あの霧が発生するのは既に倉庫に置いてるよ。」


「あの蒟蒻は僕が8時半くらいに設置しておくよ。」


「うむ、あたしは科学実験室で煙の継ぎ足しをするのだ。 御定は調理実習室側を頼むのだ。」


「なんや、放置できんのかいな? 調整したらそんな長く持たなくなったのだ。」


「だから私と色彩さんは、他の人が通り終わった後になるわ。」


「まじかよ、てことは殆ど野郎ばっかじゃねえか!!」


「ま、まあそれなりに楽しい思い出にしようよ。 自分は肝試し好きだしさ。」


「はぁ、なら俺はオバケ役やるよ……」


「何か、一気にやる気無くしてない高梨君?」


 女性陣の殆どが不参加になり落ち込む高梨はオバケ役をかって出るのを見て汐留は明らかに落ち込んでいるのを心配する。


 その日の夜9時、準備の為に早めに校舎に色彩と御定の二人は向かった。 そして、何故かオバケ役の高梨と残された俺達は寮の前でくじ引きをする事になる。


「高梨お前オバケ役じゃなかったか? てか色彩と御定はどうした?」


「先に準備しに行ってもらったよ、俺はお前のくじ引き結果を見届けようと思ってな。」


(何でだよ……)


「じゃ、じゃあ自分の用意した割り箸を引いて同じ番号の人がペアだよ。」


「いっせーの、それ!」


 俺と黒墨、楠木、五条、東栄、汐留が一斉に八雲の手から番号の書かれた割り箸を引き抜く。


「で、黎斗は何番だ?」


「一番だな。」


「アタシも一番だよ。」


「何だよ、お前らデキてんのか? あんまり見せつけんなよ!」


 どうやら俺と汐留さんが一番手らしく、他は黒墨と五条が二番、楠木と東栄が三番になった。


「なんや、男同士なんかいな。」


「別に良いでしょ、ただ調理実習室に行って戻るだけなんだから。」


「あれ、高梨は?」


「あはは、高梨君なら準備するから十分くらい待たせとけよって言って持ち場に向かったよ。 そうそう、皆は懐中電灯は持って来た?」


「無論や、これが無いと暗うて見えないんやろ?」


「うーん、ちょっと寒いわね。」


「確かに冷えるわ、何か無いの?」


「それなら多目的室に有ったカイロ持って来てるよ。」


「それってメチャクチャ熱くなるやつじゃないか!」


「白井君は知ってたみたいだね。」


「スレンダーマンが用意してたのだからね。」


「ええ……。」


 露骨に嫌そうな表情になる二人と八雲の話を聴いていると直ぐに十分が経ち、俺と汐留さんは校舎へと向かい中へと入ると足元には煙が充満しており今にも何か出て来そうな雰囲気を醸し出している。


「な、なんだか怖いね白井君。」


「大丈夫だよ、色彩さんの演出だし脅かしに来るだけで身構えてれば何とかなるよ。」


「頼もしいね白井君。」


「次は渡り廊下だな。」

(あれ? おかしいな、何で出て来ないんだ?)


「どうしたの?」


「いや、ちょっとな……高梨? 出番だぞ!」


「返事が無いね。」


「高梨、開かない?」


「きゃあっ!? 白井君あれ!!」


 何気に汐留さんは怖がりらしく高い身長で俺の腕を掴み小刻みに震えながら歩き、懐中電灯を手にした俺は次に渡り廊下へと進むと倉庫から高梨が出て来るものと思っていたのだが、何も起こらず引き戸を開けようとするが閉じており、代わりに旧校舎の方から何者かが多目的室の廊下を走り去って行く人影を目撃する。


「汐留さん苦しいから少し離れて!」


「あ、ごめんね白井君わざとじゃないから!」


 急に抱き着かれ顔面を胸で圧迫され息が出来ずに離れるように言うと俺も駆けて行く人影を目視する。


「高梨のやつ凝った演出してくれるな。」


「どういう事?」


「俺は事前に高梨から倉庫から飛び出すって聴いてたから、演出を変えたんだろうな。」


「確かに今のは驚くよ、もう早く終わらせよ。」


 旧校舎へと足を踏み入れると足元が見えない量の煙が発生しており、目的地の調理実習室へと向かうと黒いカーテンが内側と廊下側の窓に引かれ真っ暗で懐中電灯が無いと何も見えない様になっている。


「ねえ暗すぎない?」


「そうだな、流石に暗すぎる。」


 恐る恐る調理実習室のドアに手を掛け開けると教壇に御定の姿があった。


「あ、来た来た。」


「御定か、その手に持ってるのは十字架か?」


「これ、八雲君から調理実習室まで来た証として渡す様に言われたのよ。」


「これで、後は戻れば良いのか?」


「そ、白井君と汐留さんなんだか良い雰囲気だけど、もしかして。」


「ち、違うよ! そう言うのじゃないから!!」


 顔を赤くし慌てて否定する汐留さんの姿を見て可愛いと思ってしまう自分が居た。


「目的も果たしたし戻ろうか。」


「うん。」


 八雲達の元へと戻り俺は御定から手渡された十字架を見せ調理実習室まで行った事を証明する。


「確かに、次は黒墨君と五条君の番だよ。」


「はは、手繋いで行くかい?」


「繋ぐか! はよ終わらせるで。」


 懐中電灯を持った二人は真っ暗な校舎へと消えて行った。


「で、どうだった?」


「どうって何が?」


「もう環、白井と仲良さそうだったし何かあったんじゃないの。」


「白状しなさいよ、ほらほら。」


「何も無いよ。」


「本当にぃ?」


 汐留さんと東栄さんと楠木さんの三人で女子会を始め、俺と八雲は黒墨と五条が戻って来るのを待つ。


「た、大変やあ!!」


「あれ、五条じゃないか!」


「そうみたいだね、黒墨君はどうしたのかな?」


 慌てて俺達に駆け寄る五条の表情を見てただ事じゃない事を感じた。


「五条、何かあったのか?」


「はぁはぁ、何事も何も燃えとるんや!」


「燃えてるって何よ?」


「黒墨君はどうしたの?」


「今消火任せてるさかい、早う皆来いや!!」


 俺達は懐中電灯を点け、火事になっている倉庫へと五条に案内されると、そこにはあたふたしている黒墨の姿があった。


「何しとんねん!? 早う消火せんかい!!」


「それが無いんだよ!」


「無いって何がや?」


「蛇口に繋がってた筈のホースだよ!」


「なんやて!?」


「じゃあ、このまま見てるしかないの!?」


「見たところ、火は中で燃えてるだけだし時間が経てば消えると思うけど……」


「しゃーない、待つか。」


 ホースが見つからず側面の窓から煙が昇るのを見て火が消えるのを待っている間、何事かと不思議に思ったのか色彩と御定も合流する。


「何があったのだ?」


「皆遅いから、心配したわよ?」


「あー、今大変な事になっとるんや倉庫の中が火事でな。」


「火事!?」


「倉庫の中には高梨が居る筈なのだ! 無事なのか?」


「さあ、分からへん。」


 暫くして火が収まり中を確認しようとするが引き戸が開かず施錠されてるかの様に硬かった。


「何しとるん?」


「さっきと同じだ、全く開かない!」


「その倉庫、鍵は無かったはずやで?」


「ならウチが引き戸に挟まってるのを気でふっ飛ばしてやるネ。」


「シャオパオさん!? 他の皆もどうして?」


「ふん、あの怪異に起こされたんだよ火事だ! とかぬかしやがってな。」


「それで倉庫まで来たまでだ。」


「ハイィー! ヤッ!!」


 寮に居た皆も集まりシャオパオが倉庫の壁に掌で衝撃を送ると倉庫内からカランと何かが倒れる音がし、ゆっくりと引き戸を開き懐中電灯の光を当てると焼け焦げた人が横たわっていた。


「じょ、冗談……だよな……?」


 焦げた臭いが鼻を突き抜け眼の前に在る物体が人の死体では無い事を願っていると何処からともなくピンポンパンポーンとチャイムが鳴りスレンダーマンの声がスピーカーから響いてくる。


「死体が発見されました、皆様はただちに倉庫に急行してくださーい♪」


「何や今のアナウンス!?」


「これは何の騒ぎっすか!?」


 周囲に集まった人数を確認し、高梨だけが居ない事を知り死体が高梨である事に嗚咽しそうになる。


「皆さんお揃いで楽しくなって来ましたね、では調査を始めてくださいね♪」

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